第13話 巨大パンゴーレム、歩く
勇者が訪れた村は、魔王軍の斥候に怯えていた。
「勇者様、どうかこの村を守ってください!」
村人が涙ながらに訴える。
勇者はオーブンを見下ろし、淡々と答えた。
「……わかった。試してみよう。」
「試す……?」
「新作だ。」
「新作!? ここ戦場だぞ!?」
⸻
勇者はオーブンを開き、巨大なパン生地を取り出す。
村人たちが唖然とする中、それを地面に叩きつけ――
ボフッ……ゴゴゴゴゴ……!
生地がうねり、膨らみ、
人型の巨大パンゴーレムが立ち上がった。
村人:「………………パン?」
勇者:「パンだ。」
「答えになってねぇ!!」
⸻
タイミングを見計らったかのように、魔王軍の斥候が村を襲撃してきた。
「勇者! ここで捕らえる!」
勇者はパンゴーレムに命じる。
「行け。」
ドゴォォォォォン!!!
ゴーレムの拳が斥候をまとめて吹き飛ばした。
「な、なんだあれ!? 巨大な……パン!?」
「パンで殴られて死ぬとか嫌すぎる!!」
⸻
戦いが終わると、勇者はゴーレムの脚をちぎって一口かじる。
「……もう少し塩がいるな。」
村人:「食うなよ!? それ今さっき戦ってたやつだろ!!」
こうして――
巨大パンゴーレムは村を守り、“食える防衛兵器”として勇者の旅に加わった。