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魔法使いの世界にて  作者:
一章 黒不石にて
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最終決戦の行方にて②

* * *


 ――仲間? 想い? 俺はそんなの認めねぇ。強ぇ奴が弱ぇ奴を従えるのは世界の真理! 無能で欲深い一般人を支配して、俺よりランクが下の魔法使い共を従えるだけの力があればそれでいい!


 バージスが動いた。不規則に動き回り、ガル達三人をかき乱す。とても手負いの動きとは思えないが、その秘密は先ほどかけた魔法にある。

 「インタラプト」。それは脳に作用させて痛覚を遮断する魔法。これによってバージスは痛みを感じていない。


「セレン、レリースだ! 通常の方で構わない。動きを止めてくれ」

「分かった」


 ――ガルが司令塔でちっこいのが魔法を解除してきやがる。金髪は補助か? 三人寄り添って反吐へどが出るぜ! なのに……なんで俺はこんなに焦ってんだ?


『レリース!』

『クラフトボム!』


 魔弾が爆発するとレリースの波が揺らぐ。同ランクの魔法で波に穴が開く瞬間をバージスは見逃さなかった。レリースをくぐり抜け、一気にセレンに迫って行く。


「貫け!『ディバインランス!』」


 バージスが細く、鋭い槍を一直線にセレンに放った。


「『マジックアクティベーション!』並びに『マジックシールド!』」


 ギイィィン!

 アイリスがセレンを庇うようにシールドを張り、魔法の槍を弾き返した。


 ――貫通できねぇほど硬ぇのか。仲間を庇ってウザってぇ……俺にはこんな仲間がいなかったのか? クソ! 思い出せねぇ!


 ガルが背後に回るのをバージスが警戒して、再び飛び回る。


『エリアルマイン!』


 狙いをアイリスに変えて、無数の爆弾を取り囲むように出現させた。バージス自身を巻き込まないようにも計算されていた。

 バオン! と魔力が弾けてアイリスがブーストで離脱を試みた。


「逃がさねぇよ!」


 バージスがそれを追いかけ、アイリスの背後を取った。


『フレイムセイバー!』


 斬っ! と空気を切り裂き、バージスの背中が斬られた。

 背後を取るバージスの、さらに背後をセレンが取っていたのだ。


 ――俺に仲間がいたとして、俺はそいつらの言葉に耳を傾ける事が出来んのか?


「があぁぁ! 虫けらがぁ!! 『ウィンドスラッシャー!』」


 バージスの周囲にかまいたちが発生し、前後の二人を吹き飛ばした。


『フリーズショット!』


 初級のCランク魔法をうまく使い、バージスの杖が弾き飛ばされた。バージスが視線を送ると、ガルが死角から打ち込んできたのが分かった。


「はやり自爆の類は使ってこない。連携して確実に攻めるぞ」


 ガルが二人に指示を送っている。


 ――なんで俺は一人で戦ってんだ……? なんで俺は一人で封印されてんだ……? なんで俺は……


 武器を失い自爆もしないと踏んでか、三人は近距離戦に持ち込んでくる。だがガルの動きはあまりよくない。三人の中で一番ダメージを負っているからだろう。それを案じてか、一度二人はガルの元に集まった。

 バージスはそれが勝機とすかさず仕掛けた。


『エリアルマイン!』


 一同が爆弾に囲まれる。この距離だとバージスも巻き込まれてしまうが、もはや四の五の言っていられない。死にもの狂いで攻めに出た。


『マジックシールド!』


 三人がシールドを張る。


「そんなんじゃ全方位防げねぇよ。さっさと落ちろぉ! 三流がぁ!!」


 バージスが一斉に爆発させ、辺り一面が火薬の匂いに包まれた。

 しかし、三人は防ぎ切った。

 正面をガルが守り、その右後ろをセレンが。左後ろはアイリスと、三人が背中を合わせるようにして、ほぼ全方位を守っていた。


――また凌がれた! 何でこいつらはこんなにお互いを信じられんだ!? 俺よりもランクが低い雑魚のクセに!! これが、仲間なのか……


 バージスが次の行動に出ようとする。が、もはや体が動かなかった。痛みを感じないと言っても、体は確実に傷付き、疲労していく。

 バージスの体は、もやは限界に達していた。ユラユラと揺れ、フライを維持する事もできずに地面に落ちて行く。そんな様をガルは物悲しそうな表情で見ていた。

 バージスはいう事を聞かなくなった体を何とか起こし、立ち上がろうとしていた。だが、体はきしみ、立つ事が出来ない。今、インタラプトを切ったら大変な事になるなと、諦めにも似た変な笑いが込み上げてくる。

 最初に来たのはアイリスだった。動けそうにないバージスを前にしても、まだ警戒している。

 次に挟むようにセレンが姿を見せた。バージスを睨みながらゆっくりと近づいていく。

 最後にガルがアイリスの後ろから現れた。アイリスが振り向き、ガルに話しかけている。だが。


「アイリス! セレンを止めろ!!」


 突然ガルが叫んだ。アイリスが慌てて視線を戻すと、いつの間にかセレンはバージスの正面に立っていた。


『ウィンドセイバー……』


 呟くように杖に魔法を付与する。

 ウィンドセイバーは、杖に鋭い風の刃を纏わせる魔法だ。マジックセイバーとは逆に、極めて殺傷力が高く、魔法使いは好んで使わない。


「お父さんの敵!」

「へっ、これまでかよ……」


 セレンが武器を構え、バージスは諦めたように目を閉じた。


「止めろセレン!!」


 ガルが叫ぶが、セレンは止まらなかった。

 杖を思い切り前に突き出し、バージスの心臓を貫いた。

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