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『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
第1章

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第1章 その4 魔族の村・4

 そろそろ一度中に入って様子を確認するべきか。そんな事を考え始めた頃になってようやくバランが祠の外まで戻ってきた。


 「おまたせしてすいませんでしたね」


 満足そうな表情でバランは報告を始めた。


 「結果からお伝えすると、この出入り口は『生きて』います。奥の小部屋でも随分と独り言を言っていたはずですが、表まで聞こえて来ませんでしたか」

 「そんな事は無かったぞ」


 ファーレンの返答に、バランは頷いてみせた。


 「どうやら隠し扉を境にして、遮音の魔法が常時発動しているようです。それらしき魔道具も見つかりました」

 「手のこんだ仕掛けね」


 マリーも頷き返してみせる。


 「それから肝心のことを一つ。奥の小部屋には先につながる通路は有りません。小部屋自体に、転移門の様な機能が付与されています」

 「大した仕組みだわ」

 「うっかり作動させる訳にもいきませんでしたが、『こちらからは転送される行き先を選べるようにはなっていません』でした」

 「何か、引っかかる言い方だな」


 レオンがバランの発言に反応する。


 「ちゃんと説明しますのでご安心を」


 心得ているとばかりにバランは頷き返した。


 「『転送陣』や『転送門』の類というものは通常二つ一組の一対で機能を発揮します。一つの場所から複数の場所に飛ぶ場合、飛びたい場所の数だけ『魔法陣』や『転送門』を用意する必要があります。それが魔法の常識というものです」

 「つまり何か。此処に有るのはその常識から外れた仕組みをしているということなのか?」


 ファーレンが疑問を呈した。


 「これはおそらくなのですが、ここから飛ぶ先にある場所へは、此処以外に複数の転移門が同時に存在しているようです。そしてその複数の転移門はたった一つの場所にしか移動できない仕様なのでしょう。その逆に、ここから飛ぶ先の転移門は任意の転移門を選択して移動が可能なようです」


 素晴らしい、信じられないとバランは感嘆の声を繰り返している。


 「そんな魔法、聞いたことがないぞ・・・」


 おそらくは、バラン以外で最も魔法を知るであろうリッテルが茫然自失で呟いた。


 「あぁー、難しい話は判らんが、ここの祠は出入り口として間違いなく使える。そういうことでいいんだな?」


 脳筋のナーガが面倒くさそうに確認を取る。


 「入口としては使えますが、恐らくは出口としては使えないでしょう。少なくとも私たちではね」


 バランは肩をすくめて半分だけ否定してみせた。


 「ここから飛んだ先は、任意の転送門を選択して移動が可能のようだと私は言いましたよね」


 皆が理解できるよう、努めて丁寧に説明を重ねてくる。


 「飛んだ先で、逆方向に此処を狙って戻って来るための方法が現時点ではわかりません。時間を掛けて転移門を調べたとしても私の能力では解析できる自信がありません。ついでに言えば、向こうで無理やり転移門を作動させた場合、全く動かないのか此処では無い場所へ飛ばされるのかすら、全くもって未知数です」

 「要するに、一方通行ではあるけれど、私が行きたい目的地への近道としては使えるということでいいのよね」

 「お薦めは出来かねますがね」


 それが最終的な判断だと言わんばかりに、バランは表情を消して口をつぐんだ。


 「わたしは、まずもって目的地にたどり着きたいのであって、着いた後にもう一度此処に戻ってくる必要はないの。戻るというのなら、徒歩でも何でもまた『嘆きの谷』を突破すればいいと思っているわ。もちろん、そうはならないとは信じているけれど」


 「後はレオンの判断だな」


 ファーレンは決断を促した。


 「行くのであれば、転移門は魔力を注いで起動させるだけで機能を発揮するでしょう」


 バランも、転移門の作動をそれなりに保証した。


 「いまさら行かないとは言えないか」


 流されている自覚はあるが、レオンは行くと決めた。


 「では、荷物を持って祠の中へ。途中は狭いですが、全員小部屋には入れますので」


 バランが先導して、パーティーを祠の奥へ導いた。小部屋の中は暗いが、バランが魔法の灯りを予め付与していたのか足元に困ることはない。


 「この小部屋の広さ自体が、一度に移動できる人数を制限する仕掛けだな」


 言わずもながことを、ボソリとファーレンが零す。


 「転送された先で、慌てた行動を取らない様にしてね」


 なぜかマリーがそんな注意を皆にかけた。


 「では参りますよ」


 バランの掛け声の後に、一瞬の浮遊感が全員を包んだ。



 浮遊感が収まった後は、先程の小部屋より二回り程広い篝火が焚かれた場所に全員が転送されていた。

 そして一つだけある出入り口の向こうから、何やら慌てたような気配が近づいてくる。



 「お前ら何者だっ!」

 「何処から来やがったった!」


 革鎧を身に纏ったコボルトが、手に手に武器を持って部屋に押し寄せて来た。


 「みんな、動かないでっ!!」


 反射的に武器を抜きそうになった皆をマリーが押し留めた。


 「みんなごめん。此処はもう魔王城の中なのよ。だから下手に抵抗しないでくれるかな?」

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