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魔法使いの世界にて  作者:
三章 マジックバトルトーナメントにて
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生命の神秘にて②

『キュアパライス!』


 麻痺した体を回復させ、ガルはムクリと起き上がった。

 セレンも同じく撃ち落され、同時に麻痺回復を行っていた。


「いたい……」

「大丈夫か、セレン」

「なんとか……」


 ガルはセレンに近寄り声をかける。


「それにしても凄いな。二つの魔法を融合させたのか? 革命的じゃないか」

「ガル……関心してる場合じゃない。予想以上に強いわ……」


 二人は双子を見上げると、双子もまた、ガル達を見下ろしていた。


「まだ動けるみたいだよ、クラちゃん」

「麻痺攻撃も効かないみたい。先鋒の子のようにはいかないね、スカちゃん」


 相手の動きに注意しながら、セレンは尚もガルに声をかける。


「どうするの? 近付いたらまたあのカミナリが来るわよ。客席の結界を壊さないように範囲も狭い。すごく良く考えられてる」

「だな……。隊長の言った通り、強引に攻めるのも手かもしれない。遠距離からガンガン攻めるか」

「それもいいけど、この戦い、切り札を使うことになるかもしれない……」


 そう言って、セレンは両手の人差し指をクイックイッと動かして作戦を伝える。


「わかった。けど、それに失敗したらもう後はないぞ」

「それはガルの腕次第よ」


 ニコっと笑うセレン。まるでガルの腕を信じていると言わんばかりの笑顔だった。


「やれやれ……なら、俺の挙動が変わったら切り札作戦だ。合わせてくれ」

「うん」


 そうして再びフワリと飛び上がり、双子と対峙する。


「そんじゃ、第二ラウンド開始といくか。『マジックランス』×2」


 そう言ってガルは大量の魔槍を双子に飛ばす。


「うわわ! 多すぎて相殺できないよクラちゃん!」

「いったん逃げよ、スカちゃん!」


 そうして後方に引きながら回避する双子をガル達は追う。


「上からも攻撃するわ。『シャドーレイン!』」


 セレンによって魔力の粒が降り注ぐ。


『マジックシールド!』


 双子は防御と回避に専念しているようだった。

 そんなさっきとは攻守逆転の展開に、ガルはハッとした。


(そうか、あの融合魔法は二つの魔法と、それらを融合させる魔法、三つの準備が必要なんだ。今シールドを張っているだけだから、また融合魔法が来る!?)


 そう思った時に、双子はコツンと杖を重ねた。


「融合魔法、『ライトニングストライク!!』」


 カッとセレンの頭上で何かが光る。


「上だセレン!」


 ズガァーーー―ン! と、白い光が天から地へ突き刺さる様に落ちていた。

 それをセレンは、ガルが叫ぶ前に回避行動を取っていた。ブーストを使用して、全力で逃げるセレンに――

 バオンッ!

 双子の片割れが追いついた。


「ごめんなさい!」


 ゴスン!

 セレンの後頭部を杖で殴りつけた。

 とことんセレンを狙って最初に脱落させるつもりらしい。


「浅い! クラちゃん!」


 バオンッ!

 もう片方もブーストでセレンを追撃する。


 バオンッ!

――キイィィン。

 その追撃をガルが食い止めた。


「邪魔したな~」

「フルボッコだ~!」


 双子が二人掛かりでガルに攻撃を開始する。

 セイバーを付与しない双子の攻撃は軽い。しのぎを削りながら視界の端でセレンを捕らえた。後頭部に打撃を受けたセレンはフラフラと立ち上がり、こちらに向かい飛び出すところだった。


(もうセレンのダメージも大きくなっている。切り札を使わないとヤバい……)


 ガルは身を守ることに徹しながら、頭をフルに回転させる。


(考えろ! 今まで相手はこちらの動きを予測して作戦を組んでいた。挟みこんだらセレンに攻撃を集中し、近距離が有利と思わせて近づいたところを撃ち落された。次に近づくことが危険と思わせて遠距離からの融合魔法。次は何を予測している!? その上を行かなきゃ勝機はない!)


 ガルは次に自分がどんな行動を起こすか、それを元に考える。


(彼女らはセレンを先に落とそうとしている。セレンを庇いながら戦いたいところだが……くそっ! これは賭けだ!)


 ガルは双子を振り払い、逃げるように一気に離れた。


「あれ? 仲間を置いて逃げちゃったよ? クラちゃん」

「じゃあ遠慮なく、あっちの弱ってるちっちゃい子を先に落とすよ、スカちゃん」


 双子はセレンに向き直り、襲い掛かろうとしていた。

 ガルはそんな双子のほぼ真下に降り立ち、高速で文字を刻んで準備を始める。


(耐えろセレン!)


『マジックバリア!』


 セレンは察したのか、防御に徹している。


「時間稼ぎってバレバレ!」

「さっさと壊しちゃえ!『マジックセイバー!』」


 双子の猛攻でバリアが壊れると、続いてシールドを張りとにかく守りを固めるセレン。

 そして、ようやくガルの魔法が完成した。下から双子に狙いを定めると、杖が煌々と輝く。

 さっきのように、上下に向かって魔法を放てば、客席の結界を壊す心配はなくなり、大魔法でも撃つことができる。


「下から来るよクラちゃん!」

「わかってる! うりゃ!」


 ついにセレンを弾き飛ばし、双子はガルに向かってコツンと杖を重ねた。


「融合魔法、『デュアルアースブレイカー!!』」


 膨大な魔力が波動砲のように打ち出された。それと同時にガルも渾身の一撃を解き放つ。


「勝負!『インフィニティブレイク!!』」


 紫色に光る魔力が轟音ごうおんを響かせて、互いの中心でぶつかり合った。


「うわっ! 拮抗してるよクラちゃん! 私達の魔法S+はあるのに!」

「いや、私達の方が僅かに押してるわスカちゃん! あのちっちゃい子が魔法を完成させる前に片付けましょ!」


 弾き飛ばされたセレンが文字を刻むも、双子はそれを気にもしない。

 目の前のガルを仕留めるため、力を振り絞るように叫び声をあげた。


「「やあああ~~~~!!」」


 グンと、ガルの魔法が目に見えて押され始めた。ジリジリと迫り来る双子の魔法に、ついに勢いよく押し返された。

 だが、そんな波動砲のような魔力が直撃する瞬間、ガルはダブルマジックで待機させていた左手の魔法を解き放つ。


『インビシビリティ!!』


 ガルを巻き込み、地を砕く双子の魔法。だがその中でガルは悠然と浮いていた。

 ガルの切り札、『インビシビリティ』。物理法則を無視してその影響を受けなくするこの魔法によって、今のガルは完全に無敵の状態となっていた。

 ただし、この魔法は完成したわけではない。以前と同じように、未だ魔力の大量消費によって強引に構築されており、無敵状態を数十秒維持しただけで魔力が空になるほどの燃費の悪さだった。


 鉄ですら折れ曲がりそうな、そんな双子の波動砲の中央をガルは悠々と進んでいく。まるでそよ風を浴びながら散歩するかのようだが、モタモタしてはいられない。こうしている間にもガルの魔力は恐ろしい勢いで消費している。

 ガルは一気に波動砲から飛び出し、双子の目の前に現れた。


「え……!?」

「う、嘘……!?」


 双子は目を丸くして固まっていた。その隙にガルは双子を両脇に抱え込むように抑え込んだ。


「うわ~!! 捕まっちゃった~」

「この~、放しなさいよ~!」


 ジタバタと暴れる双子を抱え込んだまま、ガルは答えた。


「あまり暴れないでくれ。この状態は体の感覚がほとんどないから加減を間違えると潰してしまうかもしれないんだ」

「ひぃ~……」

「な、なんか怖いこと言ってる~……」


 そんな三人の横を高速でセレンが横切った。

 そのままさらに上空に昇っていき、真上から杖を構える。


「ガル、ナイス! 余裕なんてないから全力でいくけど、死んだりしないでよ……」


 セレンの構えた杖が煌々と輝き出す。


「ヤバいよクラちゃん! 仲間ごと撃つ気だ!」

「くっ……こうなったら……」


 セレンは魔力を解放し、大魔法を解き放った。


『エターナルブレイズ!!』


 空気を飲み込むかのような振動音を響かせて、閃熱が迫る。


『サブラゲイト!』


 閃熱が三人を包み込むと、ガルは両脇に抱え込んでいた双子をパッと放した。双子は膨大な魔力の流れに逆らうことなく、地に飛ばされていく。

 二度目の衝撃に地面はえぐられ、大きなくぼみが出来上がる。

 セレンの魔法が収まったその下には、巨大なクレーターができていた。

 そのクレーターの中心に、ピクリとも動かない双子が倒れている。

 そんな双子の元に審判が急いで確認に向かっていた。


「やったわね。ガル」

「……」


 セレンが近付いてきたが、ガルは双子から目を離さなかった。


「直撃の瞬間に、何かの魔法を使っていた。最後まで気を抜くな」


 するとセレンは少し考えてから、ガルに一つの提案を持ち掛けた。


「スカーレット選手、クラレット選手、共に戦闘不能!」


 確認をしていた審判が立ち上がると、高らかに宣告を始める。


「よって、ガル選手、セレン選手の勝――」


――フッと突然、辺り一面が闇に覆われる。勝利宣告を告げる途中だった審判の声は、その闇によって途絶えることになった。

 突然の闇に、ガルは急いで周りを照らす魔法の文字を刻む。だが――


 ドスンッ!

 鈍い音が聞こえた。「くふっ」というお腹の空気が口から洩れるような声も、ガルのすぐ近くから聞こえてきた。だがそんな近くの音さえも、この暗闇によって確認することができない。


『シャイニング!』


 急いで光を放つと、ガルを庇うようにセレンが双子の片割れと組み合っていた。

 双子の持つ杖から伸びる鋭い刃は、セレンの身体に突き刺さり、背中から突き抜けていた。

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