承前。 その3 そして、その決意
「お前ら、仲が悪いんじゃねのか?」
そう切り出されたレオンは苦笑するしかなかった。
「やっぱりそう見えますかね」
「見える見える。丸わかりだっつうの」
ザックは酒が不味くなると言わんばかりの声色と表情で吐き捨てた。
「志の、方向性が違うんですよ。だから馬が合わない」
大の大人であるザックに対し、レオンは正直に告白する。駆け引きは商売人の武器だが、時に誠実さは最強の武器になることを知っているからだ。
「彼は『英雄』になりたいんです」
「そいつは耳にタコが出来るほど聞かされたぞ」
それが一体何になる。声色のトーンを落とし事実を告げた。
「夢を見ること、夢を追うこと、夢を叶えること。それが同じ意味じゃないことを、僕は知っています」
すっかり冷めてしまった茹でた腸詰めをツマミに、温いエールで口を潤す。
「で、もし今ここで僕が彼のことを放り出したら、きっと彼は早死してしまうでしょう」
「言い難いことをハッキリ口にするガキだなぁ、お前は」
ザックの目から見ても、レオンの生き方はあまりにも危ういと映ると口外に認めた。
「その上で、今より優れた武器を手に入れたら、舞い上がって突っ走ってしまうかも知れませんね」
「よくわかっているじゃないか・・・。って、それが狙いか!」
テーブルを平手で打付けた音に酒場の喧騒は一瞬静まり返ったが、それ以上の騒ぎにならないと悟ると、各々の世界に帰っていく。
「僕にとっても賭けですよ。もうこれ以上彼を支えられない僕の代わりを、ファーレンさんかザックさんが努めてくれるなら万々歳なのですがね」
「ガキの癖に恐ろしい事を考えやがるな・・・」
文字通り、ザックは頭を抱えた。
「ファーレンの野郎は、ああ見えて仕事一筋だ。自分の打った業物が役に立つなら、使い手がその先で死んでもそいつが本望と思うなら構いやしないだろう」
「奇遇ですね。僕の見立てと全く同じです」
レオンは涼しい顔で怖いことを口にする。
「今回の依頼を受けるに際して、ザックさんの人物については未知数でしたが、今では優れた探索者と尊敬しています。えぇ、もちろん本心で」
実際問題、素材採取の為に危険な山奥の川辺まで往復する際に、中級以上の魔物に出食わさないで済んだのは、目と耳が優れている彼の力量に大きく依存していた。
「そしてその探索者としての優れた目と耳があれば、リーンに釣り合う仲間が見つかるまでの二、三年はよけいな危険を彼から遠ざけてくれるのではと考えています」
まっすぐに外さない視線を受けて、軽薄を装うこの男は思わず身悶えする。
「オレにどーしろって言うんだー」
棒読みのセリフは、既に白旗を上げているに等しい。
「リーンとのパーティーを解消する。その話は僕から切り出しケリを付けます。ザックさんは、新しい武器を受け取ったリーンを連れて早急にここから立ち去ってください」
一度話を区切り、決定的な言葉を口にする。
「ファーレンさんに対する説明は、僕が全責任を負います」
と。




