表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

森の中の娘

奥深い森の中におばあさんと、娘が住んでいました。

ある日のこと、娘はおばあさんに連れられて初めて町に行きました。

町は大変賑わっており、子供たちが沢山集まっている場所があり、熱心に老人の話を聞いていました。そこを通ったときに娘はとんでもないことを耳にしました。

「お姫様がカエルにキスをすると王子様になりました。王子様は魔法使いにカエルの姿にされていたのです」

と。娘は大変驚きました。立ち止まって話しを聞きたかったのですが、おばあさんについて行かないとはぐれてしまうため、そこを通り過ぎました。


森の中のおんぼろの家に戻って娘はおばあさんにその話をしました。娘があまりにうれしそうに話すので、それはただの物語だと教えませんでした。


そんなある日、娘は森の中で一匹のカエルに出逢いました。その瞬間、木の葉についていた水滴がぽたりと娘の頬に落ちました。娘にはそれがきらりとした特別な光に見えました。運命的な出会いだと感じ、カエルを大切に抱えて家に帰りました。


娘はカエルを木箱に入れ大切に育てました。いつ、王子様になるのか、時々キスをしてみましたがまだその時期は来ていないようでした。


そのうち、年老いたおばあさんは死にました。娘はひとりぼっちになってしまいました。娘の愛情はカエルへとどんどん注がれていきました。


数十年がたちました。

娘は年老いたおばあさんになっていました。最近では、足腰が弱って狩りに行くのも辛く、畑でとれる野菜や木の実を食べました。カエルはどんどん成長し、娘と同じぐらいの背丈になり、食べる量も増えていましたので大変おなかを空かせていました。

そんなある日、娘は老衰で死にました。カエルは食べるものがなくお腹を空かせていたので、娘を食べました。それは、言い様のないぐらい不味いものでした。

カエルは気持ちか悪くなってゲロゲロと吐きました。部屋中臭くなったので、外にでてみることにしました。外の世界は数十年ぶりでしたが、空気がとてもよく、気持ちがよかったのでゲロゲロと鳴きました。すると、どこからともなく、もっと大きなカエルがやって

「どこに言ってたんだ、探したよ」

と言いました。正直、こいつだれ?と思いましたが、まあいいやと思い

「探させてごめん」と言いました。

「じゃあいこうか」と大きなカエルが言ったのでついて行くことにしました。

ふたりは森を抜け遠くに消えてゆきました。それから、カエルは100万年幸せに生きました。娘のこと思い出すとはありましたが、それはあのくそ不味い味でした。二度と食いたくないな、と笑い話になりました。


おしまい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 話のテンポがとてもいいですね。 [一言] いろいろと考えさせられました。価値観って人それぞれもテーマの一つでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ