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41 謎の衣装で着せ替え

お久しぶりでございますm(__)m

遅くなりまして申し訳ございませんでした(´д`|||)

授業が終わり、一人で講堂へ向かう。時折昼休みに言われた言葉を思い出しては首を捻り、答えを探して自問自答。でも答えは自分の中に無いので結局分からず仕舞い。

いつもこんな感じで悩んでるなぁ……。と思いながら歩いていると、講堂の入り口で立ち止まっていた誰かにぶつかってしまった。鼻の頭を押さえたまま謝罪すると振り向いたのは、我が白組の代表者であり風紀委員の大道寺先輩だった。

この大道寺先輩、実はゲームでは隠し攻略キャラだったりする。のだけれど……、ぶっちゃけまったくと言って良いほど覚えていない。メイン攻略キャラの生徒会役員の事だってうろ覚えなのに、隠しキャラを記憶しているはずがない。あ~、こんなキャラ居たね。程度の記憶だ。

思い出したのは大道寺先輩が名乗ったあと。顔を見ても思い出さなかったのは申し訳ないと思いながらもスルーした。


「なんだ、姫か」


いつの間にか“姫”で定着してしまったあたしの愛称。何度言っても直そうとしないので諦めた。呼びやすいのならどうぞご自由に。


「こんな所に突っ立ってどうしたんですか?」


そう訊くと、大道寺先輩は親指を立て、後ろにある扉を「クイッ」と示した。聞くよりも見た方が早い、と言うことだろう。あたしは首を傾げながらも、ゆっくり音が出ない様に開け、中を覗いた。

中を確認したのち、再び音を出さない様に慎重に扉を閉める。


「………。あたし生徒会の仕事があるんでした。サヨウナラ……」


少しの間を置き、別れの言葉を告げた。

大道寺先輩は来た道を戻ろうとするあたしの腕を掴んだ。しかし抵抗する気すら失せているので振りほどく気にもなれない。

先輩は同情を含んだ瞳で見下ろし、背中に置いた手で前に押してきた。なにするんだ!?という目で見ると、「諦めろ」と一言……。


「……やっぱり血迷りましたね」

「おもちゃになることは覚悟の上だったんだろ?腹をくくれ」



嫌々腹をくくったあたしは重い扉を慎重に開けた。まだ逃げたい気持ちが大きいので、気付かれるのなら遅い方が良いと言うささやかな抵抗だったりする。

あたしの判断は生活から“平穏”をとことん遠ざけているらしい……。


子猫ドゥービストズュースちゃ~~~ん!!待ってたのよ~~!!」

「……。桜川菜子、先輩の着せ替え人形になりにただいま参上しました……」


新波先輩は講堂に入った瞬間目ざとくあたしを発見した。そして先輩の後ろには同じように目をキラキラさせながら待ち構える本田先輩の姿が在った。どうやら新波先輩は本当にあたしを着せ替え人形にするつもりらしい。この人の勢いに捕まったら逃げることはほぼ不可能だろう。

先輩に抱きしめられたまま、重い足取りで向かった……。





「遅れてすみません」


講堂の舞台袖。今やフッティングルームと化している場所でされるがままになっていると、遅れてやってきた二宮君の声がした。あたしは「逃げてーーーー!!」と叫び、助けたい気持ちと「お前も巻き込まれてしまえ!」という悪魔の囁きが対決した結果、悪魔の勝利となりあえて無言を貫いた。

案の定、新波先輩はあたしを本田先輩に任せると二宮君の捕獲に乗り出し、見事成功。満足気な顔をして帰還した。

もちろん二宮君は抵抗したけど勝てるはずも無く「もう、どうにでもしてくれ」といった感じの表情をしている。

あたしも今そんな顔してるんだろうなぁ。まるで鏡を見ている様だよ。



「……お前、桜川…だよな?」

「それ以外に誰に見えるのさ。そんなに劇的な変化してないと思うよ。あと新波先輩、たしか演目は“親指姫”でしたよね?この衣装、どう見ても“アリス”にしか見えないのですが」

「いや~ん。やっぱり似合うー!!私の部屋にこのまま持て帰って置いておきたい。本田、グッジョブ!」

「でっしょ~?あたしの目に狂いは無かったわ!」


……白目向いて倒れたい。そうしたら逃げられる気がする。

こんな可笑しい考えが浮かんでしまうくらいこの場の空気は異常だ。二宮君は抵抗しているけど、相手は先輩でしかも女性と言うこともあり、ささやかな抵抗となっている。そのままあたしが使っていたフィッテングルーム隣に連れて行かれ、剥かれる事になった。

ぐったりして出て来た格好は誰がどう見てもアリスの三月ウサギで全く親指姫の要素が無い。


「や~ん!本田、写真撮って!」

「おっけーい!まっかせて!!」


そのまま写真撮影会。いつ用意したのかテーブルにティーセットまで並べたものが壇上に置かれていて、あたし達は無言で席に着き、言われるままお茶を飲んだりお菓子を食べたりした。





「……で?これは何の余興なんですか……!?」


30分程の撮影会を終え、可愛らしい衣装とは真逆の空気を出しながら、あたしは撮ったデータを満足気に確認している先輩たちに詰め寄る。

見てよ、二宮君なんてヤサグレ三月ウサギになってるよ。あのいつもお行儀の良い二宮君がだよ!?テーブルに肩肘乗せて頬杖付いてそっぽ向いてるもん。余程疲れたんだね、可哀想に……。


「いやん、怒らないで。中等部の演劇部に行ったらその衣装が有ったから借りて来ちゃった。どうしても二人に着せたかったの」

「大丈夫。君たちの衣装はもう用意してある。が、それはお楽しみだ。リハーサルまで内緒。今日は台本が出来たお祝いに着せ替えして生気を養おうってことになったんだよ」


……そんなくだらないことであたし達は精根尽き果てるまで先輩たちの遊びに付き合わされたのか……。

やるせない。けどこれを想定していたのは自分じゃないか。ここは怒ったら負けだ!


「お楽しみは良いのですが、サイズ調整は良いのですか?リハーサルまで着ないとなると合わなかったとき直しが間に合いませんよね?」

「問題ない。今着せたそれが君たちが着る衣装と同サイズだ。もちろん裾の長さも同じだ」

「そうよ。私たちが着せ替え目的のみでこんな事するはずないじゃない。ちゃんと考えているわ。あ、それとこれが台本ね。台詞は無いけど動きがあるから流れをしっかり覚えて来て」


そう言って渡された台本を見つめ脱力。

じゃあ最初から言ってよ!「サイズ合わせです」ってさ!!

写真撮影は衣装の動きを見る為だって!?それも言え!!





アリスの衣装を脱ぎ、渡された台本を手に二宮君と寮に帰ることにした。二人とも口数が少ない。生徒会室に行こうかと言う話も出たが、精神的疲労が大きく、新波先輩の相手をした後に生徒会の先輩達の相手は無理。という結論に達した。


「ところでお前、試験の結果はどうだったんだ?」

「ん?順位のこと?それなら問題ないよ、8位だった。二宮君はさすがの1位だったね」

「まあな。それを目標に勉学に勤しんでいる。自分の問題点を見つけ、改善するのも勉強だ。……だろ?」


どうやら二宮君は変わって来たようだ。前だったら「当たり前だ」とか言いそうなのに、勉強以外の事にも目をむけだした。うん、良い傾向だよね。この調子で君の憧れの先輩も変わって欲しいものだね。

あたしは変わり始めた事が嬉しくて思わずニッコリ笑って頷いた。

その時、携帯が短く振動しメールの受信を伝える。鞄から取り出すと受信画面を開く。そして固まる。


「どうした?」


急に立ち止まったあたしに二宮君が声を掛ける。さっきまで満面の笑みだったのに、今の表情はどう見えているだろうか。


「やっぱり生徒会室、行っておけばよかったなぁ……。と思っていたところ」

「……先輩たちからか?」

「当たり。見る?」


そう訊くと首を振った。

まあ、前の四ツ谷先輩の件もあるし係わりたくないんだろうなぁ。

メールは3人から来ていた。もちろん生徒会の先輩方だ。内容は試験の結果の確認。

[結果は見たから知っているが、報告しに来ないのは何故だ]と言った感じの同じ文が3人から来ていた。丁度メール画面を開いているとまた新しいメールが届いた。慌てて開くと[二宮共々7時に食堂集合]と書いてある。

二宮君を見ると同じように携帯画面を見つめていた。


「先輩から?」

「……ああ。気が重いな」

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