1 そしてあたしは地に落ちる。
初めまして。良くある設定の物語です。
つまらないと思いますが、暇潰しにどうぞ。
人の喧騒が耳に一層響く街中を、あたしは意識を飛ばして歩いていた。
丁度交差点で信号待ちになり、人の波に習うように自分も止まる。瞬間、「キィーー」という甲高いブレーキ音が響き渡った。
目を向ければ数十メートル離れたところで大型ダンプが横転し、巻き込まれた車が勢いよくこちらに向かって来るのが見えた。
運転手がハンドルを切ろうと焦っているのが良く見える。
ーーああ、これが死に直面した時に体験するスローモーション現象というやつか。
あたしも、あたし近くに居る人も、動けずにその一部始終を見ていた。
何もかもがゆっくりだ。
音も、車も、空気さえも。
ドンッ!!
体に衝撃が走り、鈍い音と共に固いコンクリートに叩きつけられた。
意識が朦朧とする。
泣き叫ぶ声。
助けを求める声。
怒りをぶつける声。
でも、あたしが声を出そうとしても、か細い呼吸音だけだった。
ーーコホッ。
咳き込めば喉の奥から湧き出る大量の赤。
薄く開いたゆがんだ視界には一面に広がる赤。
ーーあ、やべ。これ死んだ。
幸いなことに痛みはなかった。
いや、これは痛みすら感じなくなったのだろう。
死へと向かう束の間の時間、せっかくなので今までの時間を振り替える。
ーー……良いこと無かったなぁ。
飯島蓮。社会人生活3年目の25歳。
何が悲しくて“れん”なんて格好いい名前を付けられなければいけなかったのだろうか。
あたし、女ですよ。
せめて“れん”の字を“恋”にしてほしかった。
男っ気のなかったあたしの楽しみは乙女が夢見る乙女ゲーム。
あたしにとって唯一と言っていいストレス発散アイテム。
今日だって帰ったら新しく買ったソフトをやろうと思っていたのに……。
せっかく買ったのに……。
くっそぉ!このまま死んだら出来ないじゃないか!
どこかに居るであろう神様…。
一発殴らせろ!!
じゃないとあたしの気が収まらない!
そしてあたしはブラックアウトした。
上手くいくか分かりませんが、良ければお付き合い下さい(^^)