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『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
第1章

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第1章 その5 風雲、魔王城・1

 混乱と緊張な中、一番最初に己を取り戻したのは以外のもバランであった。


 「私の名はバランッ!勇者パーティーの魔導師であるっ!!」


 「ゆ、勇者だと!?」


 転移門に集まった魔王城の警備兵に動揺が走る。


 「我々に、戦う意志はありませんっ!我々は此処に辿り着いた者の正当な権利として、魔王様への謁見を要求しますっ!!」

 「何を世迷い言をっ!!」


 この場を任されている小隊長らしいコボルトがショートソートを振り上げたまま叫んだ。


 「謁見を求めてきた者を、問答無用で切り捨てるだけの権限が貴殿にはお在りか?それとも、無抵抗な者を手に掛けて魔王様の権威に疵を付ける覚悟がお在りだとも!?」


 ここまで言われては、流石に部下の手前手出しが出来なくなった。唸り声を一つ上げると、顎をしゃくって部下を使いに走らせた。


 「こういう次第です。私も驚きましたが、皆さんここは一つ私の指示に従って下さい」


 声をひそめ、バランはパーティーの仲間に懇願する。


 「最善ではなくとも、次善の選択肢だろう。俺に異存はない」


 腰に剥いだ剣の柄を握っていた右手を、強力な意思で無理やり引き剥がしながらレオンはようやく言葉を発した。


 「いいだろう。華々しい戦死はわしの趣味じゃないしな」


 振りかぶった戦鎚を、警備兵を刺激しないようゆっくりと降ろしながらファーレンも同意する。


 「この狭さでは私の弓も役立ちません。残念ですが、次の機会を待ちましょう」


 リッテルも、悔しさを滲ませながら戦いを放棄する。


 「一人でもこいつら全員は叩きのめせるが、あと一人二人増えたら流石のオレでも骨が折れるからな」


 相変わらずの脳筋発言だが、ナーガも槍の石突で石畳を叩いて悔しがる。


 「えーと。みんな、本当に、ごめんなさい」


 何時になくしおらしいマリーが消え入りそうな声で謝り続けた。



 勇者パーティー一行の城内への侵入という非常事態の情報は、小隊長から中隊長へ通報されるとたちまちの内に城内に拡散した。

 魔王城内部は少なからず誤情報による混乱が発生したが、最低限の事実は正規のルートで魔王軍の軍政を統括する将軍・セリムの元まで届いた。


 「その勇者一行というのが魔王様への謁見を望むのなら、現時点で無体な真似は一切するな」


 情報を伝えてきた直属の官僚に対してそう厳命した。


 「反抗の意思が無いのであれば、武器を取り上げる事も、ばらばらに監禁する必要もない。全員が入る部屋へ通し、中と外に見張りを立ててしばし監視を続けよ」

 「は?ははっ!」

 「私はこの事を魔王様へお伝えしてご指示を仰ぐ。お前は私の指示を警備兵の大隊長に伝え、直々に現場に向かわせて浮きだった兵たちを掌握させよ。決して軽挙妄動をするなとな」

 「はっ!」


 官僚は深く頭を下げると指示を伝えるために走り出した。


 魔王城の混乱は、始まったばかりであった。

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