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魔法使いの世界にて  作者:
一章 黒不石にて
3/108

美少女との激戦にて

軽く説明

フライは足に付けて足で操作してます

* * *


 数十分ほど前。学園強襲に向けて、セレンたちは目立たないよう森の中を進んでいた。


「はぁ~、嫌だなぁ、僕のペットを囮に使うだなんて。絶対誰か死んじゃうよ~」


 キメラの上に乗った少年が愚痴をこぼすように呟く。


「仕方ないわズンドコ、私たちは圧倒的にメンバーが少ないのだもの」

「誰がズンドコだよ! 僕の名前はストルコだよ!」


 茶髪の前髪で目元を隠しいる、ストルコと呼ばれた少年ががプンスカと怒る。


「あ、学園が見えてきたわポンポコ。あなたは前に出なくていいから」

「ねぇ、わざと言ってるの? 嫌がらせのつもりなの?」

「……あなたの名前は覚えにくい。え~っと、スットコ?」

「それはセレンの気持ちの問題だと思うけど、ってスットコ!? 今スットコって言った!?」

「作戦通り、キメラに指示を出して教師を引き付けて。絶対こちらから攻撃しちゃダメよ。わかった? ジミー」

「掠りもしなくなったよ!? もはや覚える気ないよね!?」


 学園を目の前にしつつ、そんな会話にガックリと肩を落とす同年代くらいの少年。

 ただでさえ低いモチベーションが、さらに低くなるのを感じていた。

 シュビ! ババババッ!

 ガルとセレンは右手と左手、両方で別々の魔法を刻んでいく。右と左で、連続で魔法を使うことができる、ダブルマジックと呼ばれる高等技術だ。

それを見てガルは思う。


(その歳でダブルマジックを使えるのか。大したもんだ)


 見た目ですでに年下と決めつけていたガルの方が、わずかに早く魔法が完成する。


『サクション!』


 ガルの隣に黒い歪みが現れる。続いて――


『マジックセイバー!』


 ガルとセレンが同時に発現させた。

 両者の杖が光りに覆われ、杖の先は鋭い槍のように尖っている。これで刃物のように斬ったりもできるのだが、実はこのセイバーという魔法、殺傷力は皆無である。

 たとえ斬ったり、突き刺したとしても、それ相応の痛みが走るだけで、肉体は一切傷付かない。武器を強化し、リーチも若干伸びる。そして相手を絶対に死なせないと、実に便利な魔法なのだ。


 セレンは杖を持っている右手に魔法を宿したまま、使おうとはしてこない。恐らくいざという時の防御系魔法だとガルは察する。

 セレンは左手では新たに文字を刻みながら、右手のセイバーで近距離戦を挑んで来た。

 セレンの攻撃には迷いがない。武器を思い切り振り抜いてくる。

 しかしガルも危なげなく、うまく捌く。

 ガルの悠然とした動きから近距離戦では分が悪いと判断したのか、セレンは距離を取った。しかしガルはそこを見逃さない!


『フレアランス!』


 キメラに撃ったマジックランスに、火属性を付与したものだ。

 手数の多い攻撃は相手の力量を測るのに都合がいい。20本以上の炎の槍がセレンに襲い掛かった。


「くっ!『マジックシールド!』」


 さっそく弱点を発見した。手数が多いのは防御魔法を張らないと厳しいらしい。


『ダークブリッツ!』


 セレンの反撃。なかなか大きな魔弾だが、サクションで軌道が変わり、軽くかわす。

 ――あわよくば目くらましにしよう、と考えていたセレンは当てが外れて動きが止まった。

 ガルはこの隙を見逃さない。


『フレアランス!』


 回避のために飛翔する速度を全速力にして範囲外に逃げようとするセレン。その方向にダブルマジックでもう一発同じ魔法を打ち込む。


『フレアランス!』


 逃げ場はない、まだ防御魔法も完成してない。さてどうするか。

 ガルが見据えるその瞬間。

 バオンッ!

 何かが弾ける独特な音がした。その刹那、セレンはガルの真横にいた。そして武器を思い切り振り下ろす。

 バオンッ!

 また何かが弾ける音がして、セレンの武器は空を斬った。今度はガルがセレンの背後を取り、そのまま攻撃を仕掛けた。


「っ!? きゃうっ!」


 とっさに武器を盾にしたが、弾き飛ばされるセレン。空中でクルリと回転し体制を立て直した。


「すごいなセレン。ブーストまで使えるのか。フライのSランク技術だぞ」

「……」


 空を飛ぶ飛翔の魔法、フライにもランクがある。

 人が走る速さでBランク。

 馬が走る速さでAランク。

 そしてブーストを操ってSランク。

 発現しているフライに魔力を蓄積、収縮させ、その魔力を一気に押し出す事で爆発的な超加速を得る高等技術。独特な音が出るのが特徴である。


『スパークショット!』


 セレンがこちらに向けた杖からレーザー光線のような鋭い光が放たれる。


「うおっ!」


 凄まじい速さにガルは驚きを隠せない。

 杖を向けられた時、警戒していたおかげで回避できたわけだが、一度完成すると数発撃てるのか、続けざまにビュンビュン撃ち出してくる。


(こんなに早くちゃサクションで吸引できないな。いや、すでに特性がバレて、対応されてるのか)


 サクションを解除して、逃げるように後方へ飛ぶ。

 その先には大木があり、その周りをUターンをするようにぐるりと回り、そのままセレンに突っ込んだ。


「何を考えているの? 『ダークブリッツ!』」


 真っ黒な魔弾がガルに放たれ、突っ込んで行ったガルに……直撃した。

 その瞬間、ガルの体は水になり、バシャリと弾ける。


「フェイク!?」


 バオン!

 魔力が弾ける音がして、ガルはセレンの背後を取った。


「しまっ! あぅっ!」


 武器で萩払われ、吹き飛ばされるセレン。しかしぎりぎりのところでガードが間に合い致命傷にはなっていない。


「大木を回った時に、俺は陰に隠れ、水魔法で作った偽物を突っ込ませたんだ」

「……そう、あなたの実力はよくわかったわ。もうこれ以上、時間を掛ける訳にはいかない。『ゲート!』」


 空間がぐにゃりと曲がり、そこに手を入れるセレン。

 そこから取り出したのは、さっきまで使っていたのとは違う杖だった。


「出し惜しみしてたのか? なんで最初から使わなかった?」

「……あまり人に見せる物じゃない」

「じゃ、それの力を見させてもらおうか。『フレアランス!』」


 ガルが先制攻撃をしかける。

 相手の苦手な手数の多い魔法で、とことん攻めていく。


「もう終わりよ。『レリース!』」


 セレンの杖から魔力の波が広がる。その波に触れた炎の槍が……砕け散った。


「は? 『マジックシールド!』」


 さすがのガルも理解できていない。

 とりあえず防御魔法を張るが、波がガルに届くとシールドが砕け散り、フライとセイバーまでもが消滅した。もちろんガルは、真っ逆さまに地面に落ちていく。


「嘘だろ! まさか強制解除? 人の組んだ魔法を!?」


 とにかく落下しながら急いでフライを再発動させる。ぎりぎりで間に合い、地面と水平に飛ぶ事で激突はまぬがれた。


「落ちなさい。『シャドーレイン!』」


 魔力の雨がガルに降り注ぐ。一粒一粒は大した威力ではないが、量が多い。


「痛ててて」


 ズサーッ! 地面に撃ち落される。むくりと顔をあげると、セレンは杖を両手で支え、こちらに向けている。

 その杖が怪しく光り出した。


(大魔法!? 地面に向かって撃つとか正気か!? 俺が避けたらこの周辺が吹き飛ぶぞ! この子、回収任務忘れてるんじゃないか?)


 正気とは思えないセレンの行動にガルは防御魔法を急いで刻む。


「これで終わりよ。『エターナル・ブレイズ!!』」


『ホーリーシールド!』


 音が割れるかの轟音を響かせて、眩い閃熱が一直線に向かってくる。ガルが展開したシールドと接触すると激しい音を立て、衝撃と熱が周囲に広がった。

 バリバリバリバリ、ビキッ! 

 シールドに亀裂が入る。


(マジかよこのシールドSランクだぞそもそも闇属性で来ると思ったのに火とか的を絞らせないあたり流石としかっていうか壊れる壊れるでもギリギリ保っているとこ見ると相手もSランクで杖で魔力上がった分向こうが上で――)


 こんな時でもガルは、まくし立てるように魔法の事を考えていた。

 バリン!

 ついにシールドが壊される。ほとんどの威力は相殺できたが、それでも余波でガルは吹き飛んだ。

 ガシャン! と窓をぶち割り部屋の中を転がる。


(魔法喰らうよりも床を転がる方が痛いかもしれん。ってか一旦引くか? あのレリースって魔法がヤバい)


 余波を受けてフライが消えていた。フライとセイバーを掛け直すため、ガルは廊下に逃げて時間を稼ぐことにした。

軽く説明

基本的に人が発現させた魔法はその人しか解除できません。

上書きしたりもできません。

魔法をぶつけて無理やり壊すのはできます。

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