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美しい少女のお話。

 それは寒い寒い年の暮れのお話です。

 ずいぶんと間の置いた隔世遺伝で覚醒した血は、先祖がえりと呼ぶ方がふさわしいものでした。

 その日その家でオギャーと産声をあげたのは、窓の外でこんこんと振る雪に負けないほどに美しい銀髪を持った人狼の女の子でした。

 つまりはその少女である私からしたら「トンネルを抜ければ私は人狼だった」という感じだったわけです。


 しかし、そんな美しい容姿を持って生まれてしまった私は、その類まれなる美しさゆえに両親から恐れられ、間もなくして一件の館にひっそりと売られました。

 美しいから。


 そこは街の裏通りにありながらも、なかなかに大きなお屋敷で、そこで私はたくさんのお姉さまと、拾ってくださった当時のご主人様――つまり前の私のご主人様であった方にそれはそれは大切に育てていただきました。


 幼い時分から文字を習い、言葉づかいの教育を受け、服は常に愛らしいものを着せていただき、食事も一日三食しっかり頂戴しておりました。


 ただ、どこのどいつ様かの言葉に働かざる者食うべからずという言葉がございます。

 ご主人様は経営者で私の住むお屋敷は飲食店でしたので、私は物心ついた時分からできる限りお店の手伝いをするようになりました。


 昼は屋敷の二階にあるお姉さま方のお部屋のシーツを取り替えます。

 お洗濯と洗いものは手が荒れるからと、しないようにきつく申しつけられておりました。


 夜になると一階のお店でお食事やお酒をお客さんのテーブルに持っていきます。

 お客様は皆さん良い方ばかりで、幼い私を膝の上に乗せてはかわいがってくださりました。


 夜は私は二階へあがることはありませんでした。

 お姉様方が夜だけきれいなドレスを着て、お客様の手を引いて階段をあがるのを、私はいつも憧れの眼差しで見上げていたのです。


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