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11 黒白学園生徒会室

これで生徒会役員名前だけ全員登場です。


放課後の校舎とは言え、生徒が居ないわけではない。部活で残っている者も居れば、おしゃべりに興じる者も居る。目的も無くただただ残って居る生徒だっているはずだ。それはそこかしこから聞こえてくる声や音が教えてくれる。

春になり、日がのびた今では逆光でもない限り良く見える。日中より少し肌寒くなった廊下はコツコツと足音を響かせていた。

隣を歩く四ツ谷先輩を見ると上機嫌で薄く鼻歌まで歌っている。


本当は隣なんて歩きたくないんですよ。そりゃ見目の良い男の隣を歩けるなんて女冥利に尽きるってもんでしょうが、そこに“脅し・強迫”が無かった場合の話です。しかもこれにはかなり高いリスクが伴います。あたしの努力が一瞬で泡になってもおかしくないです。


「四ツ谷先輩、逃げないので前を歩いてくださいませんか」

「イヤだ。俺今かなり楽しいんだ、せっかくの良い気分を壊さないでね。じゃないと何するか分かんないよ?」


サーッと血の気が引きました。彼は本当に実行しそうです。

もう何も話すまいと無言を貫き、ようやく着いた場所は“生徒会室”……。

そのドアは地獄への入り口のごとく固く閉じられていました。

いつの間にか四ツ谷先輩はあたしの背後を取り、逃げられないように見張っていました。そっと振り返って顔色を窺うと生きいきしていて、最初からこれが目的なのだと分かり、この人の想い描いた通りの道筋を辿っている気がして力が抜けました。


「ほら、入って。一般生徒は用が無い限り立ち入り禁止だけど、特別な」

「はぁ、別に入りたくないですけど入りますよ。……なんか追い詰められた兎の気分です」

「確かにそうだね。菜子って小さいし髪はふわふわしてるし、ちょこまか動くしピッタリだな」


いつの間に呼び捨てになったのでしょうか。怖くて突っ込めませんが……。それにあたしは言う程小さくありません。いちおう女子の平均身長はあります、……多分。

ドアを開けて中を見ると生徒が使うにはあまりにも立派な机と椅子が備えられ、右手の奥で会長が机に向かって仕事をしている最中でした。その前の机には眼鏡をかけた男子生徒が居て、あたしを睨むように見ています。

背中を押され、中に入ると背後でドアが閉まる音がしました。静まり返った室内ではことさら大きく聞こえ、不快な音となって響きます。


「四ツ谷先輩、サボっていないで仕事してください。ただでさえ新学期は忙しいのに」

「まあそう怒るなよ二宮。それに五嶋だって来てないじゃないか」

「五嶋先輩は職員室です、先輩と一緒にしないでください。……で、それは何ですか?」


二宮と言う男子生徒は一年の様で、四ツ谷先輩の裏の顔も知っているみたいでした。でなければこんなに砕けた会話をするとは思えません。

しかし二宮少年や、『それ』扱いは酷いんじゃないかい?

確かこの二宮君は熱狂的な会長信者で、生徒会には会長目当てで中等部から席を置いているくらいです。

四ツ谷先輩は「よくぞ聞いてくれました!」

と、得意げにあたしの肩に腕を回しました。

気安く触らないでほしいですね。


「高天にお土産だよ、受け取って」

「土産を用意する時間があったなら仕事して欲しいが……、お前……!」

「お土産になったつもりは微塵もありませんが、……お久しぶりです、会長。四ツ谷先輩、“付き合う”約束は果たしました。今度こそ帰らせていただきます」

「そんなことどうでもいいから仕事してください!」


なにやら全員の会話が噛み合っていな様な気がします。

二宮君は怒りながらも手を動かし、一人仕事をしていました。でもあたしを睨むことは止めていません。なかなか器用ですね。会長はというと……仏頂面でこちらを、というかあたしの肩に置かれた四ツ谷先輩の腕を見ていました。親友を取られたとでも思ったのでしょうか?

会長と四ツ谷先輩は両親が学生時代からの友人で、二人はあたしと侑吾君のように幼馴染の関係です。

差し詰めあたしはそんな二人の間に入り込んだ邪魔者、でしょうかね。


「待て、おまえ久しく見ないと思ったらなぜ海と一緒に居るんだ」

「不可抗力です、会長。四ツ谷先輩に脅されたんです。可哀想なあたし……。と、いう訳で傷心の一般生徒は早く寮に帰りたいんですよ」

「酷いなぁ。優しくお願いしただけじゃない」

「……先輩の“優しい”定義は幅広そうですね」

「いい加減にしてください!!会長もこんな女のことは気にせず仕事を!四ツ谷先輩は早くそれを帰して仕事してください!」


二宮君がキレそうです。ここはとっとと退散した方が良さそうですね。

シナリオ通りなら彼との出会いは廊下であたしが会長と喋っているところに来て、会長が居なくなるとあたしに「低能な女は会長に近付くな」と言って去って行くのです。いくら会長信者でも男の子が女の子に言う言葉ではありません。ですがあたしはうっかりときめいた記憶があります。

「いやっ、なにこの子!可愛い!!」そう思いました。いわゆるツンデレキャラですね。

彼は弟にしたいキャラその2です。からかい倒したい、そして「姉さん(姉貴でも可)なんて好きじゃないからな!」とか言われたい……。そして好きな女の子には「僕だって男なんだ!」とか言って欲しい。

他の攻略対象キャラとはお近づきになりたくありませんが、彼とは親しくなりたいですね。そして何かある毎に逐一観察したいです。

だから君の失礼な台詞は聞かなかったことにしてあげましょう。……悪戯はしますが。


「邪魔なようなので失礼させていただきます」そう言って四ツ谷先輩の横を通り過ぎ、ドアに手をかけたタイミングで二宮君を振り返りました。

彼は急に振り返り、目が合ったあたしに驚いていました。


「二宮君。君は言葉に気を付けないと女の子に逃げられますよ」


一瞬ポカンとした二宮君は、言葉の意味を理解した途端に顔を真っ赤にしました。

……ああ、可愛い。最後に良いものが見れて良かったです。

そのままドアを開け、生徒会室を後にしました。閉めた途端、四ツ谷先輩の笑い声が廊下に響き渡りましたが気にせず教室に鞄を取りに行き、寮に帰りました。




ここ何日かで確信しましたが、どうやらあたしの知っているゲームの内容と違う流れが生まれている様ですね。

確かシュラと名乗った神はここを『ゲームの世界をベースにした現実世界』と言っていました。現実世界ということは“決まった未来はない”と言うことかもしれません。前世で25年生きていたあたしもまさか死ぬなんて思いませんでしたから。それが決まっていたことなら、何て残酷で悲しいシナリオでしょう……。

ならこの世界はシナリオ通りに進むことはないのではないか?

考えている通りならあたしの記憶は使えませんね。

どうなっているのか直接訊きたいですが、神様ってどうやれば会えるのかさっぱりです。

……やっぱり神頼み?


とりあえず、要注意人物は“四ツ谷海”で決まりです。


いつも読んでいただきありがとうございますm(__)m

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