第11話 カレーパンは戦場食です(異論は認めない)
荒野の戦場。
勇者は傭兵団の戦線に合流していた。
「お、おい! パン職人の勇者だ!」
兵士たちがざわつく。
「お前も戦うのか?」
勇者は携帯オーブンを下ろし、
じゅわりとスパイスの香りが漂うカレーパンを取り出した。
「補給だ。」
「……補給?」
「戦場では焼きたてが基本だ。」
「基本!? どこの軍規だよ!!」
兵士たちが恐る恐るかじる。
ピリッと辛いルーが口いっぱいに広がる。
「……な、なんだこれ、力が湧いてくる!」
「疲労が抜けた気が……!」
勇者は淡々と説明する。
「カレーのスパイスで血流が促進、パンの糖質で即エネルギー補給。
焼きたてだから魔力伝導率も高い。」
「どんな理屈だよ!!」
そこに魔王軍の部隊が襲撃してきた。
「うわっ! 魔族だ!」
兵士たちが慌てて剣を抜く。
勇者は無言でカレーパンを握りしめ、魔族に突進。
バゴォォォォン!!!
一撃で魔族の顎が吹き飛ぶ。
兵士:「……おい、今カレーパンで殴ったよな?」
「食べ物で戦うなよ!!」
戦闘後、勇者は焼きたてを次々と兵士に配っていく。
「おかわりだ。」
「え、もう!? どんだけ焼いてたんだ!?」
「戦場では量が命だ。」
「どこの軍人目線だよ!!」
こうして――
勇者のカレーパンは戦場食として傭兵たちの間で伝説になった。