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魔法使いの世界にて  作者:
三章 マジックバトルトーナメントにて
63/108

ワイルドファングの攻略にて

書き始めてからちょうど一年になりました。

……きっと最初の方は読みにくいと思います。

それでも小説の勉強しつつ頑張っていきます!


……今でも下手くそですけどね……

* * *


「では四回戦の相手である、シルベーヌ支部の作戦会議を始める」


 いつものように、アレフ達は次の対戦相手の作戦会議を開いていた。

 すると真っ先にチカが手を挙げる。


「はい! シルベーヌってどんな街なんですか? 強いんですか?」


 基本的に魔法使いのことは何も知らないチカを、その場の全員が見つめる。

 アレフは、みんなの言いたいことを代表して口を開いた。


「シルベーヌは……優勝候補だ」


* * *


 タッタッタッタッ!

 一人の青年が廊下を走る。首にスカーフを巻き、左目を眼帯で覆っている。

 青年はホテルの一室に迷うことなく入っていった。


「エリーゼお嬢。ワイルドファングの情報、調べて来たぜ」

「ありがとう。早かったわね」


 エリーゼと呼ばれたドレスを着た女性が青年にお礼を言う。

 まさにお嬢様といった格好の彼女は、透き通るような青い髪のロングヘアーが印象的だ。しかし、彼女の頭のてっぺんには一本のアホ毛が立っている。

 彼女が動く度に、アホ毛は左右にピョコピョコ揺れ動く。


「じゃあリッツ、ついでだからその資料を読み上げてちょうだい」

「ええ~! 俺がかよ!?」


 リッツと呼ばれた眼帯を付けた青年は、あからさまに嫌な顔を見せながら、周りを見渡す。

 部屋の中心のテーブルで、優雅に紅茶を飲むエリーゼ。その隣には小さな少女がクマのぬいぐるみを抱きかかえながら、エリーゼにピッタリと寄り添っている。

 またその少女の隣には、これまた体格の小さい少年が胡坐あぐらをかいていた。


――一人足りない。


 リッツは部屋の奥を見る。一番奥の壁に寄りかかり、白髪の老人が刀の手入れしていた。

 全員の姿を確認したリッツは、資料を読む前にエリーゼに声をかけた。


「お嬢、またアホ毛が立ってるぜ?」

「ッ!!……フラン、またお願いするわ」

「は、はいぃ」


 エリーゼの隣に寄り添っていた少女はクマのぬいぐるみを床に置くと、急いでブラシを取り出し、エリーゼの髪をとかし始めた。

 シュッシュ!

 ピン!

 シュッシュ!

 ピン!


「ふえぇ~、戻らないよぉ~……」

「ふむ、これは不吉だな。ワイルドファングとの闘い、かなり荒れると見た」

「人の髪で占いをしないでくれる……? さっさと情報を教えなさい」


 エリーゼがジト目で見ると、リッツは資料で顔を隠した。


「ごほん! それじゃあワイルドファングの情報を読むぜ。まずはガル、十九歳。ノードの街から北にあるガルノフ学園出身。学園にいたときから飯を食う時間や、寝る時間を惜しんで魔法に明け暮れていたらしい。実質こいつがワイルドファングの要であり大将だな。三回戦の勝ち抜き戦で、中堅、副将、大将を三人抜きしている。使える魔法は多々あるけど、一番ヤバいのは『無敵になる魔法』だな」


 リッツが一気に読み上げてから、少し間をあける。

 この時、小柄な少年は首をひねった。


「無敵になる魔法? なんスか、そのSSSトリプルエスランク級の魔法は……」

「言った通り、無敵状態になる魔法っぽいな。俺が見る限り、相手の攻撃魔法を全く受け付けなくなった」

「いやいや、十九歳でそんな高ランクの魔法が使える訳ないっスよ。多分、魔法抵抗力を極限まで高める魔法じゃないっスか? それならフランだって使えるし。なぁフラン?」

「うぅ~、アホ毛が戻りませんよぉエリーゼ先生ぇ~……」


 フランは髪をとかすのに必死で話し合いどころではない様子だ。


「残念だがベイクの予想は外れだ。三回戦の大将戦、ザクロも同じことを考えたんだろう。思い切り杖で殴りかかったが、全く効果はなかった。魔法、物理、完全に無効状態だ」

「……マジっすか……」


 ベイクと呼ばれた小柄な少年は唖然とする。そこへエリーゼが口を開いた。


「ベイク、魔法使いの強さは年齢じゃないわ。どれだけの時間を魔法に費やしてきたかよ。そのガルって子は、学園にいる間、ほとんどの時間を魔法に費やしていたのでしょう? 高ランクの魔法が使えてもおかしくないわ。……まぁ、ガルに勝てるのは私かアルくらいね」


 淡々と言い放ち、再び紅茶を口に運ぶエリーゼ。



「そんじゃ次にいくぜ? お次はアイリス。十九歳。ガルと同じ魔法学園出身。学園にいた頃、学科は壊滅的に苦手だが、実技は優秀だったらしい。目を見張る魔法は『マジックアクティベーション』。これを使うと魔法のランクが一つ上がるくらいに魔力が活性化するらしい」

「魔法をワンランク上げるとかヤバくないッスか? え? アクティベーションってそんな使える魔法だったっけ? 全然役に立たない印象があったっスけど……」


 ベイクは先ほどから驚いてばかりだ。そんな彼に、エリーゼは解説を挟む。


「確かに、アクティベーションは今まで全くと言っていいほど注目されなかったわ。それをここまで進化させたのは彼女の執念ね。相当頑張ったのでしょう」

「ちなみに、アクティベーションを使った場合、推定で防御魔法はS+。攻撃魔法はSSクラスにまでなる」

「攻撃力SSって……強くねッスか……?」

「まぁ、彼女と当たったら、まともに攻撃魔法の打ち合いは避けるべきね。どうやって相手の意表を突くかを考えるのよ」


 ここで少し間が開いた。誰も質問が無いことを確認して、リッツは話しを進める。


「お次はセレン。十六歳。正直この子のことは何もわからなかったぜ。突然ノードの街に現れて、突然特殊部隊に入ったっぽいな。注目すべき魔法は無効化の魔法。一回戦で使用した時には、客席の結界も含め、全ての魔法を強制的に無効化してる。もちろん警告を受けているから、今後も無茶な使い方はできないと思うが……まぁ、最初の二人に比べたら、おとなしいスペックかな?」

「……なら、このセレンって子には必ず勝っておきたいわね。それが出来なきゃ、優勝することも、ワイルドファングに勝つことさえできないわ。当たった者は何がなんでも勝つのよ」


 静かに、それでいて力強いエリーゼの言葉に周りいる者は軽く頷いた。


「お次はチカ。十八歳。この子のことも全然わからなかったぜ。どこで魔法を習ったのかも不明。だけど、戦い方はアルじいさんと同じで、とにかく強化魔法を重ねて近接戦闘で相手を討つスタイルだ」

「……ほう……」


 今まで黙って刀の手入れをしていた白髪の老人が、ピクリと反応した。


「こうしてみるとホント未成年ばっかのチームっスね。でも接近戦ならアルじいちゃんに勝てる人なんかいないっスよ。まぁ、どんな試合になるか見てみたい気もするッスけどね」

「それが、チカってやつも一癖ある相手でね、神速と言われるほどの速さで動くから、結構やっかいな相手だぞ」


 リッツの話を聞き、エリーゼは考え込む。そして背後にいる老人に聞こえるように声を張った。


「アル! アルフォート! このチカって子と当たったら、勝つ自信はあるかしら?」

「ほっほっほ。そうじゃな、ただ速いだけなら、負ける気はせんな」


 そう言ってアルフォートは、再び刀の手入れに戻る。


「なら、アルとチカをぶつけるわ」

「そんなことできるんスか? どこに配置してくるかわからないんスよ?」

「そうなるように誘導するから大丈夫よ。さぁ、最後の一人を教えてちょうだい」


 そう言ってエリーゼは、また紅茶を一口すすった。


「最後はアレフ。ノード支部の隊長にして、このチームのリーダー。だけど、これまで一切出番がないから実力はわからない。ただ、四年前の、まだ最弱と呼ばれていた頃からのメンツなんで、もしかしたら一番弱い可能性もある」

「……なるほど、リッツの言う通りかもしれないわね。うまいこと四人は強いメンバーを揃えたけれど、五人目までは揃わなかった。だから一番弱い自分を大将に置いて、大将戦までもつれ込まないうちに勝負を決める作戦ね」

「いや~策士ッスね~。どんくらい弱いのか、逆に気になるッス」

「そう? じゃあベイク、今回はあなたを大将に置くから、アレフの相手はお願いね」

「ふぁ!?」


 あまりに唐突すぎて、ベイクが変な声を上げた。


「大将が弱いとわかっているなら、私が出る必要はないでしょ? さっき言った通り、アルはチカとぶつけて、私はガルって子の相手をするわ」

「むむむ……えいっ! ふえぇ~、アホ毛が直りませんよぅ~」


 フランが未だにアホ毛と戦っていた。そんな彼女を見上げるように、エリーゼは上目使いでフランを見つめた。


「フラン、もう髪はいいわ。それよりもいい? アイリスはあなたに任せることにしたわ。あなたの『マーボー』なら、どんな攻撃魔法も弾けるし、強固な結界も『エース』で壊すことができる」

「ふぇぇ~、私が……うまくいくでしょうか……」

「かなり相性は良いはずだから、自信を持ちなさい。で、リッツはセレンって子の相手よ。分かってるわね? 絶対に負けちゃダメよ!」


 フランの時と打って変わって、厳しい口調でエリーゼは念を押す。


「わかったよお嬢。まぁ、いざとなったらこの『左目』を使うから心配するな」


 そう言ってリッツは左目の眼帯を指でなぞってみせた。


「あなたの『左目』が通じる相手なんて、二流のAランク魔法使いくらいよ!」

「ひでぇ!」


 そんなやり取りに、不安そうなベイクが入ってくる。


「お嬢~、自分、本当に大将なんスか? もしアレフって人が強かったらヤバいッスよ」

「ベイク、四回戦にもなると楽な戦いなんてないのよ。みんな自分の力を出し切って一勝をもぎ取る事に必死なの。それとも私と変わってガルの相手をする? 私だってガルに絶対勝てる自信なんてないのだから、変わってもいいのよ?」

「……いや、大将でいいっス。それにお嬢のSSランクの魔法は反則級ッスから、絶対負けないッスよ」


 そんなベイクの言葉に、エリーゼはため息を吐いた。


「忘れたの? ブッドレアのザクロもSSランクを使ってガルに負けたのよ。どうなるかなんてわからないわ……」


 そしてエリーゼは立ち上がってみんなを見渡した。


「最弱と言われたノード支部は昔の話。もはや今では優勝候補よ。みんな、絶対に油断しないで」

「ほっほっほ。お嬢はワイルドファングが優勝すると思っておるのかのぅ?」


 アルフォートが流れを作る。士気を高めるための流れだ。流石だと思いながら、エリーゼはその流れに乗った。


「思ってないわ……なぜなら、優勝するのは私達だからよ!」


 四回戦開始まで、あと二日。

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