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『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
第3章

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第3章  その4 ユーゴの森・4

 リッテルと名乗ったエルフの青年は『監視』という名目でレオン達に協力してくれることになった。

 本人曰く『余所者に、勝手にテリトリーを荒らされたくない』との事だが、レオンにとっては折り込み済の事態なのでありがたく同行をお願いしたのだ。


 「ちょっと。さっきからレオンは落ち気払っているけど、一体どうゆうことなのよ」


 先頭を行くレオンとファーレンの後ろ、最後尾から道筋の指示を飛ばすリッテルに挟まれたポジションにいるマリーは小声で隣りにいるバランにささやき声で尋ねた。


 「あー、怒らないで聞いてくださいよ」


 観念したようにバランはささやき返した。


 「私は昨日から、ファーレン殿は今朝辺りから何者かが私達を監視している事に気が付いていました」

 「えっ!?」


 案の定、マリーは驚いて背後のエルフに視線を向けた。

 しかめっ面のリッテルが、険のある視線を飛ばしてくる。


 「レオン殿がハッキリとそれに気が付いたのは、先程の小休止を言い出した時ですかね。彼は、エルフ族が向こうから接触してくるのを待ち構えていましたから」


 まるで『気付かないとは、冒険者失格ですね』とでも言いたげな口ぶりのバランである。


 「それって・・・」

 「平和的に話がしたかったのです。だからワザと目立つように行動して、相手が動きやすいように隙も見せました」


 要するに、『ユーゴの森』に着いてから一連の行動は正に今の状況を作る為の下準備でしかなかったのだ。


 「後ろ二人、さっきから騒がしいぞー」


 先を行くレオンから、気の抜けた口調でのお叱りが飛んだ。


 「随分と余裕がある態度・・・」


 マリーは頭を振った。


 「余裕があるのではないですよ。状況を読んで最善策を打つ。それが出来るのがレオン殿の強みでしょう」


 バランはマリーの思い違いをやんわりと訂正してみせた。


 「エルフ族と言うのは眼も耳も鋭敏ですが、魔力を感知する能力も他の種族よりも数段優れていると聞きます。さっき、彼が行動を起こす切っ掛けになったのも、お湯を用意する為に魔法を行使したからです。その際、彼の存在に気が付いていない貴女にはファーレン殿を付け、レオン殿は地面に胡座をかいて(わざ)と無防備な姿を曝して見せました。そうすることで、相手が矢を射掛けて来ても脅しでしか使ってこれなくなると見切っていたのでしょう。でも、その読みが外れた場合一番危険だったのはレオン殿自身だったのですよ」


 そこまで聞いたマリーはなんとも言えない視線をレオンに向けた。


 「行動で責任をここまで取れる人物は、そうそういないと私は思いますよ」


 バランはそう言って話をまとめた。



 「もうすぐ、ゴブリン共が討たれた場所に着くぞ」


 半刻(一時間)程の移動が続いた頃、後方から進路の指示を出していったリッテルが目的地が近い事を教えてきた。


 「何日前の討伐か、知っているか」


 一度立ち止まったレオンが、振り向いて確認を取る。


 「十日前のはずだ」

 「それじゃあ、望み薄かな」


 肩を竦めたが、レオンは再び歩き始めた。それまでとは違い、地面の様子により注意を払い始めた。


 「こいつは冒険者の痕跡だな」


 目ざとく見つけ出したのはファーレンだった。下草の一部が擦り潰されて土に汚れていて、何者かが歩いた跡が残っていた。


 「人数は多分三人。右から左に移動して半包囲する動きだろう」

 「森の中心側から移動してきたのなら、辻褄は合うな」


 自分の眼で確認したレオンは、移動した痕跡を越えてさらに奥へと進む。程なく嫌な死臭が微かに感じられるようになった。


 「ここからは慎重に進むぞ」


 レオンは片手を上げて宣言した。

 地味だが、本来の目的である調査が本格的に始まろうとしていた。

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