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チュートリアル

 世の中にVRゲームが潤沢に存在するこの時代、人々はVRMMOにお手軽さを求めるようになった。


 20XX年頃、日本では「いつでも」「どこでも」僅かな時間で少しずつプレイできるスマホゲームが大流行していた。代わりにプレイできる場所が限定されている据え置きゲームはゆっくり衰退していったのだ。


 物珍しさからVRゲームが登場した時は、世界を震撼させ一大ブームとなったが、VRゲームには重大な欠点があった。ゲームをしている間、プレイヤーは意識を電脳世界に移すため、かつての据え置きゲーム機と同様、プレイできる場所が限られているのだ。


 正確に言うならば、VRゲームハードである「バーチャルステーション」は少々巨大なヘルメット程度の大きさなので持ち運びができる。つまりどこでもゲーム自体は出来るのだ。


 しかし迂闊に電車で電脳世界にダイブしていたら熱中してしまい降りる駅を通りすぎてしまうかもしれないし、なによりもダイブ中にプレイヤーは完全な無防備状態なのだ。財布や鞄などの貴重品が盗まれてしまうかもしれない。


 とにかくVRゲームは「どこでも」プレイできるというわけではないのが実情だった。


 次に「いつでも」プレイできるかどうかに焦点が当てられるわけだが、これも厳しい。先ほど語ったようにVRゲームがプレイできる場所は限られている。という事はその時点で「いつでも」プレイする事はできない。


 それだけではない。VRゲームの世界にダイブインしようとしてもすぐに電脳世界に入れるわけではないのだ。およそ五分から十分ほど健康状態の確認や睡眠への誘導の時間が必要とされている。


 加えて言えばダイブアウトする時にも身体の健康状態をチェックする為に五分ほどのタイムラグがある。「ちょっと20分だけゲームやろっかなー」と思っても実際には5分しかプレイできないのだ。


 他にも健康に悪いとか様々な理由でVRゲームは苦情が多かった。勿論VRゲーム自体はそれでも流行していたが、その分自由にプレイできる時間が少ないことで不満を持つ者が多かったのだ。


 ――そこである会社が立ち上がった。






account:appletabetai

Password:abcdefg

——パスワードに危険性があります。大文字、小文字、数字、記号を1字以上組み合わせたパスワードにしてください。



account:appletabetai

Password:Abcd_efg123


——アカウントの登録が完了しました。ログインします。キャラクターの新規登録を……






 気が付くと、僕は草原にいた。


「ここが今日本で人気のVRMMORPG、リトルビットの世界かー」


 僕はこのVRゲーム全盛期のこのご時世に一度もVRゲームをプレイした事がないという類稀なる存在である。授業でVR空間を利用することはよくあるのでバーチャル世界自体には入ったことがあるのだが、親にVRゲームの類は禁止されており、この広大な世界に入ることは今までなかった。


 しかし「VRゲームの話題が無いと友達の会話についていけないんだよぉ!」と泣き落とすことでついに解禁、1日2時間まで、勉強もしっかりがんばる、と約束はさせられたが今からこの世界を楽しめると思うとドキドキする。


 話によるとこのゲーム「リトルビット」はとにかくお手軽に時間が少なくてもプレイできることに特化しているらしい。詳しい説明は見てないけど僕にぴったりのゲームだろう。


 そして、僕の眼前には辺りの風景を見渡すのを邪魔するかのように、半透明のボードが浮かんでいた。


「チュートリアル1 『メニュー』とコマンドを発音し、その後クエストボタンを押し中を確認してみましょう」


「メニュー」


 コマンドを宣言するとポン、という小気味よい音と共にメニューが開かれる。ステータス、アイテム、装備、スキル、クエストと言った選択肢が書かれており、その中でもクエストのボタンが薄く光っている。クエストと書かれたボタンを軽くタッチするとクエスト一覧と思しき物が現れた。どうやらすでに受注してあるクエストがあるようだ。クエスト名はチュートリアル1。クエスト名をタッチすると詳細が表示される。


クエスト名 チュートリアル1

種別:システムクエスト

状態:達成(完了待ち)

内容:あなたはリトルビットの世界に今舞い降りた。まずはこの世界について知ろう。メニューを開き、クエストの報酬を受け取ろう。

報酬:レッドポーション*1

[報酬を受け取る]


 いかにも押してくださいと言わんばかりに置いてある[報酬を受け取る]のボタンを押すと、ファンファーレの効果音が鳴り響き、チュートリアル1のクエスト詳細が消えた。クエスト一覧を見ると、新たにチュートリアル2という項目がある。


クエスト名 チュートリアル2

種別:システムクエスト

状態:未達成

内容:レッドポーションの味を確かめよう。メニューに戻り、アイテムボタンをタップするとアイテム一覧が開かれる。その後アイテムをタップすることでアイテムの使用が可能だ。

報酬:レッドポーション*2



 次はアイテムを使用のチュートリアルのようだ。クエスト一覧を閉じ、今度はアイテム一覧を開く。アイテム一覧を見るとその中にはレッドポーションと思われる赤い液体の入った瓶のアイコンがあった。それをタップする。するとアイコンが消える。


 ……何も起こらない。VRゲームっていうぐらいだから実際にポーションが目の前に出現してそれを飲んだりするのかと思ったのだが。


 クエスト一覧を開き、チュートリアル2を達成すると、チュートリアル3が現れる。


クエスト名 チュートリアル3

種別:システムクエスト

状態:未達成

内容:レッドポーションの味はわからなかったと思います。今度はコンフィグを開き、消費アイテムに関する設定を確認し、試しに変更して、もう一度レッドポーションを使用してみてください。

報酬:レッドポーション*20 ブルーポーション*20



 コンフィグを言われた通りに開いてみる。すると膨大な設定項目が出現する。チュートリアルの仕様なのか一番先頭に消費アイテムに関する設定が赤字で表示されていた。


消費アイテムの使用形式

・タップ後、結果のみを反映する check

・タップ後、アイテムを実体化する


 なるほど、この設定を変えてタップするとポーションが出現して飲めるようになるのかな。でもなんでこんな仕様に?早速設定を変更してレッドポーションをタップすると、思った通りに赤い水の入った瓶が手のひらに現れる。


 ちょっと躊躇するが口をつけてみる。……うっ、トマトの味だ。実は僕はトマトが大嫌いなのだ。そうか、多分苦情があったのだろう。設定は結果のみを反映するに戻しておこう。


 まあこんな感じでチュートリアルをどんどんとこなしていく。モンスターを試しに倒してみるだとかでかわいいうさぎが出てきた時は倒すのを迷ったが、報酬で貰った短剣で刺して倒した。そして次のチュートリアルが表示される。


クエスト名 チュートリアル10

種別:システムクエスト

状態:未達成

内容:このゲームでも重要なシステムです。スキル一覧を開き、分身スキルを使用してください。

報酬:2000Gp


……分身?


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