残りの時間は時間は有効に・・・
時の流れというものは、曖昧で不条理である。そしていかなる権力者もこれを塞き止めることはできない。
たとえ……神であっても。
皆さん初めまして、私の名前はベンザ……ファルコン・ベンザ卿。
決して便座ではない……ちょっと失礼。
「悪魔よ、このビデなんたら記録装置はしっかり動いているのか?」
『ビデオカメラの調子はバッチリ、音声も完璧!!』
「おお、すばらしい!! やはり魔界製の機械は高性能だ」
う、うん……すまん。改めて、私はファルコン・ベンザ卿。かつてこの場所にあった王国、セリベルア王国で騎士をしていた者だ。しかし王国は奴らの手によって滅ぼされました。
『5分経過ー』
「なに!? まだ名前しか説明してないぞ!!」
『じゃあ、後で時代背景とかめんどくさい説明は編集で後から入れておきます』
「本当か!? かたじけない……ん」
『さあ、あなたは時間が無いんですよ!! 自分の時間を有効に使ってください』
「分かった……手始めに現在侵略を受けている隣国を助けたいと思う」
『了解、かっこよく撮りますよ』
創生の神アースとそ腹心であった2人の神々はこの世に7つの世界を創り上げた。天界、人間界、魔界、冥界、獣人界、魔法界、霊界の7つである。
アースは言った。
「この7つの世界に生まれるすべての生命に、『幸あれ』そして永久の『安息』と『平和あれ』」
しかしこの願いのうちう2つは早速破られる結果となってしまった。
この世に7つの世界が誕生したのと同時に、神々の間で戦争が起こった。神の右腕、左腕と呼ばれた2人の腹心が神の座を狙って反乱を起こしたのだ。地獄絵図のような激しい戦いの後、神は腹心の一人を討ち取り、もう一人を地獄の奥深く『煉獄』へと永久封印した。しかしアース自身も無事ではなかった。体に完治不能の重症を負ってしまったのだ。
アースは自らの死期が近いことを悟った。
自分が命尽きれば、争いと混乱が起きる。そこでアースは優秀な種を天界と冥界に振り分け、その他の世界の統治を彼ら優良種に任せた。
天界は一番巨大な人間界を管理し、冥界はその他4つの世界を管理した。これでアース亡き後も世界は平穏であると思われた……。
アースがこの世を去ってから1000年の時が流れた。
世界は変わらず平穏----というわけにはいかなかった。その時天界では深刻な問題が発生していたのだ。
資源の枯渇である。
優良種である天界人の技術の進歩は凄まじく、それに伴い大量の資源を消費したのだ。
天界では何度も議会が開かれこの問題の解決方法を模索した。
そして彼らが出した結論は、数千年文明の劣る人間世界への進出だった。人間界には手付かずの資源がいたるところに眠っておりまさに宝の山であった。彼ら天界人はさらに100年の歳月をかけ、人間界に時空を超える巨大な橋を建設した。
『摩天楼』
人間界の人々は時空を超え、突如現れたその2つの塔をそう呼んだ。
人々はその橋を見ると、口々に神が地上に降臨なされると叫び大騒ぎになった。しかし、その塔の間の空間から次々に現れたのは、神ではなく、大量の天界兵器で武装した天界人だった。
それからは一方的だった。
ビーム砲や5mを超える『人型天界兵器』に人間たちは、剣やマスケット銃、大砲で立ち向かったがもちろん敵うはずなく。346あった国もいまや126にまで減ってしまい、4ヶ月もしない間に人間界の4割が天界の植民地となった。
戦いに敗れ捕まった人たちは、奴隷として植民地で働かされ地獄の様な日々を過ごし、血の涙を流した。ファルコン・ベンザ卿もまた戦いに敗れた人の1人だった。ベンザ卿は東一帯を治めるセルべりア王国で最強と呼ばれた騎士だった。
2日前の夜ことである。
セルべりアの町の中に敵接近を知らせる鐘の音が響きベンザ卿は飛び起きた。急いで鎧を身につけ騎士団の配置についた時には敵は町のすぐ外にまで迫っていた。町を囲む城壁からは大砲による砲撃が行われて、虚空に轟音が響いている。ベンザ卿を含めた騎士団たちは門の前に整列し、攻撃の合図を待っていた。
刹那、整列する騎士たちの真ん中に城門から大砲が落ちてきた。鈍い音と共に地面に突き刺さる大砲。奇跡的にも死傷者出なかったが、地面に刺さるそれを見て騎士たち一斉に息を呑む。砲身が半分解けているのだ。
これは天界軍の中性子レーザー砲によるものだ。しかし技術的に大きく差のある人間たちが、それを理解できるはずも無く、人間たちからは鋼鉄を一瞬で溶かす『光の矢』として大いに恐れられていた。
「臆するな!! 我々には勝利の女神がついている!!」
うろたえる騎士たちを見かねた騎士団長が、剣を抜きベンザ卿を指し示した。
女神と言われて、(私は男なのだが……)と兜の中で苦笑するベンザ卿だったが、この程度で士気が上がるならと、無言でランスを天高く突き上げた。それを見た騎士たちは大いに沸き立ち、手に持った武器をベンザ卿に見習い天高く突き出した。騎士たちの士気が最高潮に達した時、ラッパの音同時に城門の上から騎士たちに突撃の合図が送られた。
「突撃ー!!!!」
騎士団長の言葉で門から飛び出し、敵天界兵器に向かって突撃を仕掛ける騎士団。ベンザ卿は先頭に立ち天界兵器に攻撃を仕掛けようとした。
その時――。
ベンザ卿の手前にエネルギー弾が着弾し、ベンザ卿を閃光が包みこむ。激しい耳鳴り、閃光に呑まれる仲間たち。ベンザ卿が覚えていたのはここまでだった。気がつけば日が真上に上っており、その日差しは刃の如く地に突き刺していた。ベンザ卿泥の中から起き上がり、体中の泥と砂を叩き落とすと、町はどうなったかと辺りを見渡した。
しかし町が見当たらない。あるのはただの瓦礫の山だった。ベンザ卿は絶望で言葉を失った。自分が長年暮らした家も、何度も往復した大通りも、国王陛下が住まわれていた巨大な城もなにもかも無くなっていたのだ。ベンザ卿は悔しさで両手のこぶしを地に叩き付け、涙を流す。そんな時だった。途方にくれているベンザ卿に誰かが話しかけのだ。
「力がほしいですか?」
真っ赤な顔に一本角、古びたローブを纏ったそれが悪魔であることを理解するのに数秒の時間を要した。しかし今の彼に話す相手が悪魔だろうが神だろうがどうでもよかった。
「ああ欲しい、私は騎士でありながら誰も守れなかった。忠誠を誓った王も王妃も。仲間も国民も。侵略者から全てを守る力が欲しい……」
「その望み、叶えましょう」
ベンザ卿は耳を疑う。
「なんだって!!」
「その代わり、あなたの命をいただきます。命と引き換えに最強の力をお譲りしよう」
「いいだろう、なんでも持っていけ」
腹を括った声で、ベンザ卿はそう言った。もう彼に残されたもの命以外何もなかったからだ。それを聞いた悪魔は笑顔になり、電卓を取り出しなにやら計算を始め、そして計算を終えた悪魔はさらに笑顔になった。
「それでは、ベンザ卿が今後生きるはずだった。残りの寿命58年と、5ヶ月と14日、3時間45分13秒と引き換えに、1時間、あなたに最強の力を与えましょう」
「1時間だけか!!」
ベンザ卿は驚きで思わず大声をだした。
「嫌ならいいのだぞ」
足元をみているのだろう。悪魔はいやらしい笑みを浮かべている。
「わかった。別の悪魔を探す」
そう言った瞬間悪魔の態度が豹変した。
「なっ!! わかりました、2分おまけしましょう」
額に薄っすら冷や汗をかいた悪魔は、妥協案を示した。しかしベンザ卿はこれを突っぱねる。
「2分だと、笑わせてくれる。30分だ」
「そんな馬鹿なっ!! 貴方は命と引き換えに受け取る『力』の大きさを理解していない!! 10秒あれば1国を滅ぼすほどの力ですよ!? それを30分もおまけしろだなんて無茶苦茶だ。最大限に譲歩しても2分がいいところです」
悪魔は仰天した様子で説明を付け加えたが、ベンザ卿は悪魔の提示した時間にまったく満足しておらず、有無を言わさぬ雰囲気で首を横に振った。
「では10分だ」
「3分!! 3分でどうですベンザ卿?」
「10分だ」
「ええい!! 赤字覚悟の5分でどうです? これ以上は無理です。絶対に無理です!!」
冷や汗で衣装を濡らした悪魔が計算機をベンザ卿に向けなおす。しかしそれでもベンザ卿は首を縦に振らなかった。
「もう一押し」
「5分11秒!! 5分11秒でどうでしょう?」
全身が汗でずぶ濡れになった悪魔を見てベンザ卿は薄い笑みを浮かべた。
「わかった。お前と契約しよう」
こうしてファルコンベンザ卿は1時間5分11秒最強の力を手に入れたのだった。
どうも
ファンタジー初挑戦です
意見、感想(特に悪いところ)
心からおまちしています。
まだまだ未熟者ですが、がんばりますのでどうか応援してください!!
7/2文章ををそこそこ変更