5 ゲームの流れはかなり強い①
長くなりそうだったので、2話に分けました。
長いとおもったけど、そうでもないのかな?
三橋侑吾君と出会ってから、あっという間に12年が経ちました。
あれからあたしはお母さんに頼んで希望通り英会話教室に通うことになり、小学生になると塾にも通いだした。
ただ、残念なことに侑吾君との共有時間を少なくするという目論見は見事に崩れ去り、幼稚園には手を繋いで仲良く登園することに。
小学校では高学年になれば思春期突入。あちらから勝手に離れてくれるだろうと思っていたが…。
甘かった。
引っ越して4年程すると三橋家に新たな命が誕生し、弟が出来たことを喜んだ侑吾君は毎日のようにあたしを三橋家に招待するのです。たとえそれが10分しか時間が無くても、必ず呼びに来ました。
弟の彰吾君が歩けるようになると、今度は桜川家に連れて来るようになりました。
子供を使うとは……卑怯な!
のせられるあたしもあたしですが、子供の魔(魅)力には敵わず、甲斐甲斐しく面倒をみる自分…。
流されている。これは確実に見えない力に流されている!!
結局のところ努力虚しく、仲の良い幼馴染みになってしまいたました。
しかし問題は違うところにあったのです。
あたしは必要以上に親しくならないようと“礼儀正しいけど引っ込み思案で他人に関わることが苦手な女の子”を演じてきたつもりでした。でも、
これが良くなかった。
侑吾君はあたしを庇護対象者として見るようになってしまったのです。
おいおい。確かに今は同じ年齢だけど、中身はあんたより随分上だぞ!?
なんで「菜子は危なっかしいから、おれが守ってやるよ!」などと言われなければならないんだ?
小さな騎士気取りか!?
ちくしょう!可愛いな!
小さな男の子が女の子を守ると宣言する様は本当に可愛いものでした。
完璧なノックアウト。
あたしのKO負け。
前世ならば思いっきり抱きしめて、頭をぐりぐり撫で回したいくらいです。
そして、そのままの関係で中学生になってしまいたました。
「なっちゃん!」
「どうしたの、彰君?」
桜川家のリビングに三橋家の次男坊が慣れた様子で上がり込み、座っているあたしに抱き付いてきた。
お隣の侑吾君の弟、彰吾君は8歳になり、小学校2年生に成長。
家族ぐるみで仲の良いあたしを姉と慕ってくれる可愛い弟です。
前世でも一人っ子だったので、溺愛してます。
勢い良く抱き付いてきた彰君を受け止め、ここに来た理由を訊くと三橋家にお邪魔しているお母さんが呼んでいると言われた。
呼ぶくらいならわざわざ隣に行かなくても良いのに。
それか帰ってきてからでも良いのに。
そう思いながらもせっかく呼びに来てくれた彰君を一人で帰すわけにはいかず、鍵を閉めて直ぐ隣の三橋家に向かった。
短い距離でも手を繋いで歩く。彰君はあたしのお臍位の身長になっていた。
子供の成長は早いなぁ。