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『魔王を討伐するハズの勇者(オレ)が婿入りして次期魔王筆頭候補になってしまった訳で』   作者: 御音人 真理
承前。

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承前。 その1 旅路の始まり

 冒険者レオンは勇者なり英雄になりたかった訳ではなかった。

 元々の生まれが商家の三男で、家業を継げる目など最初から無かったのだ。それでも、他所の家に丁稚に出されなかったのは幸運だったろう。

 小僧からはじまり、下っ端の手代として商人のイロハを教え込まれ、商いの商隊に見習いとして同行も許された。

 幼いながらも、馬車を連ねた行商の旅は楽しかった。見たこともない土地の風景を眺め、見たこともない土地の文化や人々と触れ合った。

 そうやって半人前のレオンを商隊に加えて旅をさせたのは、ある意味親父殿の思惑が働いていたに違いない。


 『お前は家を出て外の世界で生きていけ』という思惑が。


 行商の旅の中、護衛に付いた冒険者からは護衛の為にと色々としごかれた。

 旅人として必要な野営の技術や最低限の護身術に始まり、剣や槍に弓といった戦闘技術まで叩き込まれた。一再ならず弱音を吐いたレオンだが「お前を鍛えるのも契約の内だ」と言われてしまえば、もはやしごきから逃れる術はない。


 15歳となり、もはや子供と言えなくなった時分には駆け出しの冒険者程度の技量が身に付いていた。

 実家との付き合いが長い壮年の冒険者からは「つくづく器用貧乏なヤツだな」と笑われたのは、剣も槍も弓も人並みに使えるが、突出してこれはという得手となる技が身に付かなかったからだろう。

 重い戦斧や戦鎚を扱う体格や膂力に恵まれてはいないのだから、そこは大きなお世話だとレオンは思うことにした。


 一つ年上のリーンという青年から「一緒に冒険者になって街から出て行かないか」と誘われたのは、ちょうどその頃だった。

 リーンはなかなかの偉丈夫で、「いつか英雄になるのだ」と公言して憚らないやつだった。


 「俺が主人で、お前が従者な。旅の間は喰いっぱぐれないよう面倒を見てやるから、付いて来いよ〜」


 と、半分脅すように誘いを掛けてくる。

 リーンは既に冒険者ギルドに登録した冒険者だが、今の街を拠点にせいぜい近郊の町や村が対象の仕事しか受けさせてもらえていない。もっと大きな仕事を受けるには最低限、二人以上のパーティーを組んで、なおかつ一人は十分な旅の知識を習得している必要がある。

 そういう視点からすれば、レオンは組しやすい「優良物件」と見なされてしまった様である。


 結局のところ、レオンはリーンの話に乗ることにした。

 背負子一つの商材を抱えて旅をする遍歴商人になるという選択肢も無くは無かった。だが結局のところ、実家の商圏でそれをやれば将来は商売敵として目を付けられて人生が詰むのは目に見えている。

 それならば、目先を変えて冒険者になるのも悪くはない。遠くへ行って、冒険者家業の傍らかさばらない換金率の高い商材を扱う商人を副業とするのも悪くない。なんとなれば、冒険者は廃業して遍歴商人として身を起こすという選択肢すら残されている。

 しぶるリーンを宥め賺し「冒険者兼、従者兼、遍歴商人」という条件でパーティーを組むこと承知した。


 レオンの父親は報告を聞くと、一度頬を撫でてから無言で頷いてみせた。

 冒険者ギルドと商人ギルド、双方の入会金と最低ランクのむこう三年間分の年会費を払い込み、いくばくかの「支度金」という名目の手切れ金を渡してきたのは最後の親心だったのだろう。


 「行ってきます」


 旅立ちの朝、まるで隣町にでも出かけるような気安さで別れを告げると振り返ること無く実家を離れた。

 厳しい父親に愚痴一つ零さなかった、泣き腫らした跡が残る母親の顔は二度と思い出さぬ様に記憶の奥に封印した。

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