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お助けその3

何この猫かぶりしてた七海を連想させる姿は……。いや、それ以前にさ……


「何故ダンボール…?」

「……!」


目の前で震えているダンボールは俺の呟いた言葉が聞こえたのかより一層ガタガタと震えていた。


「駄目ですよ先輩。この娘は小動物系何ですから」

「……は?……いや、だからって此処まで……」

「きっと理由があるんですよ部長。此処は僕のおもてなし「圭太君だと生理的に多分嫌われるよ」どういう意味だコラァアア!」


七海は怒鳴る圭太にローキックを入れると、倒れるセミロング馬鹿をスルーしつつダンボールの近くへ屈み込み中を覗いた。


「………七海ちゃん?」

「いい加減出ようか?」

「…へ?はへぅ!?」


容赦なく、いやホント容赦なくダンボールに入っている友人が何か言う前に七海はダンボールを持ちひっくり返した。

その勢い良いでべたんっと床に叩きつけられた可愛い少女が涙を溜めながら鼻をさすっていた。


「…………ぁぅ……痛いよナナちゃん」

「じゃ、ヒメちゃんは何時までああしているつもりだったのかな?」

「………ぅう」

「おい……あまり苛め「ひゃぅううう!」うわっ!」


七海に近づいた瞬間そんな悲鳴が聞こえ、七海の可愛い友人は後ろへと隠れた。多分俺に対してだけど、うわ…今すげぇ悲しいんだけど…。

俺って嫌がられることしたか?


「あ、あの……俺、何かしたっけ?」

「い、いぇ……違うんです!その……えと…………ぁう」

「「あーあ泣かせちゃった」」

「俺が悪いのか!?泣きたいのはこっちなんだが!!」

「ひぅっ!?ごめんなさい!」


何故だか謝られる始末。というか圭太は何ニヤニヤしてんだ!!ツッコミポジション逃げてんじゃねーよ!


「……あーもう、とりあえず座れよ」

「……はい」

「じゃあ僕はおもてなしの準備をしますね!」

「私のもお願いー」

「「お前は自分でやれ!!」」


七海は一応副部長何だというのに…何故だか俺と圭太は結局あいつにまでケーキを出す羽目に。

何か最近、力関係が変わってる気がするのは気のせいだろうか?



「紅茶。良かったらどうぞ」

「あ、ありがとう……ございます」


圭太は音を立てずに紅茶とケーキを手際よくテーブルに置く。おもてなしモードのあいつは紳士みたいなもんだからな……。

深く頭を下げ圭太が離れた後、俺は目の前で縮こまっている少女を見た。紅茶が入ったティーカップを持つ手が震えているせいか、カチャカチャと皿に当たっている。


「……えっと、とりあえず落ち着けよ。な?」

「……は、はい……すみません」


空乃姫そらのひめ』は七海の話しによれば彼女は大人しいが、人見知りが激しく精神面が大変低い。七海の友人ってのがすげぇ意外だが……小動物か、可愛いな。


「先輩訴えますよ?」

「すみませんでした」

「い、いえ、気にしてないですから……」


何ていい後輩なんだ。七海は少しは彼女のように大人しく……痛たた……抓らないで!皮が!!


「……で、……空乃が依頼人でいいんだよな?」

「……強制的に来るよう……ナナちゃんから架空請求メールを送られましたが……はい、私です」

「悪い。うちの副部長が迷惑かけたな」

「い、いえ…日常茶飯事なので……」

「毎日ああなの!?」


圭太がツッコミたいのはよく分かる。メンタル弱いのによくまあ折れないよな空乃。もしかしたら…七海の友人効果?


「……えと……大体一日で四件は……」

「単なる嫌がらせというか七海ちゃん、小動物系友人を何苛めてんの!?」

「えーだってヒメちゃんが必ず返してくれるから」

「違うからね!?大人しい空乃さんだから、暇であろう七海ちゃんの相手をしてくれてるだけだから!」

「………あ、ナナちゃん…モスバーガーに行こうっていうメールの返事忘れてた…」

「空乃さんも少しは怒って!!」


圭太はバンバンと近くの作業机を叩くが……俺の机だぞ?

変人気質な性格の七海、大人しく小動物な空乃。多分こういう性格だからお互い仲良くやれてるのかもな。空乃は大人しすぎるのがちょっとな…。


「……依頼っていうか、相談てのはやっぱ七海か?」

「あ、い、いえ……何で七海ちゃん……何ですか?」

「……あーうん。忘れて」

「?……はい」


縮こまってる空乃よりも、何か聞いた俺の方が恥ずかしいんだけど!

あまり強引に聞くのはよくないと踏んだ俺は紅茶を口にしながら暫く待っていると、未だに顔を赤くしている空乃がようやく重そうに口を開いた。


「あ……あの……私……最近……その」

「ヒメちゃんは成績がやばいんです。しかもビリケツ」

「はえぅう!?」

「直球で迷ってたこと言ったよこの人ーー!!」

「あぅあーー!」


空乃の赤かった顔が更に染め上がり、瞳を揺るがせながら、圭太が七海に怒鳴っている内に近くに置いてあったダンボールへと走りすっぽりと収まった。


「あれ?ヒメちゃんはどうしました?」

「ダンボールの中に再び消えたよ」

「ちょぉおっ!?七海ちゃんダンボール揺すったら駄目!」


うわ、容赦ねぇな……。

七海は再びダンボールをひっくり返すと同じように空乃が追い出され、横向きの体制で猫のように体を丸め……!。


「あぅ……恥ずかしいよナナちゃん……」

「そっちの格好の方が余計に恥ずかしいけどなあ」

「……はぅ!?酷いよナナちゃぁん」


七海に弄られている空乃だが助けてやることが出来ず俺と圭太は天井を必死に眺める。

視線を下ろした瞬間、俺達は変態というレッテルが貼られるだろう。


「……あ、あのぅ秀久先輩は何で天井を…」

「ヒメちゃん。まずは自分の状態を見よっか☆」

「ほえ?……ひゃああぁあーー!?すみません!すみませんすみませんすみません!」


いや、謝らなくてもいいんだけどさ。空乃って案外無防備なんだな……。

そっと立ち上がった音を耳に、俺達はまだ警戒しながら顔を下ろした。あたた…首痛いな…。


「えと、空乃はビリケツで……」

「あ、あのぉ、さらっと言わないで欲しいです……ぐす」

「え?あ、いや、ごめん」

「デリカシー無いですね」

「七海ちゃんもだけどね!?」


ああ悪い癖出て……また泣かせちゃったよ。治そうとはしてるんだけど……やっぱ難しいな。

圭太ことセミロング馬鹿が七海にストーレトパンチを食らってるのを軽くスルーし、ぷるぷると震えている小動物に目を移す。


「それで相談てのは成績のことか?」

「……はい。…えと……実は……」


しどろもどろに視線をさ迷いながら言葉を考えている。まあ、成績が低いと誰だって恥ずかしいし言いづらいよな……。

ん……?てかさ…気になってたけど、何であいつさっきから左腕を握って……。


「空乃……ちょっと左腕見せろ」

「はははぇぅ!?せ、先輩!?」


びくりと体を大きく振動させ後ろに下がろうとする彼女を無理やり引き寄せ、制服で隠れている左腕を見る。

……やはり違和感を感じ、ブレザーを捲ってみると包帯が巻かれていて、赤く滲んでいた。


「……そ、空乃さん!?どうしたのその傷!」

「…………」

「この傷は刃物じゃない……どちらかと言えば擦りむいたような……」

「打撲にも見えますね」


七海の呟きを頭に入れていると一つの考えにたどり着いた。

空乃は成績がビリケツ……そして温和で臆病な性格…。


「なあ……空乃。……お前、苛められてんのか?」

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