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17 裏の支配者

ごめんなさい(>_<)

また上手く書けませんでした( ノД`)…


静まり返った室内。聞こえるのは二宮君の辛そうな息遣いだけ。

二宮君との事を話すと十字先生は一つ息を吐き、「なるほどねぇ」と言った。


「あんた、嫉妬されちゃたんだ?」

「やっぱりそうなりますよね」

「それしかないでしょ。ず~~っと憧れていた人が急に変わり始めて、その原因がこんなちんくしゃ……。やり切れないのも無理ないわ。焦ったのねぇ、あの人は変わって行っているのに自分は…?って」

「焦る必要はないと思うんです。二宮君と先輩は違います、同じなんてどうやっても無理だから。理想に近付くために努力をするのは素晴らしい事だと思います。だけどそれで自分を追い詰めるのは……違うと思います」

「ま、普通はそう思うわね。正しい意見だわ。でもそれを許せない人間だって世の中に入るの。『こうしなくちゃ、こうならなくちゃ』自分の理想がぶれた時の恐怖、あんたに分かる?それを認めるのはとても勇気の要る事なのよ。先を歩いていた自分が突然消えちゃうんだから」



覚えがない、……訳ではなかった。

飯島蓮での前世は幼少期、母の言う通りの子供であろうとして育った。中学受験の失敗で全て台無しになった。それからはどうでも良くなり、そして友人を通して疑問を持つようになった。

優秀でいなさいと言われ、迷惑をかけるなと言われ、言う通りに進めと言われ……。

優秀でなければ必要ないのか?

迷惑をかけたら邪魔なのか?

言う通りに進んだ先には一体何があったのか?

高校で更に世界が広がり、ゾッとした。あのまま疑問も持たず、母の言う通りに生きていたらあたしはどうなっていたのかと。

考える力を削がれ、友人との繋がりを断ち、自分の価値観の中での生活……。

思う通りに行かない娘を見捨て、見ようとしなくなった。

金は出すと言われ、大学は一人暮らしをした。あたしも家に居たくなかったし、それで良かったんだと思う。

社会人になってからは一度も家に帰ることはなかった。


あたしが死んだあと、(あの人)は悲しんでくれただろうか……。



「ちょっとぉ。何急に黙ってんのよ、怖いじゃない」

「あ、すみません。……そうですよね、確かに認めるのは勇気が必要です。でもやっぱり認めないと前には進めないと思います」

「それはきっと本人も気付いているんじゃない?だから、あんたがサポートしてやんなさいよ」

「え!?なぜですか!?イヤです、そんな重大な責任持てません」

「ここまで言っておいて『イヤです』は無いわよねぇ。酷い~、この子偽善者よ~、ちんくしゃよ~」

「……最後は必要ないのでは?」

「いやねぇ。ノリよ、ノリ。分かんないかなぁ」


分かりません!いつの間にあたしは『ちんくしゃ』で定着したのでしょうか!?

でも先生のおかげで暗くなっていた気持ちは浮上しました。

生まれ変わっても引きずるなんて、…ダメだなぁ。

もうあたしは桜川菜子で、両親はあの人達とは全然違うんだから、しっかりしなくちゃ!

だけど二宮君の話は全くの別物!

改めて拒否しようとした時、開け放したカーテンから二宮君が起き上がるのが見えた。


「お、起きたわね少年。はいこれ、熱測って。高いようなら病院ね」

「いえ、大丈夫です。寮で寝れば治りますから」

「ほっほ~…。それはあれかね、少年。私に仕事をするな、と?養護教諭の職務を放棄しろ、と?」


そう言いながら十字先生は顔を二宮君に寄せ、耳元で「いいから計れ」と低い声で囁いた。

聞こえてしまったあたしまで固まる。もろ聞いてしまった二宮君はロボットの様にかくかく頷き、素直に熱を計りはじめた。


「あら~。良い子ね」

「……詐欺だわ」

「ん?ちんくしゃ、何か言ったかしら?」

「いえ、何も。気のせいではないでしょうか?」


熱は38℃ジャスト。少し寝たら落ち着いた様で、さっきより顔色は良い。少し高めだが寝てれば治ると言い張ったので、少しでも熱が上がれば連絡する事。と十字先生に約束させられていた。

先生は歩いて帰す訳にはいかないと、職員室に手の空いている先生を呼びに行ってしまった。


「ふぅ、迷惑かけたようで悪かったな」

「別に気にしなくて良いよ、寮に帰ったらゆっくり休みな。先輩たちにはあたしが説明しておいてあげる。だから治ったら改めて自分で話なよ?」

「……分かった。ところで、僕はどうやってここまで来たんだ?記憶がないのだが……」

「ああ、あたしが背負って運んだの。凄いでしょ?」

「背負った?お前が?………アハ、アハハ!!僕より小さいのに?すごっ、凄い!!アハハ!!」


どうやら二宮君は熱が出ると感情豊かになるようですね。お腹を抱えて笑っています。

帰って来た十字先生に何事かと驚かれ、経緯を説明すると呆れていて、「あんたのしたことは正しい事だけど、女性としては……ねぇ」と言われた。

正しい事をしたのならその態度は無いんじゃない!?

納得いかない!!




二宮君が帰るのを見届け、生徒会室に行こうとすると、十字先生に呼び止められた。

「あんた忘れてないわよね」と。


「何の事ですか?」

「とぼけんじゃないわよ。あの少年の事でしょ!友達なら手を差し伸べるくらいの優しさ見せなさいよ」

「あたし友達じゃないですよ。…でも、二宮君が変わりたいと願ったら手助けくらいはします。あたし、優しいので」

「その調子よ、ちんくしゃ。あんたに暗い顔は似合わないわ。頑張りなさい」


夕日を背に受け、淡い光の中で優しく笑う先生に不覚にもときめいてしまった。綺麗な人が笑うと男女関係なく威力が凄い。


「ありがとうございます、先生。あと、美晴よしはるて言ってすみませんでした。先生は美晴みはるが似合いますよ」




問題は解決した。足取り軽く生徒会室の前まで来たのは良いが、一人でここに入るのは初めてだ。

今さらだけど、緊張してきた。

ドアの前で躊躇していると中から開けられ、五嶋先輩が顔を出す。

あたしを見て「お疲れ様」と中に入るよう進められた。

中では一条先輩が出て行った時と変わらない顔で仕事をしていたのに対し、四ツ谷先輩はひーひー言いながら泣きそうな顔で「五嶋の鬼!」と言いながら仕事をしていた。

この人がこんなに追い詰められるなんて……。そろりと横に居る五嶋先輩の様子を窺うと、四ツ谷先輩を見て満足そうに笑っていた。

成程、生徒会の真の支配者は五嶋先輩なのね。納得。



「と、言う事で、二宮君は熱があって情緒不安定だったみたいです。あとは彼の問題なのであたしは手を出していません。勝手に何かするなんてこと出来ませからね、様子見です」

「そっか、ありがとう。悪かったね任せちゃって。でも桜川さんじゃないとあいつ話さないと思ったから、僕達には言えないだろうしね。一年が一人、っていうのがネックなんだよなぁ……。どうにかならないかな、一条?」


みんな一旦仕事を止め、簡素なソファに座って話している。

と言うか何で生徒が使う生徒会室にソファなんて代物があるの!?私立では普通なわけ??

しかも部屋の隅にはコーヒーメーカーと紅茶のティーバッグまで置かれていた。

……理解出来ない。


「A組で使える生徒を二宮に選ばせれば良い、もしくは……」

「ああ、成程。それも良いね」

「俺もそっちの方が良いなぁ」

「何の話をしているのか分かりかねます。という訳で報告も終えたことですし、帰らせていただきます」


不穏な空気を感じ、逃げの態勢になったあたしは被害が及ぶ前にと、腰を上げかけて失敗しました。

「逃がさないよ」と隣に座る四ツ谷先輩が腰に腕を回して来たのです。

きゃー!変態!!肉を触るな、肉を!!あと顔近いからぁ!!

そう思っていると向かいに座っていた五嶋先輩に、持っていたファイルで思い切り頭を叩かれていた。

さすが真の支配者、思い切りがいいですね。


「なんで桜川さんは急に帰ろうとしたの?」

「え?ですから報告は終わりましたし、」

「本当は違うんじゃない?さっきの話、僕達が何を考えたか分かったから帰ろうとしたんじゃない?」

「まさか。あたし馬鹿なので分かりません」

「馬鹿な人が一条の名前を知らなかったり、四ツ谷の事素敵な性格とは言わないよ。君は騙されない目と頭を持っている。僕達が何考えていたか、言ってみて?」


考えるまでも無かった。何故なら先輩全員の視線があたしに刺さっていたから。

二宮くんの為だろうと絶対にイヤ。それだけは勘弁してほしい。

思えばこの世界に転生してきて15年と少し……。フラグ回避の為と頑張って勉学に勤しんだ。それがこんなところで裏目出るなんて……。

ゲームでは菜子あたしのクラスは侑吾君と同じD組。自分達より下の人間の菜子が突っかかってきたり、小さな事でも真剣になったりと言う様子が気になって関係が出来ていく内容だった。

だから学園に入らないで済むように好きな学校を選べる学力を付けた。

それが叶わなかった時、目に付きにくいだろうB組に入る為に勉強をした。

なにの今のあたしはどう!?しっかり縁が出来ちゃってる。

何処で何をどう間違えたのだろう……。


「ん~~~。……やっぱり分かりません。なので一般生徒は失礼します」。知らないと言うことにしてこのまま帰ってしまおう。そう考えて言ったのに、五嶋先輩は一人首を振っている。


「桜川さん、君は口で失敗するタイプだね。正直すぎる。だから四ツ谷の事を避けようとしているのに結局コイツの興味を引く言葉で失敗した。コイツね、自分達に興味の無い人間が好きなんだ。君はその典型だね。自分は頭が良いと思っているかもしれないけれどそれは勘違いだ。君は馬鹿正直すぎる。流すことをしない」

「……それの何がいけないんですか?正直に言っちゃダメなんですか?」


冷静に自分を分析され、喧嘩を売られた気分になった。


「ダメじゃないけど……。まぁ、僕達が何を考えていたかも分からないようじゃ言っても仕方ないね。ごめん、君を過大評価していたみたいだ。帰っていいよ、二宮の事ももう気にしなくて良い」

「……はっ?」


なにこれ…。あたし馬鹿にされた?

喧嘩売ってんの?

何で勝手にこの人は諦めて結論出してんの?

……いい度胸じゃない!


「分かりますよ~。何を考えていたなんて。先輩方分かりやすいからぁ。あたしを生徒会役員に、って思ったんでしょうけど残念でした。A組以外は入れないんですよ~」

「えっ!?桜川さんA組に入れないの?へ~そうなんだ。ダメ(・・)なのかぁ」

「何言ってるんですか?あたしならA組に入るのなんて簡単ですよ?ダメじゃないです、勝ってに決めつけないでください」

「でも今はB組なんでしょ?じゃあA組は無理だ。生徒会に入ってもらおうと思ったけど……、君には高望みしすぎたみたいだね。僕が悪かったよ…」

「良いですよ、来学期はA組に入ってみせます。生徒会の仕事がなんだってんですか!?あたしなら今からでも出来ます!馬鹿にしないでください!」

「じゃ、また手伝ってくれる?」

「いいですよ!予行練習してやろうじゃないですか!!」



言った後、五嶋先輩の笑顔を見て気付いた……。『あ、やっちまった』と。


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