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寝具職人

 学校でも勉強中ずっとこのゲームが気になって集中できなかったなー。でも悪い点を取ると取り上げられそうだし、気をつけなきゃ。というわけでログイン。


 ログアウトした時は草原だったのにログインすると街の中心に戻っていた。フィールドでログアウトすると戻されちゃうのかな?そういえば、木_2がある程度レベル上げをしてくれてた筈だ。分身の効果はどんなもんなんだろう。確認してみる。



名前:りんごの木気になる木 Lv 7

スキル:分身 Lv1 短剣 Lv12 走行 Lv15 ジャンプ Lv1


 かなりレベルが上がっている。さすがお手軽VRMMO。しかしジャンプは狩りでは使用しなかったようだ。恐らく最適な狩りに必要な行動ではなかったのだろう。スキル上げさせたいなら『ジャンプを使いながら狩りをしろ』みたいな命令をすればいいのかな。


 ステータスを確認していると気になる木が僕のところに駆け寄ってくる。そして、


「ログアウト中の行動のログを閲覧することができます。確認しますか?」


 と聞いてきた。え、そんな事もできるの?昨日いたレアアイテム貢いでた人とかログ見られたらバレちゃうじゃん!そんな事を考えながらとりあえずログを確認すると告げる。するとログが目の前にポップアップ表示された。



りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

走行スキルのレベルが上がった

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

短剣スキルのレベルが上がった

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2「疲れました」

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2「はぁー」

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。

りんごの木気になる木_2はうさぎを短剣で撃破。


.

.

.



 なんか愚痴ってる——!??でも昨日は確かその後は自由に行動してていいって言ったはずだ。恐らくこのログの後はちゃんと休憩しているだろう。ログをスクロールする。



りんごの木気になる木_2「疲労につき狩りを中断します」

りんごの木気になる木_2はスタートスに到着した。

りんごの木気になる木_2は焼き鳥を50Gpで購入した。

りんごの木気になる木_2「おいしい」

漆黒の堕天使_3「お、ルーキーか?」

りんごの木気になる木_2「はい、りんごの木気になる木_2と申します」


 なんか他の分身と会話を始めた。


漆黒の堕天使_3「この分身業界は相当大変だぞ。他の道を選んだほうがいいんじゃねえか?」

りんごの木気になる木_2「そこそこ辛いですが、マスターはお優しいので」

漆黒の堕天使_3「ほう」

りんごの木気になる木_2「自由時間もくださいましたし」


 やっぱり自由時間とか欲しいんだ……ちゃんとこれからも用意しよう。というか他の道とかあるの?


.

.

.


漆黒の堕天使_3「じゃあな、がんばれよ、ルーキー」

りんごの木気になる木_2「はい!」

りんごの木気になる木_2は漆黒の堕天使_3はフレンド登録をした。


.

.

.


 うーん、こんなログを見せられるとそもそも命令とかさせたくなくなるんですが……。


 その後も木_2は広場でサッカーをしたり、カジノに行ってみちゃったり、元気に活動していた。初対面の時は分身はロボットみたいなものなのかと思ってたけど、印象が完全に変わった木_2は敬語で抑揚がないしゃべり方をするだけだったんだね。


 と、まあ分身の事は大切にしようという事がわかった所で今日はクエストをこなしてみよう。クエスト一覧を開くと受注可能クエスト一覧という物があるのを確認している。



クエスト名 野うさぎのしっぽが欲しい!

種別:一般クエスト(反復可)

状態:未受注

内容:野うさぎのしっぽは幸運のお守りになるらしいの!報酬はあるからとりあえず5個持ってきて!

報酬:経験値*200 Gp*800

[依頼者の元へ移動]


 野うさぎのしっぽはちょっとだけレアアイテムのようで、あれだけ狩りをしたしさせてたのに20個ほどしかない。しかし、依頼数には達しているしこのクエストは反復して受けられるようだからとりあえず受けてみよう。


 ポチっとな。移動ボタンを押すと例のごとく体が勝手に動き出す。前よりも速い!?これが走行スキルの影響か。


 そんなこんなでしばらく走っていくと、なにやら明らかにNPCらしき少女がいるのがわかる。NPCは頭に丸印が乗っているようだ。駆け寄って話しかけてみる。


「えっと、クエストを受けたいんだけど」


「えっ……」


 こっちがえっなんだけど、なにその嫌そうな顔。


「あ、あの、なにか問題が?」


 聞いてみると少女は少し躊躇しながらもこう言った。


「私、最初は本当に野うさぎのしっぽが欲しいって思ってクエストを出したんだけど……」


「出したんだけど?」


「たくさんほしいから反復にしたの。そしたら……」


「そしたら?」


「家が野うさぎのしっぽでいっぱいになるくらい反復されちゃって」


「えぇ……」


 それならクエストを取り下げればいいだけなんじゃ……。


「私がクエストを出したのは野うさぎのしっぽが欲しいのもあるけれど、運営さんに初心者用のクエストを出して欲しいってお願いされたからなの。だからクエストは初心者さんがいなくなるか他の人が初心者クエストを作ってくれるまで取り下げられなくて……」


「えぇ……」


「だからプレイヤーさんお願い!野うさぎのしっぽを冒険者ギルドに運んで売ってきて欲しいの!」


クエスト名 野うさぎのしっぽはもういらない

種別:隠しクエスト(反復可)

状態:未受注

内容:野うさぎのしっぽ恐怖症になっちゃいそうなの!私の家の野うさぎのしっぽを冒険者ギルドに運んで!

報酬:経験値*200 運搬1kgあたりGp*400

[受注]


 ……この報酬はどこから出てるんだろう……。そんなに反復されちゃうとお金がなくなっちゃうと思うんだけど。


 とりあえず依頼を受注する。少女から野うさぎのしっぽを入れる袋をもらい、袋詰して持ち上げ、移動ボタンで冒険者ギルドを選択する。ちなみにクエストだからかアイテムボックスに収納はできないようだ。


 冒険者ギルドについた。


「ようこそ冒険者ギルドへ」


「えっと、素材を売却したいんだけど」


「売却ですね。では、こちらにアイテムを置いてください」


 野うさぎのしっぽの山をどかっと置く。


「!?……失礼しました。数えるのに時間がかかりますので少々お待ちください」


 野うさぎのしっぽを1つ1つ数え始める受付さん。応援も呼んでみんなで数えている。お手軽VRMMOなのに一瞬で数え終わったりしないのか……。


「ふぅ、ようやく数え終わりました。合計61500Gpに……」


 遅れて木_2がやってきた。分身はステータスが半分だから来るのに時間がかかったようだ。どさっと野うさぎのしっぽをカウンターに置く。


「……」



 少女の元に戻り、野うさぎのしっぽの代金を渡す。


「ありがとう!報酬はとりあえず4kgだから1600Gpだね!」


 しっぽは合計100000Gp以上で売れたのに報酬が1600Gpなのはちょっと悲しいが彼女も野うさぎのしっぽが欲しい!のクエストで散々Gpを支払っていたわけだからしょうがないだろう。


「じゃあ次の分ね!」


 僕達がギルドに向かってる間に袋詰めをしていたようで、袋を手渡してくれる。


 そういえば、この野うさぎのしっぽで『野うさぎのしっぽが欲しい!』のクエストをクリアすることもでき……そんな事を考えていると少女の顔が悲しみに染まる。今にも泣きだしそうだ。……うん、そんな残酷なことはできない。普通にクエストをこなそう。


——運搬スキルを習得


 そんなこんなで10往復。野うさぎのしっぽもちょっとは減ったかな?と思って少女の家を覗いてみると野うさぎのしっぽだらけ。まだまだ先は長そうだ。『野うさぎのしっぽが欲しい!』のクエストを受けに来た他の人と一緒になって野うさぎのしっぽをギルドに運ぶ。よいしょ。よいしょ。





 一週間後。僕は今日も立派に野うさぎのしっぽを運んでいた。途中で手押し車を使うという発想に気づき、大量に運ぶ。


 たくさん運んだのだから野うさぎのしっぽはもうなくなったかというと……無くなってない。心ないプレイヤー達が『野うさぎのしっぽはもういらない』のクエストを無視して『野うさぎのしっぽが欲しい!』のクエストを完了しているのだ。なんて非道。


 そろそろ冒険者ギルドの倉庫もいっぱいになってもおかしくないと思ったのだが冒険者ギルドはアイテムボックス式の倉庫を使ってるらしい。ずるい。


 最近は野うさぎのしっぽ入り枕とか野うさぎのしっぽ入り布団とかを作って売ったりもしている。ふわふわなので人気が高い。


 枕や布団はアイテム生産スキルを使って作るのだが、例のごとく自動ボタンがある。最適化された動きで完璧な枕や布団を作ってしまうのだ。おかげで現実世界でも布団を作ることができるぐらい体が完全に覚えてしまった。将来は寝具職人になろうかな。


 分身スキルも成長し、木_3を召喚できるようになったのでますます効率が上がった。


「枕作りって楽しいね!」


 木_3は元気な人だ。枕作りが好きなようでログアウト中に命令しておいてもせっせと作り続ける。木_2は結構サボる。




 二ヶ月後


 野うさぎのしっぽはとっくの昔に無くなっている。もちろん『野うさぎのしっぽが欲しい!』のクエストを受ける人はいるのだが、数が増えたらすぐに枕に加工してしまう。



 五ヶ月後


 寝具専門の商店を開いた。


 ——そう、僕は完全に寝具職人になっていた。裁縫スキルもとっくにカンストし、派生スキルである寝具職人スキルを習得した。枕作りの技術自体は自動でやっているので変わらないのだが、スキルレベルによってアイテムの性能は変わる。ぼくの枕は最早、神の領域に達しているといえるだろう。


幸運な最高の祝福されたふわふわの聖なる枕『母の抱擁』

睡眠効率:120.5pt

回復効率:500pt

睡眠時に安眠結界(強度:500)を発動する。

1時間睡眠後30分間全ステータス1.3倍


 睡眠効率とは眠気回復にかかる効率の事だ。これが低い寝具だと眠気の回復に時間がかかってしまう。プレイヤーの眠気はログアウト中に回復するので廃人でない限りそこまで問題ないが、分身の寝具を良くすればその分長時間の活動が可能になりゲームの効率が上がるのだ。


 ちなみにこの枕を使用すると20分で眠気が完全に無くなる。この枕が開発されるまでは廃人勢に「このゲームはスマホゲーのスタミナ制かよ」と文句を言われ続けていたが、もはや眠気回復アイテムを課金で買う者はほとんどいない。


 回復効率というのは寝具使用時に1分に回復するHPとMPの量だ。ポーションを使えばすぐ回復できるのでそこまで重要視されないが、1分間横になるだけでHPとMPが500回復するというのはなかなかの物だ。3つ目の安眠結界により安眠を妨害されにくいため、狩場で回復のために1分だけ眠る、といった使い方もされる事がある。


 そして最後の能力、これがこの枕の一番重要な点だ。1時間も睡眠する必要がありその後30分しか効果がない、と言われると微妙に見えるかもしれないが、1.3倍というのは大きな数字だ。この枕のおかげでボスの目の前で寝るやつが急増した。


 僕の寝具はこの「リトルビット」の世界を変えた。誰もが僕の作った寝具を持ち、狩りをしている。


 だが、寝具職人のスキルはまだまだカンストしていない。それだけではない。最近は自動による寝具の加工をやめ、自分で寝具を制作しているのだ。


 このゲームを始めた時は自動は洗練された完璧な動きでプレイヤーの技術では勝てないと思っていたのだが、そうではなかった。プロ寝具職人となった僕の目からすると、自動は完璧ではなかったのだ。まだ上がある。僕の寝具職人としての心が言う。


 ——自身の手で最高の寝具を完成させろと。




 一年後


 僕は少女に誓った。


「必ず史上最高の寝具を作る。だからその時は僕と結婚してくれ」


「……はい、喜んで」


 史上最高の寝具を作るには史上最高の中身が必要になる。本当は少女との思い出の品である野うさぎのしっぽを使いたかったが、残念ながら野うさぎのしっぽは一番最初の街の周辺の一番最初のモンスターのドロップ。史上最高の寝具にはなり得ない。史上最高の寝具には史上最高のモンスターの素材が必要だ。


 リアルでは別に寝具の出来に素材を持つ動物の強さとかは関係ないと思うのだが、ここはゲームの世界。強いモンスターの素材であるほど完成度も上がる。上級ボスモンスター『カイザーフェニックス』。奴の羽毛を取りに行く。


 ゲームをプレイするうちに習得していた自動移動スキルの派生スキル。瞬間移動スキルを使用する。場所はカイザーフェニックスの住む山、グランド山へ。


 カイザーフェニックスを見つけた。山の頂上で挑戦者を待っているらしい。山の頂上は挑戦者が自由に戦えるようにするためか、平地になっていた。


 僕は幸運な究極の祝福された超絶ふわふわの聖なる枕と絶対なる魔法の光り輝くふわふわの布団を使い、睡眠に入る。睡眠時間は30分。僕は1日2時間のプレイ制限があるからこれは大きなロスだ。もし、時間内に倒せなければログアウトしなければならない。だが、負ける気は、無い。




 そして、目を覚ます。同時に一緒に寝ていた木_2,木_3,木_4も目を覚ました。


「全力を尽くします」


「絶対勝たなきゃね!」


「あぁ、なんなら俺一人でも奴を仕留めてやるぜ?」



「よし……いくぞ!」




 りんごの木気になる木の勇気が世界を救うと信じて…!

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