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お助けその2

依頼人が消え、依頼が来ない時、俺達の部は活動が無くなっている状態。言わば昼休みの教室と同じ状態になってしまっている。


馬鹿圭太以降セミロング馬鹿の御陰様で俺らの部活には『ナンパ注意!お助けと装った騙し』などと呼ばれる羽目にもなっていた。それでも、来てくれたのに…来てくれたのに…!!


俺達『お助け部』は依頼人に頼まれたことを解決する部活であり、基本何処へでも駆けつけますっていう……もはや部活という概念を越えたものでもあってか、夜間に関しては何故だか俺だけ、普段では俺と圭太……たまに副部長である七海が来てくれていて……、夜間は一人って辛いよ。何であいつらは来てくれない訳?


……、おほん。あー話しを戻すとだな、…依頼ってのも色々あるんだ。

ナンパ退治とか、告白大作戦とか、不良退治とか、五円を見つけるとか、体育教師を倒せとか、蜂の巣を撃滅とか……。


「あと…盗撮とか」

「もはやお悩み解決じゃない!!それ犯罪です!僕達の部活で一番駄目じゃないですか!」

「え?そうなのか?……あの野郎……ケーキで釣りやがって…!」

「あんた馬鹿!?さっきといい、何で甘いもので釣られるのさ!?」

「馬鹿ですか?……それとも死にますか?変態ですか?」

「ごめんなさい」

「七海ちゃん言葉の暴力!部長泣いちゃってるから!」

「え?泣かせたら駄目なの?」

「当たり前だああ!!」


おおう…今日も冴え渡ってるなあツッコミが。

流石に気迫負けしたのか七海はしゅんと小動物のように落ち込みながら、こっちをじっと見る。あーあれは助けての合図だな。でもな七海……流石にそれはお前が悪いと。


「(うるうる)」

「はー……しょうがねぇな。おい圭太」

「何ですか?僕は今から七海ちゃんに常識という授業「あっちにセミロングの可愛い子が居たぞ」……暫く留守にします!」


行動早っ!?何でセミロングの言葉だけで反応するんだよ!もうすげぇ怖いよ色々と……。


「助かった」

「良かったな」

「今回だけは礼を言います。ありがとうございます」

「ん?あーお互い様だ。……それより七海」

「はい?」



「何時までダンボールに入ってるんだ?」


七海はびくう!と体を震わせると、涙目でぷるぷると怯え始めた。……何この可愛い小動物…。

捨て猫ならぬ捨てビト?それなら拾わないでって書いて部室の外に置いてみるのも……


「先輩?」

「……!あ、あー何でも無いよ」

「あの…………良かったら先輩も入りますか?」

「え?」


唐突な問いかけに心臓が張り裂けそうだった。いきなり何を言い出すんだよこの小動物は!?


くそ、ダンボールからそっと覗き込む仕草が可愛すぎる!!

で、でもいいのか?仮にも異性……。あんな狭い場所に一緒に入ったら……。


「先輩?」

「……是非お願いします」




見渡す景色は廊下を歩きながら変な目で見つめる生徒達。


「……あ、あれ?おかしいな?」


間違いじゃなければ此処って部室前だよな?あれ?あれれ?

しかも何で俺一人?七海は?


 ――貴重な狼です。拾わないで下さい


ダンボールにちょこんと座る俺を見つめる視線は哀れみ、興味、小動物、可愛い、妬み…と言ったものだらけ。


女子からの視線は何故だかほわわんとした優しいものが混じっていて、男子からは殺気やら可哀相だなこいつといったものとたまに女子と似たようなものが………。


……まさか!……。畜生!やられたぁああああ!!あの猫かぶり女ぁあああああ!!



「七海ちゃん。これ一体?」

「ダンボールと先輩小動物で組み合わせて部のPR」

「おかしいでしょ!?犬耳と尻尾付けたのは似合ってるけど、半分以上は部長には恥と苦しみしか無いからね!?」

「簡単に騙されるとは、馬鹿というよりアホね♪」

「ビーフジャーキーって……部長……」


何これ!?

何だよこれは!!!あ、ビーフジャーキーはいらないから!そんなもの食わないから!犬じゃないからああ!


『はい♪お手』

「するかあああああああああああああ!!」



  ◆◆◆




……暇だ……。

一難去ったと思ったらこれだもんな。平和なのは良い事だけど……せめて一日一回は何か無いとつまらなくて死んでしまいそうだ。


「じゃあ死ねば良いのに」


変人野郎こと七海はにこにことしながらティーカップを湯を沸かしたポットの近くに置きながら鼻で笑っていた。

こいつ……とことんコケにしやがって…。てか、セミロング馬鹿は何か携帯眺めながら幸せムード全開だし、常識人ポジションですよ君ー。


「はあ。七海、前貰ったケーキって残ってるよな?」

「あー……冷蔵庫に入ってると思いますよ~。多分」

「多分って……そんな嫌らしい笑みされたら疑いたくなるんだけど!?」


ソファーから慌てて立ち上がり急いで部活用冷蔵庫の前へと立つ。

……だ、大丈夫……多分大丈夫……。七海変わった奴だけど優しいのは分かってるし……。

ゴクリと唾を飲み込み、慣れた手つきでドアを開く――。


「…………」


安堵の息が漏れた。生クリームの白いケーキは莓以外はきちんと残っている。

莓が無いのは悔しいが此処は食べられだけでも有り難いんだし目をつぶろうじゃないか。


「は~。てっきりお前のことだから食っちまうかと」

「失礼ですね。其処までしませんよ」

「……じゃあ、その莓のヘタは何だコラ」


目を反らすなこっちを見んか。


セミロング馬鹿はいい加減現実に帰って来い!何時まで同じ画像見てにやけてんだよ。


二人に呆れながらソファーに腰を埋め、苺の無いショートケーキをフォークで裂きながら今週の分をまとめた依頼書をチラリと見た。

数枚というかペラペラで……ホント、最近部活動を出来てないと実感させられてしまう。


ああ、これじゃあ……部活支援金がまた減額してまいそうだ。


「……先輩。依頼人を探してるなら丁度いい人思い出しました」

「え?本当!?」

「さっきまで死んでいた目が嘘みたいですね~」

「い、いいから……それって誰なんだよ!?」

「私のバイト先の先輩です」


レェリィ?うそー。え?七海先輩居たの?


「うん。意外だったな」

「殺しますよ?」


そう言って七海は尖った鉛筆を喉元にちょんちょんと当てながら笑っていた。

すんません……。冗談です!だからその鉛筆引っ込めろ!!?明日から声出なくなったらどうすんだよ!!



「(秀久らしきもの)  」

「全く。仕事が欲しいんじゃないですか?」

「七海ちゃん!部長に何したの!?何か血の海に倒れてるんだけど!?」


血って生暖かいんだな。いや、すんません七海様。ですからその頭の上に乗せてる足をどけて貰って良いですかね~。


「脅迫に見せかけたように呼びました。多分すぐ来ますよ」

「えぇえ!?七海ちゃん!君、貴重な先輩に何してるの!?」

「大丈夫よ。もうこれで二十回目だし」

「ちょぉっーー!?弄り過ぎって…先輩なんだからもっと大切にしてあげてーー!!」


圭太は顔を青ざめながら何か手を合わせて祈っている。いや、あれはごめんなさいのポーズか…。

てか七海は友人にすら変人なのかよ……。


「基本的に先輩を弄、遊ぶ以外には猫被りしませんしねー」

「待てコラ!!お前言い直したつもりだろうが酷くなってるからな!?」


椅子から立ち上がり、悪意に満ちた笑みを堂々と見せながら七海は見下したように俺を見下ろす。

うわ、何かすげぇ腹立たつけど何時ものことだからさして気にはしねーけどな。


俺は顔と服を払ってから赤い瞳を細め七海を軽く睨みつけた。本気じゃなく、いつものような本当に軽くだ。

……これほど…俺を苛めるというか…からかう七海が、俺の部活に申請した理由は実は全く知らない。

聞いても「馬鹿な先輩には無理無理」とか言ってくる始末で……。

まあ、圭太が入った分前よりかなり楽になった?のか?…あれ……何で疑問詞?


「あ、どうでもいい会話している内にどうやら来たみたいですよ」

「おい、どうでもいいって何だ!…俺はなあ…」

「「黙って下さい」」


くそぅ、心が折れそうだよ。

もはや四面楚歌じゃねぇか…誰も味方してくれねぇのか!?圭太も圭太でたまに酷いんだけど!


肩を落とし、やる気が抜けたような目で七海達の視線を追うと……


「(ガタガタ)」


ドア付近に何故だかちょっと大きめなダンボール箱が置いてあり、凄く小刻みに震えていた。

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