第14話 サクサク・オブ・シャドウ襲来!
勇者が街道を歩いていると、突風が吹き抜けた。
気づけば目の前に、二刀流の魔族が立っている。
「お前がパン勇者か……遅ぇな。俺はサクサク・オブ・シャドウ。
闇を駆ける最速の剣で、お前を粉砕する。」
後ろの部下が小声でつぶやく。
「……サクサクって名乗っておいて闇を駆けるって何だよ。」
「名前の方向性迷子かよ!!」
勇者は淡々と携帯オーブンを開ける。
ふわりと香ばしい香りが漂う。
「……焼きたてがいいな。」
「今それ言う!?」
「死ねェェェェ!!」
サクサクが高速で踏み込み、二刀を閃かせる。
ヒュンッ! ヒュンッ!
目にも止まらぬ連撃が勇者を襲う――が。
ガギィィンッ!!
勇者はクロワッサンシールドで受け止めた。
「……層が厚い。」
「いや褒めてんじゃねぇよ!!」
勇者は片手でラスクブーメランを取り出し、サクサクに投げる。
ヒュンッ! ガキィン!
弾かれたが、サクサクの表情が歪む。
「……今の、パンか? いや硬すぎだろ!」
「ラスクだ。」
「説明いらねぇよ!!」
勇者はオーブンを開け、剛焼バゲットを取り出す。
「……これでいい。」
ドゴォォォォォン!!!
フルスイングの一撃がサクサクの胴を直撃。
闇を駆ける最速の剣士は、地面にサクサクめり込んだ。
「お、俺が……パンに……負けるなんて……」
勇者は一言。
「……焦げ目がいい。」
「食感評価すんな!!」
こうして――
“闇を駆ける最速の剣”サクサク・オブ・シャドウは、剛焼バゲットの一撃で散った。