「 」
夢の話。
空白は、まだ埋められませんでした。
「―――だって!」
女は顔をぐしゃぐしゃにして叫んだ。
「お前たちに、辛い思いなんてさせられない!」
「なんでだよ……」
力なく項垂れて呻いた僕の声に、女は怒鳴り返す。
「だって可愛いんだ!」
僕は、絶句する。
女の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、それでも壮絶に美しい顔を歪めて指先で自らの顔に傷をつけるように爪を立てながら喚く。
「どうして、私が可愛いお前たちに傷をつけなければいけないんだ! こんな可愛いお前たちが苦労するなんて、そんな馬鹿げたことがあってたまるか! 幸せに幸せに、そう願って生み出したのになんでそんな現実を認めなければならないんだ!」
その場に膝をつき、美しい顔に血がにじむ。
「幸せに、ただ笑って過ごしてほしかっただけなのにっ。そんな、悲しい顔をさせて絶望させてそんな感情を味わってほしくなんてないに決まっているだろう! どんなに頑張ってもお前たちの魂はすぐに燃え尽きてしまうのにましてやっ、そんな短い一生で涙だなんて一滴も流してほしくなんてない! 幸せに幸せにと願って、そうあってほしいだけなんだ!」
どんな偶然なんだろう、僕たちは跪き、顔を合わせる。
「私はお前たちをずっと見ている、生まれた瞬間からどのお前たちも見てきた。可愛いお前を、お前たちを見てきた。顔をぐしゃぐしゃにして泣きながらあんな小さな命で生まれてきて一生懸命生きていく。この世界はお前たちに優しくないだろう。それでも頑張ってふんばって、生きていくお前たちに、誰が、傷ついてほしいなんて思えるんだ」
女の指がぶるぶると震えながら、僕に近づく。
「こんな、こんな馬鹿げた話があるか。どうしてお前たちが目いっぱい生きられる世界じゃないんだ。お前たちが傷つくのなんて見たくない、悲しむのなんて見たくない。辛い思いなんてしてほしくない。それだけなんだ」
ああ。
呻いた声は、僕と彼女。重なって、僕たちは掌に顔を埋めた。
「こんな だからお前たちが苦しいのか、お前たちを傷つけるのは私か」
女の低い低い声を聴く。女は、泣いているのか。
僕は掌に落ちる涙を感じながら、ぼんやりと考えた。
―――女はまぎれもなく だった。
ああ、僕たちが を、女を、どうしようもなく愛して、焦がれて、慕って、許してしまうその理由が、分かってしまった。
夢で見たものをそのまま吐き出したものです。
空白に埋める言葉が自分の中では三、四候補があります。どれなのかわからないためそのまま投稿という暴挙をしてしまいました。
お粗末ですすみません。