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魔法使いの世界にて  作者:
二章 失踪事件にて
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魔法使いの日常にて ~試験と猫日和

ガル君の学び舎、『ガルノフ学園』と命名したわけですが、

主人公の名前と被っていることに気付きました!

しかも気付いたのがつい最近……

特に伏線とかありません。作者がアホなだけです。

本当にすみませんでした!

「はぁ~……」


 チカがため息を吐いた。そんなチカの様子にガルが首を傾げる。


「どうしたチカ。お前が修行を見てくれと言うから付き合っているのに、身が入ってないぞ。何か悩み事か?」

「すいません師匠……聞いてくれますか?」


 そう聞くチカだが、ガルが返事をする前に話し始めた。


「実はこのノードの街には人知れず、侍を愛する人達が集まる愛好会が存在するんです!」

「ほぉ~、それはまたお前が好みそうな集団だな。その愛好会がどこで行われているのか、それが知りたいわけか」


 しかしチカは首を振る。


「いえ、もう場所はわかっています」

「じゃあ参加すればいいじゃないか」

「ですが師匠、私は魔法が使えます。そんな私を受け入れてくれるでしょうか……」


 ああ、そういう事かとガルは察した。チカは侍でありながら、魔法が使える自分に引け目を感じているのだろう。ガルはそんな彼女の背中を押してやることにした。


「聞くだけ聞いてみればいいじゃないか」

「うぅ……やっぱりダメです! 絶対に拒絶されます!」


 煮え切らない彼女に、そこまで悩むことなのだろうかとガルは考える。


「なら、俺も一緒について行って説明してやろうか?」

「本当ですか!? ありがとうございます! ではまず私が説明するので、師匠は後ろで見守っていて下さい!」


 どうやら一人だと心細かったようで、ガルが付いてきてくれることで決心が着いたようだった。そうして二人は早速集会場所に足を運んだ。

 そこはノードの街を出て、少し北に向かった場所にあった。緑の多いその場所には、侍としての修行をするための道具やら、試斬稽古に使うワラが立っている。そこに群がる男達に、ガルは近づいていった。


「たのもー!」

「おぉ? 師匠、ノリノリですね」


 そんなガルの呼び声に、男達が視線を向けた。


「どうしたんだ兄ちゃん達」


 四十代くらいの、歳を感じる男がこちらに歩み寄ってきた。チカは慌ててガルの前に立って一礼をする。


「あの、私も侍が好きで、ここの集まりに参加したいと思っていたんです!」

「ふぅむ……そっちの兄ちゃんのことを師匠と呼んでいたようだが?」

「えっと……それは……」


 言い難そうにしているチカの代わりに、ガルが口を開いた。


「俺はただ、こいつに魔法を教えただけですよ」

「えええぇぇぇ~~!! 師匠、それもう言っちゃうんですか!?」

「さっさと言った方がいいだろ?」


 すると男は苦虫を噛み潰したような顔でチカに詰め寄った。


「魔法!? 嬢ちゃん、魔法使いなのか!?」

「ええと、色々ありまして……でも心は侍のつもりです……」


 すると男は思い切り大きなため息を吐いた。あからさまに嫌そうな顔つきだ。


「なぁ嬢ちゃん、お前さんから見たら俺達は遊んでいるように見えるかもしれねぇ。だけどよ、これでも俺達は本気なんだよ! マジなんだよ。なぁ、わかるか? ん?」

「まぁまぁゲンさん、落ち着いて」


 もう一人の男が近づいてきた。まだ二十代と思われるその若者は、ゲンさんと呼ぶ男をなだめようとしている。


「リーダー。こいつは俺に見極めさせてくれ。嬢ちゃんよぉ。パン屋さんはパンのことを物凄く勉強してんだよ。おそば屋さんは美味しいおそばを作るために、たくさん修行してる。俺達だってそうさ。全力で侍を愛して、全力で学んできた。なのに嬢ちゃんは、侍をそっちのけで魔法で遊んでいるわけだろ? ん?」


 その言い方にガルはカチンときたが、とにかくチカを見守ることにした。


「べ、別に遊んでいるわけじゃ……」

「なら、なんで魔法なんかに手を出したんだよ」

「そ、それは、私なりに考えて……その……」

「かぁー! 出たぁー!! 『自分なりに考えて!』、そう言えば聞こえはいいもんなぁ? それなら俺だって『自分なりに考えて』この道を選んだぜ? 俺は女房を捨てて侍を一貫してる。嬢ちゃんと違って、掛け持ちしたりしてねぇよ? ん?」

「あ、あうぅ……」


 男はチンピラのように顔を覗き込むように身を低くしたり、煽るように首をカクカクと動かした。そんな男の態度にガルは必死で苛立ちを堪える。

 チカはいつもの元気はどこへやら。この男の勢いに押されて縮こまっていた。


「結局よ、嬢ちゃんの侍に対する想いはその程度だったってことだ。そんな奴を引き入れると、俺達までハンパ者に思われるわけよ? 嬢ちゃんのせいで! 俺達が! わかるか? ん?」

「おいチカ!」


 ガルが男の言葉を遮るように、強くチカの名を呼んだ。もはや我慢の限界だった。


「もう帰るぞ! ここはお前が望むようなところではなかった。侍が好きな振りをして、悦に入る。そんなエセ集団だったわけだ!」

「なんだと……?」


 ゲンと呼ばれた男はガルを睨む。だが、そんな威嚇をものともせずに、ガルは続けた。


「俺はこいつと初めて会った時に、こいつがどれだけ侍が好きか、その想いを感じたぞ。それが魔法を使えるという理由だけでわからないというなら、アンタこそ侍に対する想いは薄っぺらいんじゃないか?」

「し、師匠~……」


 チカはゲンに言われたい放題で半泣き状態だった。


「確かにこいつは魔法を覚えた。だがそれは、侍が最強であることを示すための苦渋の決断だ。こいつの頭には本当に侍のことしかないよ。魔法を覚えた今でも、侍の技を磨くための鍛錬を毎日こなし、身体も鍛えてる……そんなこいつの想いを『その程度』などとよく言えたもんだ」

「……そこまで言うなら、一つ手合わせするか?」


 ゲンはギロリとチカを睨んだ。


「侍は刀で語る。刃を交えれば相手の本当の姿が見えるもんだ。もちろん、魔法はなしだ」

「いいじゃないか、チカ、お前の想いをぶつけてやれ」

「え? あ、はい! じゃあ師匠、私の刀、持ってて下さい」


 チカは自分の刀をガルに渡し、ここの人達が練習用に使っているであろう竹刀を拾った。


「これ、貸して下さい。……竹刀、懐かしいです」


 チカは竹刀の感覚を確かめるように軽く素振りをしてから、ゲンの前に立った。


「おし! いつでもいいぜ」

「では、始めて下さい!」


 リーダーである青年が合図を出した。

 二人はジリッと間合いを確かめるように距離を図る。


「顔つきが変わった……」


 リーダーの青年がそう呟いた。ガルもまた、チカの表情を見て驚きを隠せない。それは初めて見る表情だったのだ。

 普段の能天気な表情でもない。初めてガルと会った時のような、ただ睨みつけるだけの表情でもない。先ほどの半泣きが嘘のような、凛々しい表情をしていたのだ。それは正に、曇りなき眼。

 二人は静かに横に動くだけで、距離を詰めようとしない。

 ガルはこれが侍の勝負なのかと息を呑んだ。魔法使いのように高速で動くことはない。それ故の間合いの重要性。

 セイバーとは違い、竹刀とはいえ体に傷を残す一撃を重んじての緊張感。

 その場は、張り詰めていた。


 スッとチカが動いた。間合いを変えられないように、一瞬で相手の懐に潜り込み、竹刀を振るう。ゲンはそれをなんとか捌き、反撃の一振りを繰り出した。だがチカはそれを難なく避ける。

 再び二人の間に距離ができると、ゲンが呟くように言った。


「なかなかやるじゃねぇか。これは、俺の秘剣で勝負するしかねぇな」

「受けて立ちます」


 そうして二人は竹刀を構えた。

 今度はゲンがすり足で間合いを詰め、その竹刀を振るった。


『秘剣、燕返し!!』


 その横薙ぎの一閃をチカは身を屈ませて避けた。しかし、燕が弧を描くように、竹刀もまた弧を描き再びチカに舞い戻る。

 パシンッ!

 まるで来ることがわかっていたかのように、チカが相手の竹刀を弾き飛ばした。そのままゲンの目の前に竹刀を振り下ろし、ピタリと寸止めをする。


「初見で燕返しを破るたぁ、やるじゃねぇか……」

「その技は書物、『暁の侍』第二巻で主人公が編み出した必殺技ですね? 再現率が高くてすぐにわかりました」


 竹刀を下ろしてチカがそう語った。


「ほう、暁の侍を知っていたか」

「もちろんです。もう百回は読み返して、セリフも全部覚えていますよ」


 そのセリフにリーダーの青年も苦笑いを浮かべる。


「やられたねゲンさん。彼女は本物だよ」

「あぁ、今の一戦で確信したぜ。こいつの侍魂は本物だぁ。歓迎するぜ嬢ちゃん」

「あ、ありがとうございます!」


 こうしてチカは、侍愛好会の参加が認められた。

 その日の帰り、チカはホクホク顔でガルと帰路に着く。


「師匠のおかげで、なんとか認めてもらえました。ありがとうございます!」

「いや、しかし勝負をしている時のチカはカッコよかったぞ。まるで別人だった」

「えへへ。真剣勝負って好きなんです。あれ? あそこにいるのってセレンちゃんじゃないですか?」


 見ると確かにセレンがいる。猫と一緒に戯れているようだった。


「セレンちゃん、何してるんですか?」

「……猫を観察してたの。私は今、猫の翻訳魔法を研究しているから」

「ふ~ん。その子、そろそろ体を動かしたいようですよ? あと少しお腹も減っているみたいです」


 その言葉にセレンが、そしてガルまでもが驚いていた。


「チカ、あなた猫の言葉がわかるの!?」

「そんな大層なもんじゃないですが、大体何を考えているのかはわかりますよ? 私、獣人の力で猫と合成獣キメラにされていますから。あだ名もキャットでした」


 するとセレンはチカの肩をがっしりと掴んだ。


「お願い。私に協力して猫のことを教えて!」

「はい、いいですよ~」


 そしてセレンはチカの協力を得て、約半年後に翻訳魔法を完成させることになる。

 さらにその半年後のトーナメント開催に向けて、特訓が始まるのであった。

これにて二章が終わりです。

三章からトーナメント編に入ります。


自分の作品を読み返すと、あれ? こんなこと書いたっけ?

と思うようなことがあります。

前に書いたことを忘れて、少し設定が曖昧な部分があるかもしれません。

未熟で本当にすいません!!

こんな自分ですが、三章を面白く書けるように努力いたしますので、よろしくお願いします!

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