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魔法使いの世界にて  作者:
三章 マジックバトルトーナメントにて
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フォッグ支部の『ビリジアン』にて②

* * *


「ウチとしてはタッグ戦を要求したい」


 初めに要望を出したのはビリジアンのリーダー、アッシュの方だった。

 黒髪の短髪。まだ青年という歳だろう。表情に幼さを残しつつも、しっかりと相手の目を見てはっきりとしゃべる姿は、チームをまとめる統率力の高さを感じさせる。


「タッグ戦? 二対二の勝負となると、一人余るが……」

「一勝一敗になった時、最後の大将戦はシングル戦を行う。これでどうだろう」

「ふむ……」


 アレフは迷っていた。タッグ戦という要望は必ずしもこちらに不利な形式ではない。

 大将戦に自分を置いて、先に二勝してしまえば終わるのである。後ろにいる四人の総合力から見ても、決して悪い話ではない。


(だが……)


 ビリジアンのメンバーをアレフは見渡す。その中に同じ顔の女性が並んでいた。


(双子のタッグか……恐らくこの子達がタッグ戦のかなめ。簡単に相手の手に乗るのは良くない……か)


「こちらはシングル戦、三ポイント先取を要求する」


 タッグ戦という不慣れな戦いも考慮して、アレフは自分達の戦い方を選んだ。


「こちらは譲る気は無い。審判に決めてもらおう」


 そう言ってアッシュは審判に目を向けた。


「両者の意見が分かれましたので、こちらが抽選で決めたいと思います! では両者、好きな色を決めて下さい。その色が残った方の試合形式となります」

「へぇ。ならこっちは当然、街の象徴、『緑』で行こう!」


 アッシュは迷うことなく即決する。


「むむ、ならウチはどうするか。色……色……」

「隊長! 相手が緑なら、それに対抗して『赤』にしましょう! 緑を燃やし尽くす赤で勝負です!」


 後ろからアイリスがノリノリで呼びかけている。やたら楽しそうだ。


「で、ではこちらは赤にしよう」

「了解しました。ビリジアンが緑、ワイルドファングが赤ですね」


 そうして審判は、バババッと文字を刻む。その魔法を発現させると、空に大きく緑の光と赤の光が出現した。

 二つの光は独楽こまのようにぶつかっては弾け、ぶつかっては弾くを繰り返す。


「すごいな、ただ二択を決めるだけの魔法なのに、やたら作り込まれている」

「演出も大事ですから~」


 審判が得意気にしている。

 その頭上でぶつかりあう二色の光は激しさを増していた。

 ここでついに緑の勢いが弱くなると、赤の光が猛ラッシュを浴びせる。最後に一直線にぶつかると、緑の光は粉々になってしまった。


「ああ、炎に勝つことはできないのか……」


 アッシュは楽しむように、大げさなリアクションで肩を落とした。彼もなかなかノリが良い。

 だが、粉々になった緑の光が消えそうになった瞬間、突如強く輝き出した。


「おや? これは低確率で発生する復活演出ですねぇ」

「ただの二択でどんだけ凝ってるんだ!?」


 アレフのツッコミもモノともせず、復活した緑の光は力強い一撃で赤い光を粉砕した。


「はい、緑色が残りましたので、対戦形式はビリジアン要求のタッグ戦となります。それでは両チーム、メンバーの配置を決めて下さい!」


 審判の指示に従い、両チームは一度、控え室に戻るために背中を向ける。

 その途中でアレフは後ろを振り向き、ビリジアンを見つめた。


(勝ったと思った矢先の復活演出か。彼らの戦いに通じるものがある。本戦では同じ結果にならないよう気を付けなくては)


 対戦形式が決まったことで観客が盛り上がる中、静かに気を引き締めたアレフは、配置を頭に思い描いた。

「私、タッグは師匠と組みたいです!」


 控え室に戻ると、チカが手を挙げてねだってきた。


「残念だが、チカ君とガル君は別々に分けようと思っている」

「えぇ~、そうなんですか!?」

「一回戦で温存して、実力などのデータを取られていないチカ君。そしてどんな相手でも安定して戦うことができるガル君。この二人を分けて、それぞれにセレン君、アイリス君を組ませようと思っている」


 問題はその二人をどちらに組ませるか。アレフは再び思考を巡らせる。


(もうレリースが使えないセレン君をチカ君に預けるのも悪くないか……)


 そう思い顔を上げる。


「んあ~、師匠と組みたかったです~」

「ちょっとチカ! いちいちガルにくっ付こうとしないで!」


 いつも通り、二人は小競り合いをしていた。


「あたし、ガルと組んだら多分一人で戦ってると思うわ。アンタって心配するだけ無駄っていうか、放っといても生き残ってそうだもん。だから、ガルがてきとうにあたしをサポートして」

「いや、それはタッグとしてどうなんだ……?」


 アイリスの冗談とは思えない言葉に、アレフの思考は再構築されていく。


(ああ、やっぱり相性で決めた方がいいみたいだ……あとは、あの双子をどこに配置してくるかだな。できればガル君と当てたい。セオリー通りに中堅か、それとも一回戦の時のように先鋒に置いてくるか……)


 アレフは悩みながらも配置を決めて、待機していた審判にそれを書いた紙を提出した。


「それでは、お互いの配置が決まったようなので、発表しまっす!!」


 そうして掲示板には、魔法によって文字が浮かび上がっていく。


   ビリジアン      ワイルドファング

先鋒 ボルドー   ―   チカ

   コルク        アイリス

中堅 スカーレット ―   ガル

   クラレット      セレン

大将 アッシュ   ―   アレフ


 これを見て観客が騒めき立つ。

 勝敗が決まること以外では、こうして編成が発表された時こそ場内が騒がしくなる瞬間ではないだろうか。


 ――こうして、お互いの作戦や思惑をのせて、二回戦が始まろうとしていた。

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