表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
プローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/44

プロローグ その3 谷を越えて荒野へ到り

 『嘆きの谷』は十日で越えた。レオンの予想ではもう二、三日はかかると見ていたがそれよりも早く突破できたのだ。


 「『案ずるよりも生むが安し』言いますが、思ったよりも楽に谷を越えられました」


 谷を越えて荒野に入った二日目。野営地に選んだ先で魔法探知を使って索敵してきたバランが報告がてらにそう話しかけてきた。

 本人曰く、強い魔力を放つ存在がいないかを受動的に確認した上で、生命探知の魔法で脅威が無いかを確認するそうだ。

 前者で魔法生物や魔法の使い手の有無を確認し、後者で魔物や野生動物する。いきなり魔法を使うと逆に魔力を辿られるからだと、そう以前に教えられた事が有る。


 「谷の中では斥候の痕跡は見つけられませんでしたし、なんだか逆に薄気味悪いですね」


 リッテルも、拾ってきた薪代わりの灌木の枝の類を石で組んだ簡易的な炉の回りに積み上げた。

 リッテルの言う「痕跡」とは単なる足跡ではない。剥がれた苔や、踏み固められた地面に排泄の跡など、およそ生物が通った形跡が見当たらなかった事を指す。

 自分たちの通り抜けたルートがたまたま魔王軍の斥候部隊が使う巡回ルートを外れていたのか、それとも偵察そのものが行われていないのか、判断するには材料が少なすぎた。


 「弓矢の矢は、どんなに気をつけていても飛んで来るときは飛んでくるもんだ。そんときになってから、身を躱すなり、盾で防いだりするしか方法は有るまいよ」


 炉を組むのも火起こしするのもお手の物なファーレンが、混ぜっ返すように煮炊きの準備を始めた。


 「おい。魔法で煙が立つのを消してくれ」


 ファーレンの注文に、バランが軽く手を翻して魔法を行使する。

 レオンは知らないが、簡単の魔法だとはいえ無詠唱でそれをやってのけるバランの技量は恐ろしいほどに高い。

 バランの説明によれば、無風状態だと煙というものは回りの空気と混ざらずにどこまでも真っ直ぐ昇って行く。なので、炉なり焚き火の真上で空気が混ざり合う層を作ってやれば、煙は遠目ではそれと分からない程度まで薄まってくれるそうだ。


 「兎にも角にも気を抜かない。まぁ、四六時中気を張っている訳にも行かないがな」


 昼の間に弓矢で仕留めた野ウサギが四匹。レオンが一匹仕留める間にリッテルは三匹射抜いたが、弓自慢のエルフはそんな事を鼻にかけたりはしない。血抜きと内臓抜きは済ませてあるので、皮を剥いで炙り焼きの準備をするのが今日のレオンの仕事だ。

 若干二名、この手の下処理が壊滅的に出来ないメンバーがいるが、ここでは触れないことにする。


 最初の夜番をしてもらうマリーとナーガには、早々に仮眠を取ってもらっているので、四人の会話は耳に届いていないだろ。


 レオンは集められた枝から具合の良さそうな物を選び出し、ナイフで串へと加工する。ウサギ肉を「開き」の様に串を刺して軽く塩を振れば炙り焼きの準備は完了だ。


 「後は任せた」


 実際の調理は、火の番をしているファーレンに丸投げだ。


 「こっちもだ」

 「おいっ」


 数種類の野草(ハーブ)と刻んだ干し肉に、リッテルが得意の水魔法で生成したそのままでも飲める水を注いだ鍋をファーレンに押し付ける。


 『こういうのは適材適所だよな』


 不満をのべるファーレンに、仕事を押し付けた側の返答が重なった。



 野営での食事に、文句は出なかった。

 温かいスープに焼き立ての肉。乾いた携行食を水で流し込む生活が何日も続いたのだ。スープが薄味だろうが、肉が少々獣臭かろうが雲泥の差がある。

 日が落ちきる前に食事を終え、各自が毛皮で防寒の備えを整え終えたのを確認した後に炉に焚かれた火を完全に落とす。周囲にどんな敵がいるか分からない環境では、火の灯りは格好の標的になる。

 夜目の効かない者は、全員『猫眼の秘薬』という軟膏を目蓋に塗っておくのも忘れない。この薬は丸一晩、まるで夜行性の動物のような視力を保証する。これを日が落ちきる前に塗っておくのは、非常事態で夜中に叩き起こされた際でも暗闇でものが見えないという事態を避けるためだ。

 笑い話にもならないが、これを売りつけてきた薬師曰く、『昼間にコレを目蓋に塗った上で、強制的に眼を見開かせる拷問がある』そうだ。

 買った側もそんな拷問を受けるのは願い下げだろう。


 夜の不寝番はマリーとナーガが夜の始まりから、深夜帯をリッテルとバランで、最後の夜明け前までの時間帯までをレオンとファーレンが担当するのが決まりごとになっていた。

 色々な組み合わせも試したのだが、種族的な特性と人間関係から一番ストレスの少ない組み合わせと順番としてこれが定着した。

 

 夜明け前までおおよそ三時間という時間帯でレオンはリッテルに起こされた。いつものことだが、夜目の利くリッテルは睡眠時間を削ってくれたようだ。

 もう一人のファーレンは、バランの弱い電撃で起こされている。寝入っている所を起こされて、不意に振り回される棍棒の様な腕を誰も喰らいたくはないだろう。これも必然的な組み合わせである。


 小声で夜に強い二人に感謝をのべて、レオンは寝足りないファーレンを引きずって不寝番に就いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ