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『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
第1章

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第1章 その6 風雲、魔王城・2

 「何やら城内が騒がしいな」


 城内の一角、おのれの執務室で書類の決済をしていた魔王は慌てた様子もなく不意に面会を求めてきた将軍・セリムを室内に迎えた。


 「ご報告がございます」


 有翼竜種のセリムはそのくたびれた翼を小さく震わせ、深く頭を垂れたまま説明を始めた。


 「勇者パーティーを名乗る一行が城内に侵入。こちらに抵抗すること無く魔王様への謁見を求めております」

 「それしきの事で、我が配下の兵が浮き足立つとは嘆かわしい」


 一瞥をセリムに向けた後、仕事の手を止めること無く続きを促した。


 「気になる点が今のところ二つ御座います」


 セリムは一段と頭を下げて報告を続けた。


 「一目は、その一行の侵入経路でございます。城内の転送門にその者たちは忽然と現れたとの由」

 「ほう?」


 魔王の面にはじめて軽い驚きが浮かんだ。


 「転送門の管理はそなたの管轄であったな」

 「面目次第もございません」


 恐縮の余り、セリムの頭は更に一段深く下がった。


 「よい。責めはせぬ。そのような事は千数百年を数えるこの城の歴史で皆無という訳ではあるまい?」


 所詮その程度のことと、魔王は口外に切って捨てた。


 「恐れ入ります。そして、今ひとつの気になる点は勇者一行の内の一人が自身を『魔導師・バラン』を自称している事であります」

 「聞き覚えのある名前だ。確か数年前にこの城から姿を消したお前の配下がその様な名前であったか」

 「未だに本人確認は取れておりませんが、あるいはかと」


 仕事の手を止めた魔王はしばし思索に時を費やした。


 「して、お前はどの様な指示を出しておる」


 魔王は、この有能な配下の将軍が無策のまま報告を上げてきたとは考えてはいなかった。


 「警備隊の大隊長を直接派遣し、勇者一行をひとまとめにして一室に軟禁させおります。魔王様の御裁可の後、文官を派遣して事情聴取を行いたく。その結果を改めて奏上した上で今後の方針を決めるべきかと」

 「良き判断だ。その様に取り計らえ」

 「仰せのままに」

 「それと追加の指示だ」


 踵を返しかけたセリムを一旦とどめ置いた。


 「一番小さい部屋で良い、謁見の間の支度を進めよ。それともう一つ」


 魔王は書類の決済を再開しながらこう付け加えた。


 「主だった将軍を参集させよ。今代の魔王はつまらぬ部下しか従えておらぬと思われたくはない。例えそれが招かざる客人相手だとしてもだ」


 強大な自負が、その歪んだ口元に浮かんでいた。



 しばしの間睨み合いを続けていた勇者パーティー一行と警備兵との緊張は、少しばかり上等な革鎧を身に纏った豹頭の武人の登場で幾分落ち着きを取り戻した。


 「軍師殿のご指示を伝える。お前達勇者一行とやらは場所を移して一室を与えられる。また、武装解除は行わず、お前たちの誰かを人質として引き離す予定もない」


 恐らくは大隊長クラスの人物は、朗々と響く声でそう宣言した。


 「これは、魔王軍の名誉有る行動である。この指示を破る者があれば、その地位の如何に関わらす極刑に処されるものと心得よっ!」


 不満を上げそうな部下たちを、先制して一喝で行してみせた。


 「勇者一行たちも、こちらの指示に従い秩序を持って行動せよ。さもなくば、魔王様の裁可によって厳罰が加えられるものと覚悟せよっ!」


 「御高配、感謝いたします。指示に従い、軽々しい行いは厳に慎むことをお約束します」


 交渉役に立ったバランがうやうやしく頭を下げた。

 ひとまずは、破局は回避されたようである。

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