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魔法使いの世界にて  作者:
一章 黒不石にて
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不死身魔法の攻略にて②

ラスボス戦、開始!

戦闘の描写が難しいです。

「嘘……」


 セレンはショックを隠し切れない様子で呟いた。


「いや~俺だって殺すつもりは無かったんだぜ? だけどあいつが相当しつこくてよ……だからつい頭にきて本気で魔法をぶっ放しちまったんだが、そうしたら完全にやり過ぎちまった。チッ!」


 バージスにとっても予定外の事だったのだろう。だが舌打ちしているあたり、間違いを犯してしまった罪の意識というよりは、今後、動きにくくなって面倒くさいと思っているかのようだった。


「他の三人はどうした?」 と、ガルが問う。

「チビ以外の二人もやたらしつこかったから撃ち落した。まぁその二人は死んではいないと思うぜ。あとは倒れた三人をチビとキメラが引きずって、今は洞窟の一番奥の部屋に立てこもってる。まぁ俺は休めればどこでもいいから別の部屋で寝てたけどな」


 そうバージスが話している間に、セレンが文字を刻み始めているのにガルは気付いた。


「絶対に許さない! 『マジックセイバー!』」

「よせ! 落ち着けセレン!!」


 ガルの言葉に耳を傾ける事も無く、セレンはバージスに切りかかった。しかし、魔法で強化したセレンの杖はあっさりと受け流される。

 そしてその時、ガルは気付いた。バージスの持っている杖はセレンの父親の物だという事に。


「その杖に……触らないで!!」

「別にいいじゃねぇか。丁度武器が欲しかったし、戦利品だよ」


 再びセレンが杖を振るう。だがバージスは強化魔法も使っていないにも関わらず、うまく捌いている。

 ギイィィン! と薄い音を立て、セレンが振り下ろした杖の威力を完全に殺して受け止める事で、ようやく二人の動きが止まった。


「っつーか何でそんなキレてんだよ? あの男はお前を捨てたんだぜ? 俺に生け贄としてやるとか言ってたしよ。お前はもうあいつを父親として慕う理由はねぇだろ」

「そんな事ない……私のたった一人の家族……それに最後に私を逃がしてくれた!」

「へっ! 俺にはただ報告要員として使われた様にしか見えなかったけどな! っとぉ」


 グン! とうまく力を伝えてセレンを後方に押し返した。セレンは再度バージスとの距離を詰めようとしたが。


『クラフトボム!』


 ポンっと目の前に爆弾を投げ込まれ、接触しそうになった。


『マジックシールド!』


 すんでの所でガルが間に入り、防御魔法を展開した。

 凄まじい爆発が起こり、前回同様にシールドは半壊し、ガルが咳き込む。バージスとの距離が近かったため、彼もまた爆発に巻き込まれたが、すぐさま傷が治っていく。


「セレン、単独で突っ込むな! 近距離戦は危険だ。連携を取って遠距離から仕掛けるぞ」

「う、うん……ごめんなさい……」


 シールドを貫通してダメージを負ったガルが右腕を押さえている。そんな姿を見てからセレンはようやく突撃するのを止めた。


不死身魔法イモータル解除の準備を頼む)


 ガルはバージスに悟られないように手振りで指示を出す。セレンとアイリスはコクンと頷いて散開した。

 三人はバージスから距離を取りつつ、囲むように周囲を旋回した。

 四人が、ダブルマジックで文字を刻むその間だけ、不気味な静寂が訪れる。この時、少しずつ太陽の光が雲を照らし、朝焼けとなっていった。


『マジックランス!』

『シャドーレイン!』

『フレイムシュート!』


 ガル達が一斉に攻撃を仕掛けた。


『マジックセイバー』


 バージスはニタニタと口元を緩めながら武器を強化すると、そのままアイリスの方向へ飛んだ。

 アイリスが放った散弾式の火球を、一振りで払いのける。

 ガルが生んだ十本以上の槍と、セレンの魔力の雨が僅かに体を傷付けるが、全く気にする事なく一直線に飛びアイリスとの距離を縮めた。


「わわわ! こっち来た!?」


 アイリスが慌てて逃げに転じる。


「アイリスが危ない……」


 セレンは助けようとバージスの背後に回るが、


「二人まとめて吹き飛べ! 『サークルボム!』」


 バージスを中心に、広がる様に爆発が巻き起こると、前後にいた二人が爆風で吹き飛ばされる。


「ひゃうう~! 近寄って自爆で攻撃してくる敵の対処なんて習ってないよ~……」


 アイリスが体勢を立て直しながら泣き言を言うのを見て、ガルは作戦を変更した。


(次の攻撃でやられた振りをして戦線を離脱。魔法の完成に集中しろ)


 周りに指示を出して、ガルはバージスと正面から向き合った。吹き飛ばされた二人も距離を取り、再びバージスを囲むように陣形を組んだ。


「お前らそれで距離を取ってるつもりか? 俺の効果範囲をナメんじゃねぇぞ『エリアルマイン!』」

『マジックシールド!』


 バージスが左手の魔法を発現させると同時に、三人が警戒してシールドを展開させた。だが広範囲に爆弾が無数に現れ、全員が爆弾に囲まれる形となった。


「シールドは防御力が高く優秀だが、前方にしか展開されねぇ。こうして四方八方から爆発させれば防ぎきれねぇよなぁ?」

「くっ!」


 バージスが一同の顔が引きつるのを楽しそうに眺めてから、合図を送る。

――そうして周りの爆弾は一斉に爆発し、周囲に凄まじい爆音と衝撃を響かせた。


「『マジックセイバー!』。うおぉー!」

「むっ!?」


 あの爆発の中、ガルが一気に突っ込んできた。バージスは振り下ろされた一撃を驚きながらも受け止める。


「なるほど、シールドを張った状態のまま直進すれば、後方からの爆発は最小限に抑えられる。やるじゃねぇか。だが、後ろの二人はどうかな?」


 爆発の煙がまだ晴れない中、セレンとアイリスが落下していくのが見えた。


「あの二人は今ので脱落か。呆気あっけねぇな」

「くそっ!!」


 ガルは大げさに悔しがる演技をする。これは作戦だ。あの二人なら大丈夫だと信じていた。


* * *


「痛った~……セレン大丈夫?」


 撃ち落されたアイリスがセレンに近づいて声をかけた。


「なんとか大丈夫……うぅ、やられる振りっていうか普通にやられたわ……とにかく上から死角になる岩陰に隠れて、魔法を完成させましょ」


 二人はコソコソと岩陰に移動して、不死身魔法イモータルを解除するための魔法を完成させるべく、文字を刻み始めた。


「あたし、今の爆発でまた一から刻み直さないとダメみたい。あと十分くらいかかりそう」

「私も……出来るだけ急いで。でないとガルが殺されちゃう……」


 二人は集中して、黙々と文字を刻んだ。時折詠唱を混ぜ、自分がこの時のために組み替えた魔法を手順通りに組み上げていく。


 ――完成まで、およそ十分。

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