表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの世界にて  作者:
一章 黒不石にて
1/108

魔法使いの学園にて

ちょっと興味があったので投稿してみました。

一人でも多くの人が楽しめたら幸いです。

 魔法使いとは、魔力を操れる者のこと。

 魔力は誰の体にも流れているが、それを操る事ができるのはごく一部の人間であり、その素質を持つ者は魔法を学べる学校に入学することを薦められる。成人した魔法使いは優遇され、仕事でいえば一般よりも好待遇で招かれる。

 素質のある者はとにかく魔法を習っておいて損はないのだ。


 これは、そんな魔法学園に入学して、もうすぐ卒業になる、一人の少年の物語。



「ガル君、休み時間ヒマ? ちょっと教えてほしいところがあるんだけど」

「ん? 俺にわかる事ならいいけど……」


 どこか人と話すのが苦手そうな、低い声で答えたガルと呼ばれた少年こそこの物語の主人公である。

 少年と言っても歳は十八歳で学園生活が残すところ一か月となっている。黒髪でスラっと背が高く、整った顔立ちをしているが、残念な事に無表情で愛想が無い。口下手という訳ではないが、あまり多くを語らない口数の少ない性格をしていた。


「またまた~、ガル君にわからない事なんてないでしょ? 学園トップなんだから~」

「……いや、どうだろうね」


 まるで、分からないなんて言わないよね? と言わんばかりの女生徒の言葉に少し抵抗を感じながら、とりあえず質問を聞く。それに必要最低限の答えを返すと、


「チッ! ありがとうガル君」

「あれ? 今舌打ちした?」

「それじゃぁね~」


 あぁ、そういうことか、とガルは理解する。聞かれた事はあきらかに学校じゃ習わない難題だった。それにガルが答えられるか試されたのだ。 

 ガルが現在人付き合いが苦手な理由はここにある。ここの生徒達はみな、成績を気にしており、どうすれば成績優秀者を蹴落とせるか、腹の探り合いをしている節があるのだ。

 はぁ~、とガルはため息をつく。

 なぜ自分を高める事よりも、相手を落とす事に頭がいくのか不思議でならない。そんな事に項垂うなだれていると、


「あ~、見つけた~!」


 廊下の奥からこちらを指さす女生徒がいる。

 さっきの名前も覚えていない女生徒と違い、彼女の事は知っていた。やたらガルに因縁をつけてくる子で、名前はアイリスと言う。金髪でガルよりも少し背の低い彼女が、ズンズンとこちらに向かって歩いてくる。黙っていれば可愛いのだが、口数が多く、ガルは微妙に苦手だった。


(指をさすな。恥ずかしい)とガルはついアイリスから視線を逸らす。


「ガル。次の授業の模擬戦、勝負よ! 次こそは負けないんだから!」

「正確に言うと戦闘指南なんだが……お前実技の成績いいからって本気バトル挑むのやめろよ。先生がいつも困ってるだろ。まぁいいや、試したい魔法もあるし」

「あたしの誘いに毎回乗るあんたに言われたくないけど……」


 もはや学校で教えるレベルの戦闘はこなせる二人にとって、実技の授業はガチバトルの時間となっていた。先生も困る反面、他の生徒の見本にすべきかいつも悩みオロオロしている。


「ん? あんた声がいつもよりワントーン低いわよ? 疲れてんの? あ、その試したい魔法の研究で昨日徹夜したんでしょ! あんたって三度の飯より魔法の研究が好きだからね~」

「まぁそんなとこだ。お前こそ、そんなに実技ばっかり力入れて将来何になる気だ」


 こいつは魔法犯罪組織とドンパチやり合う特殊部隊に入るつもりか、もしくは逆に犯罪組織に入り派手に暴れるつもりかとガルは思った。段々とアイリスの将来が不安に思えてくる。


「特に何になるってのは無いけど、目の前に自分よりも成績がいい人がいたら、勝負して乗り越えたいって思うでしょ?」

「思わん!」


 脳ミソまで筋肉なのは知ってたが、改めてアイリスの将来が不安になる。しかしなんだかんだ思いながらも、いつも気づくとアイリスと会話をしている。アイリスは他の生徒と違ってはっきりした性格だ。腹黒いところは何もない。この学園でガルが唯一気兼ねなく話せる相手だった。

……うるさくて面倒くさい事を除けばだが。


 そして実技が始まった。先生の説明が終わった後は各自、己を鍛え上げるべく修練する時間だ。

 ガルとアイリスはすでに正面に構え、火花を散らしている。……一方的にアイリスの方がだが。

 恒例のバトルに、周りには見物もできている。


「さて、始めましょう。誰か、戦闘開始の合図をお願い!」


 クラスメイトが開始の合図を示すと、二人は同時に魔法の詠唱を始め、指で文字を刻んでいく。魔力を集めた指で文字を刻むと、光る文字が浮かび、そして消えていく。そうして体内の魔力に力を持たせて詠唱によって発現させていく。


『フライ!』


 アイリスが空を飛ぶ魔法を発現させた。

 大体は移動にも、回避にも使えるフライを真っ先に発現させる事が多い。しかしガルはすでに、朝から試したかった魔法をすでに発現させていた。ガルの一メートルほど左横に、黒い光が漂っている。


「ん!? 相変わらず発現が早いわねぇ。で、それはどんな効果があるの?」

「教える訳ないだろ? それを見極めながら戦うのが本当のバトルだ」

「ま、それもそうね~」


 すでに戦いは始まっているのにアイリスがコロコロと笑う。

 しかしアイリスは知っている。ガルの実力を。今まで負け続けてきた力の差を。笑って見せたのも少しでも余裕を見せるための強がりだろう。現に彼女の体は恐怖にも似た感情で小さく震えていた。

 それでもアイリスはガルに挑む。自分が更なる高みを目指すために。


 アイリスが次の行動に出る。発現が早い簡単な初期魔法を指で刻む。しかしそれより早くガルがフライを発現させた。印や文字を刻む指も、すさまじい速さだ。


「くぅ~、はっや! また速度が上がったんじゃないの!?」


 やけくそ気味に、しかし飛び回るガルをしっかりと目で追いながら

狙いを定める。先制攻撃はアイリス。その利点を活かそうとする。


「喰らえ!『フレイムショット!』」


 火の玉を投げ込むも、ガルはひょいっと簡単にかわす。

 そこから本格的な空中戦になっていった。



――ガルの名前はこの学園じゃ知らない人はいない。食事をする時間があるならそれを魔法の研究に使い、気になる事があれば徹夜で解明しようとする。魔法が好きで好きで仕方なく、一日にどれだけ費やしているのか、恐ろしくて聞く気にもなれないほどのめり込んでいる。

 使えるようになった魔法はしっかり安定させるために使い込むため、知識だけでなく、実力も折り紙付き。もはや教師を超えるレベルにまで成長していると噂されている、極度の魔法オタク。

 そんな彼に戦いを挑み続けて、今回のアイリスはひどく余裕が無いように見える。


「攻撃が、当たらない……」


 ガルの回避能力も高いのだが、それ以前に攻撃があさっての方向に飛んでいく。


 自分はこんなに命中率が悪かったのかと思うように、イライラした表情を見せるアイリスだが、その目に宿す闘志は消えていない。


 対するガルは回避に専念しているようで、攻撃魔法をあまり撃ってこない。避ける事だけに専念してお試し魔法の方が気になると言った様子だ。

 その戦い方がアイリスのイライラに拍車をかけおり、アイリスが守りを捨てたかのように攻め一辺倒になった。


「こんのぉ~~!『フレイムアロー』」


 10本以上の炎の矢が一斉に飛んでくる。


「回避は難しいか……『マジックセイバー!』」


 すでに詠唱が終わり、あとは発現するだけの魔法を唱える。すると手に持っている杖が光り出した。

 これは武器強化の魔法だ。

 一斉に飛んでくるなか、自分に当たりそうな矢だけを杖で器用に払い落とす。ガルは護身用に武器の扱いもたしなんでいた。

 ガルは弾いたアローを目で追い、追尾性があるかを確認する。


 そんな様子を見て、アイリスが答えを導き出したような笑いを浮かべた。

 今の無数のアローはガルの左に漂う黒い歪みにも当たっていた。しかしすり抜けていった。盾にするわけでもなく、ただ隣に漂っている黒い歪み。しかし先ほど撃ったアローがガルではなく黒い歪みに方向を変えたのをアイリスは見逃さなかった。


「なるほど、魔力を引き寄せる魔法なのね。今まで飛び回りながら撃ってたから軌道が変わっていたなんて気づかなかったわ」


 ガルに聞こえないくらいの声で呟いた。

 

「もういいわガル。これで一気に決着をつけてあげる!」


 溜まったうっぷんを吐き出すようにアイリスが叫んだ!

 文字を刻み、詠唱し、両手で杖をかざし、狙いをガルに定める。


「両手!? 両手魔法だ!」

「何ランクの魔法だ?」


 見物しているクラスメイトが騒ぎ出す。

 その名の通りで、両手を使わなければ制御が難しい、高ランクの魔法だ。

 ガルは避けずに受け止める気か、詠唱済みの攻撃魔法を解除し、新たに防御魔法を使おうと文字を刻んでいる。


「まとめて飲み込んでやる! 喰らいなさい!『イフリート・ブレス!!』」

『フリーズバリア!』


 ごおおぉっ! という凄まじい音をたて、ものすごい勢いで灼熱の炎が広がる。

 ブレスというだけあって範囲が広い。人の体など容易く飲み込まれ、一瞬で見えなくなる。

 ギャラリーもその光景に唖然として口が塞がらない。


「お、おい、これヤバくねぇ?」

「ガルの奴、消し炭になったんじゃ……」

「いや、でもフリーズバリア張ってたし、俺たち魔法使いは魔法に耐性あるから大丈夫だろ、多分……」


 次第に視界が晴れると、ガルが無表情のまま悠然と浮いていた。

 バリアはどこも壊れていないが、魔力の衝突であちこちからバチバチッと音を鳴らしている。

 おおーっと驚きの声が上がるなか、アイリスだけがやっぱりダメだったか、という悔しそうな表情をしていた。

「あ~悔しい~、また負けた~!」

「なぁアイリス、俺のサクション……あの吸引装置にいつ気づいた?」

「大魔法ぶっ放す前。気づかないふりして勝負に出たけど、あまり意味なかったかもね」

「五分くらいか。なら頭の回る相手でも三分くらいは使えるかもな」


 模擬戦のあと、ガルとアイリスは反省会のような話し合いをしていた。


「ちょっと! どういう意味よ! 大体あんた戦い方が失礼すぎんのよ! 真剣に戦ってる相手に対してテスト運転とか感じ悪過ぎでしょ!」

「うっ、それは……まぁ、確かにそうだな、すまなかった……」


 また悪い癖が出てしまったと無表情のまま、分かり難く反省するも、アイリスは容赦なく責め立てる。本気でキレてる訳じゃなさそうだが、プンプン! とあたし怒ってますアピールをしてくる。


「あんたはいつもそうよねぇ。魔法が絡むと人の気持ちより魔法を優先しちゃうし将来が心配だわ~」

「がーん!」


 まさかアイリスに言われるとは思っておらず、ショックのあまり顔が引きつる。

 しかしアイリスの言うことは一理あると、ガルは粛々と頼みこんだ。


「アイリス。俺の直した方がいいところとか、これからも指摘してくれ。こういうのはお前にしか頼めない」

「ふぇっ!? え、えぇ、直した方がいいときは直接言うようにしてるから、別にいいけど……何? あんた気持ち悪いわよ?」


 なんだか突然頼られるような言われ方をされ戸惑うアイリスと教室に戻るのであった。

 そんなガル達のいる学園を遠くから見る少女の姿がある。周りには奇妙な姿をした動物たちがずらりと並んでいた。


「あそこね。お前たち、準備はいい?……行くわよ!」


 少女はフライの魔法を使い、動物たちは一斉に少女の後に続いた。

三人称視点で描いていきます。ただ主人公の心理描写はありにします。

バトルものの予定なので、戦闘メインのキャラに焦点をあてた心理描写ありの

スタイルにしようかとも思っています。

……難しいですね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ