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グループ降臨 下

 飛鳥の部屋で全員が集まるのをベッドの上で待っているとプルルルルルと携帯電話から音が鳴った。

一体誰だろう、そう思いながら携帯の画面をスライドし、耳に当てる。

『…………あ、礼? 少しお風呂の準備しておいて。今から引き篭もりを一匹連れて行くから』

 そう言って私がなにか言う前に電話をかけてきた活発な女の子の声の持ち主は通話を切った。どうやらいつも通りらしい。

「仕方がないわね………風呂の用意でもするかしら?」

 少女のような声の持ち主、飛鳥の拒否は許さない、そう言っているような口調から察するにマリアは間違いなく飛鳥の逆鱗に触れた。だから手の出しようがない。

 そんな事を思いながら浴室まで行き風呂に水を張る。さて、飛鳥が戻ってくるまでにお湯は全部張られるのかしら?

『礼ー、飛鳥からの頼みで来てやったぜー!!』

 あ、この声は間違いなくクオね。さっきの飛鳥との会話の内容の事を聞き出さなきゃいけないわね。

 フフフフ、覚悟しておきなさいクオぇ………。

『う、な………なんだこの背筋をビリリと刺激するような嫌な悪寒は――――って、礼だよな間違いなく』

 本当、何て失礼な奴なのだろうかしら? まぁ良いわ、この鬱憤は飛鳥で晴らすとしましょうか。そう心の中で思いながら浴室から出て行く。

「ようやく来たのね、クオ。貴方が一番最初よ」

「ああ、そうかい。それは最悪だぜ、こんな奴と一緒に居るなんてな」

「悪かったわね。それはそうと少し聞きたい事があるんだけど―――」

「残念ながら俺の質問から答えてもらおうか、お前いつ盗聴器なんか仕込んだんだぜ?」

 あら? 盗聴器って思ってたのかしら? だけど残念、正解じゃない。

「言っておくけど私は盗聴器は仕込んでないわよ。それ以外の物なら全員の頭部に、あ」

「おい今聞き捨てならない事言ったよなゴキ女………!!」

「い、一応言っておくけど今のは口が滑っ………じゃないわ、嘘よ。ちょっとしたジョークなのよ。決して貴方達四人の頭部に超小型ナノサイズの発信機を私の魔法を応用して盗聴器として兼用している精密機械を付けているわけじゃないわ!!」

「お前って本当に馬鹿だぜ………自ら自爆するって…………」

「う、うるさいわね!! 良いでしょ別に!!」

「でもまぁこれで分かったぜ、携帯忘れているっていうのに的確に私達を見つける事ができた理由もな。本当、口悪いお嬢様なくせに異常なほど過保護だよな礼って」

「う、うううううっさいわね!! 巨乳の癖に、巨乳の癖にぃいいいいいいいいいいいい!!」

「はっ! まな板のお前が言ったって僻みにしか聞こえないぜ? ほれほれ、お前には無い胸だぜ、お前の意中の飛鳥が揉みしだきたいと言ったんだぜ? 羨ましいだろう!!」

「だ、誰が意中の飛鳥よ!! アンタの方こそ飛鳥のことが好きなんじゃないの!?」

「そ、そんあわけあるか!! 私の好みはもっと筋肉質のある男だ!」

「嘘をつくな! だったらアンタの部屋に置いてあった飛鳥の写真は何なのよ!」

「趣味、実用、保存用の三セットだぜ!」

「良い笑顔をして言う事じゃないような気がするんだけど………」

 そんな感じで口喧嘩しながらも何だかんだで私とクオの顔はどんどん笑顔になっていく。

 この学園では同性の親友なのだからやっぱり嬉しい物だ。たとえ汚く罵りあったとしても数少ない友人だ。友達が居ない自分としてはやはりこういう関係が一番いいと思う。

「まぁ、それは兎も角として………自分が胸を揉まれた事が無いからって巨乳に嫉妬するなよ………本当に悲しいぜ?」

「べ、別に胸くらい私も揉まれた事あるわよ!」

「はい、ダウトだぜ。お前のようなツンデレ症候群がそんな事を許すわけない筈だぜ? ただでさえ素直になれないんだからな、そんなお前が胸を触らせるわけないだろ」

 そう言いきったクオ、確かに私は自分に素直になれないところがある。だけどこれは嘘じゃないぞ!!

「だからあるって言ってるでしょ!! し、小学生の時に一緒にお風呂は言った時に事故で…………」

「…………確かに触っちゃぁいるけどよ、それはノーカンだろうぜ」

 物凄い冷めた目で私を見る。その視線にたじろんでしまい、何も言えなくなってしまう。

 確かにそうかもしれない、私は臆病で素直になれない女だ。今の今まで飛鳥に嫌われなかったのが奇跡と思えるくらい酷いことをしてきた。

「まぁそれでも世間一般のツンデレとは違うんだけどな、お前のは酷く優しく……そして絶対的に信頼している。やっぱり幼馴染様は違うのぜ」

「………幼馴染、かぁ。あとツンデレ言うな」

 向こうは私をそう思ってくれているのだろうか? こんな酷い女の事なんか今すぐにでも忘れてどっかに行ってしまいたいと思っていないだろうか?

「本当にそう思ってくれているのなら……嬉しい言葉ね」

 正確にはもう一人、マリアも幼馴染なんだけど。

「本当にそう思っているからそう言っているんだぜ、お前は………誰よりも豆腐メンタルなくせして異常なほどの無茶をする奴だからな。私達が見ていないと危なっかしいんだよお前」

 そう、だろうか? 結構休んでいるし無茶なんか一回もした記憶が無いんだけど―――

「本当、無自覚な奴ほど性質が悪いんだぜ………今現在進行形で貫徹一週間もしている奴がその台詞を言えるのかおいこら」

「違うわ、貫徹二週間目よ」

 最近寝たのが確か二十一日くらい前だったような気がするからそれであっている筈だ。

 そう思っているとクオの顔色がどんどん青くなっていき、私の肩を掴み揺らしてきた。

「お前はいい加減寝るんだぜ!? てか本当に大丈夫なのかお前!? 仕事中毒者ワーカホリックでもそこまで仕事しねぇってのに馬鹿か本当に!!」

「ああゆらさないでやばいやばいやばい、いままでがまんしていたものがぜんぶはきだしてしまいそ―――うげぇぇええ………!」

「ちょ、やっぱりか! ここで吐くなよ、今トイレに連れて行くからな!! もし二週間以上も寝ていないって飛鳥にばれたら無理やりにでも寝かされるぞ!!」

 それは分かっている。と、言うより何度も注意されている上に何度も物理で寝かされているんだから。最近は栄養ドリンクと私の魔法で誤魔化しているって言うのに今ここでばれたら折角の努力も全て水の泡になる。

 アイツは平気で人の努力を無に帰すような奴なのだから………!

「うぅ………大丈夫、もう落ち着いたわ………多分」

「本当に大丈夫なのか? まぁ、お前が頑張る理由は分かるんだがそこまで頑張る必要あるのか? アイツは基本何でも喜ぶぜ、一緒に食べる料理とかでもお弁当とかでも映画でも何でも………」

「大丈夫だって言ってるじゃない、これは私が一人でやらなきゃいけないことなんだから」

「まぁ、そうだよな。お前が自分一人でがんばりたいって言った事なんだ………私は協力してやるぜ、いつもどおり眠気を吹っ飛ばす薬つくってやっからな」

「いっつもありがとうね、正直きつかったから助かるわ………本当にね」

 やっぱりクオは良い奴だ、口は私以上に悪いくせに変なところで優しい。

 もっとも敵に対しては非常で外道になれる面もあるけどそこはそこで仕方が無いような気もする。できれば目に毒だからやめてほしいのだけれど………それは無理か。

 そう考えていると扉が開き、見覚えのあるイケメンフェイスの持ち主であるオネェ系のおとこ、怪童道が部屋に入ってきた。

「んもぉ~身体壊しちゃったら意味が無いじゃないの~」

「道…………せめてノックしてから入ってきてほしかったんだけれど」

「それに何女子の会話を盗み聞きしてるんだぜ? それでもオネェ系漢女なのだぜ?」

「うふふふ、ごめんなさいね~。偶然耳に入っちゃってね~、本当にゴメンナサイね~」

 いつになく上機嫌な道、それを見てクオは軽く不審に思ったのか、笑っている道に話しかける。

「どうしたんだよ道、何か嬉しい事でもあったのぜ?」

「フフフフフフフフフ~、飛鳥ちゃんがね~………ついにあの服を着てくれたのよ!!」

 クオの質問に道は興奮気味に答えた。なるほど、ついにあの服を着せたと言うのか!

「道、リーダーとして貴方に感謝するわ! クオ、急いでカメラの用意を!!」

「おお!! まかしとけ!! アイツの可愛い姿を見て興奮―――女装姿を写真で売れば高く売れるから体の良い小遣い稼ぎができるぜ!!」

「貴方達二人って本当に欲望に忠実ね~、まぁ写真を撮るのは手伝うけどね~」

 呆れたような視線を向けながらもしっかりと準備をする。なんだ道、貴方も同じ穴の狢じゃない。でも飛鳥のあの姿かぁ……すっごく楽しみだなぁ、あの服もの凄く飛鳥に似合いそうだったからなぁ。私達がどれだけ頼んでも絶対にやってくれなかった事をついにやってくれた道には憧れと尊敬の念を抱くほどだ。

 本当、道はここのメンバーのお姉さん(?)ね。

 そう心の中で思っているとコッチに近づいてくるドタバタとした足音と少女の悲鳴が耳に入った。


『―――――ァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


「ん~? あんらぁ、噂をしたら彼が来たみたいねぇ」

 こっちに近づいてくるにつれて大きくなっていく少女の声、その声の主は間違いなく引き篭もりのマリアだろう。いつも通り飛鳥に強制連行されている、絶対に間違いなく。

 まぁこれは仕方がないだろう。アレなんだから―――

「ドリャァァアアアアアアアアアアアアアア!!」

「ミギャァァアアアアアアアアアアアアアアデス!! ヘルプミィィイイイイイイイイイデスゥゥゥウウウウウウウ!!」

 そんな勇ましい雄叫びを上げて入ってきたロリータファッションの服を着ているアホ毛が目立つ黒髪大和撫子の美少女と言う名前の近衛飛鳥、そして飛鳥にお姫様抱っこされて運ばれてきたウェーブがかかった白髪に眼帯を着けて裸コートと言う偉業をやってのける引き篭もりオタクな美少女こと玖珠マリアが叫んでいた。

「ああもう五月蝿い!! 礼、お風呂の準備できているよね!?」

「うん、そりゃぁ出来ているわよ。何年同じような事見ていると思ってるのよ……」

「うん、ありがと!! ほら行くぞ駄目娘………!!」

「え、ちょっと待ってくださいデス! 礼にクオに道、私をこの性別飛鳥などっちつかずの生き物から私を解放するのデス!」

 そんな感じで上から目線でそう言った。私達の反応は当然、

「黙ってお風呂に入りなさい、女の子なんだからもう少し身だしなみを気にした方が良いわよ。わりとマジで」

「黙って風呂に入ってくるんだぜ、女の子なんだし風呂嫌いくらいはなおすんだぜー」

「黙ってお風呂に入ってきなさいよ~、女の子なんだしね~。あ、服については心配要らないわ。ここに丁度良く男物の制服があるからね~」

 こうなったわけである。まぁ当然といえば当然の結果だ。

 だけど断られないと心の底から思い込んでいたマリアは勝ち誇った表情のまま固まってしまった。一体何をどうしたら風呂に入らなくても良いと思えるのだろうか?

「礼にクオ、ちょっとコイツ洗ってきて………洗濯機使っても構わないから」

「任せて、この馬鹿には少し説教しないといけないから丁度良かったわ」

「そうだぜ、コイツの世話はいっつも飛鳥にばっか迷惑かけてらんねぇぜ」

 本当、コイツを部屋から連れ出せるのは飛鳥しか居ないとは言え一応リーダーをやっている私としては本当にどうにかして飛鳥にリーダーを押し付け―――ゲフンゲフン、まぁ兎に角……私はリーダーを降りたいんだけど他にやってくれる奴がいないから仕方なくやっている身としては私以外の誰かがやってほしいのだけれど。

 でもそんな都合の良い奴が居ないのが現状だ。最有力候補の飛鳥は「リーダーは礼が一番合っているよ」って言っているし、他の連中も似たような感じだし………てかこんな問題児達を制御できてる現状が一番理解できない事だ。

 そりゃぁ私だって普通とは言いがたい性格の持ち主だけど、他の連中もどっこいどっこいのような気がする。飛鳥はテンション上がると暴走するしクオはドエスで捕らえた犯罪者を鞭で打ったり道はイケメンを見つけると身体に傷をつけて誘拐しようとしたり、マリアにいたってはどう見てもアッチ系の同人誌を作ってたりしてるし……何か私ってこの中じゃ比高的まともな部類に見えてしまうよ。

 まぁ教室内でマグロを解体している時点で私も普通じゃないか。

 それよりもこの震えている馬鹿をどうにかして風呂と言う名前の洗濯機にぶち込むとするかな?

「い、いや………誰か助け――――――――――――――ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアデス!!」

「安心して逝ってきなさい~」


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