第3章 その6 エルフの里・1
十日かけた追加の調査で見つけられたゴブリンの拠点は都合四ヶ所だった。
武器や生活道具まで完全破壊されたものが二ヶ所。時間が経ち過ぎて状況が読み取れなかった場所が一ヶ所。そしてもう一ヶ所は明らかに討伐に手心が加えられた形跡を読み取ることが出来た。
「五ヶ所の内、二ヶ所も作為的な手抜きが有るとなると、これはもう偶然では済ませられないな・・・」
エルフの青年、リッテルの先導でエルフの里に向かうにあたりこの場にいる全員の意識統一の為の話し合いの場を設けた。
「ゴブリンの繁殖力は高いですからね。略奪の為の拠点は徹底的に潰して、本拠地を叩かない事には事態は収束する訳がありません」
バランが大前提となるゴブリンの討伐条件について話した。
「エルフ族だけでは手が回らなくなったので、討伐に冒険者ギルドの手を借りた訳だが、その冒険者の中に不届き者がいるのだな」
不満を囲っているリッテルが怒気を孕んだ声で吐き捨てた。
「居ることは確定だが、それが誰なのかハッキリさせない内は里長達を含めたごく内々でしか情報は伝えられないからな」
暴発されたは困るので、レオンはしっかりとエルフの青年に釘を刺す。
「俺達は、モルドールの冒険者ギルドから追加で派遣されてきた人員という体でエルフの里に入る。他の冒険者にこちらの意図を知られていい段階では無いからな」
レオンとしては、その点を徹底せずにはいられない。
「名目上は『負傷した冒険者を現地で治療できるパーティーを送った』ということにしておくか。これなら、直接戦闘能力が低い四人組パーティーでも不自然さは無いはずだ」
「たしかに、バランの治癒魔法ならその言い訳が役に立つか」
ファーレンも納得という面持ちで一つ頷いてみせた。
「でもバランは『魔道師』だから、他の冒険者パーティーから見れば過剰戦力とも受け取られかねないわよ」
マリーはレオンの策の欠点を指摘してみせた。
「それについても考えてある。バランは『魔道師』どころか『魔術師』とも思えない体格をしているからな。『武装僧侶』だと言えばみな納得するだろうし、『祈祷による治癒』と『魔術による治療』の差を見破れる人材が派遣された冒険者パーティーの中に居るとは思えないのだが?」
レオンは視線でエルフの青年に確認を促す。
「エルフ族の者ならその手の嘘は一発で見破るが、派遣されてきた連中の中には『魔術師』も『僧侶』も居ないからな。あんたの体格なら、余所者共は一も二も無く騙されるだろ」
面白くもなさそうにバランの体躯を見やってリッテルはマリーの懸念を払拭してみせた。
「エルフ族はドワーフを嫌っているはずだが、そっちの言い訳はどうする?」
エルフを嫌っているドワーフが当然のように問題点を指摘した。
「そこは『緊急避難的処置』というヤツだな。回復魔法を使えるパーティーを見つけたら、たまたまドワーフもメンバーだった。急いで増援を送る必要があったので、背に腹は変えられない。冒険者ギルドの苦渋の選択だったって事だな」
これは今回の依頼を受けた際の懸案事項だったので、パーティー内では既に話してあったのだが、エルフの青年に聞かせるためにあえてファーレンが話を振ってくれたのだ。
「とりあえず、ここまで知り得た情報をまとめた手紙をしたためる。リッテルには、それを預かってくれ。里の近くまでは、他の冒険者を避けて移動しよう。里から一日程度の所まで近づいたら二手に分かれて、リッテルには先行して里に戻ってもらおう」
レオンは行動方針をまとめると、急ぎ手紙を書き始めた。




