エピローグ
僕は最も有名な寝具制作会社の社長をしている。僕の会社の作る寝具を使った人たちはもう一生布団と離れたくない!とぐーたらする事で有名で、世界中で朝寝坊が大流行しているらしい。
「あなたー、朝ご飯が出来ましたよー」
「はーい、今行くよ―」
リトルビットは結局その後もとにかく手軽にできるようにバージョンアップを続けた。
しかしスマホアプリ版を追加したあたりで「もうVRMMOじゃなくてスマホ版でよくね?」とプレイヤーに言われた事で運営会社が絶望し、サービス終了となった(スマホ版は続いている)。
その際にいくつかのキャラクターのAIを制作会社と交渉して買い取ったのだ。つまりたった今朝ご飯を作ってくれた妻はあのリトルビットにいた少女であり、ロボットのAIなのだ。
AIと結婚したいなんて言い出した僕は当時は親にも怒られたし、世間でも話題になった。二次元と結婚したい!とかいいだす人は割と前からいるが、本気で婚姻届を市役所に提出する人は割りと珍しかったのだ。
しかし、セクシャルマイノリティの人たちの婚姻が認められた時に「同意があれば割とだれとでも結婚していいよ(意訳)」と憲法が変わっていたし、なんやかんやあってAIに人権が認められたりして意外となんとかなったのだ。
「行ってくるよ」
「いってらっしゃい、お仕事がんばってね」
少女といって来ますのキスをし、会社に出勤する。
「おはよう、みんな」
「おはようございます、社長。新しい布団のアイディアですが、わたあめが入っていて非常食になる、わたあめ布団などはどうでしょうか」
「おいしそー!いっその事外側も食べられるようにしようよ!」
突然アホなことを言い出す木_2と木_3。全く、寝心地もよくしなきゃだめだよ?木_4はいびきをかきながら寝ている。最新の寝具のテスターだ。
過去を振り返ってみるとなんで寝具作りなんか始めたんだろうと今更ながら思う。でも、これが恐らく天職だったんだろう。だが、リトルビットがなければ今の生活はありえなかった。
リトルビットはいろんなものを教えてくれたし与えてくれた。人を扱うということについて。寝具の制作技術。頼れる仲間たち。そして、最愛の妻。今僕は、幸せの絶頂期にいるのだろう。こんな素敵な人生を与えてくれたVRMMOに感謝したい。
――リトルビット、ありがとう。