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光を求めて  作者: kotupon


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ザックとフレッド

ジャンク宿。


そのまま一階の酒場で夕飯をとる。

テーブルを囲み、次の日の行動を確認し合う。


「明日はどうする?」

ジトーが尋ねる。


「小麦粉やら塩、胡椒、砂糖の買い出しだな。ザック、お前も手伝ってくれ」

シマが言う。


「ん?俺は防具屋に行かなくていいのか?」とザック。


「ああ、人手が足りなくなるかもしれねえからな」

シマが答える。


「おう、わかったぜ」


その後、シマたちはいつものようにたらふく食べ、たわいもない雑談をして部屋に戻る。


そんな中、サーシャたちに声をかける。

「明日は頼むぞ。ちゃんとスカーフで口元を覆うのを忘れんなよ」

念を押し、部屋へと向かう。


部屋に入ると、シマは懐から布袋を取り出し、ザックに2金貨を渡す。


「……何だこれ?」と困惑するザック。


シマはニヤッと笑い、「なあ、ザック。大人になって来いよ。興味があるんだろ?」


「お、お前ってやつは……何ていいやつなんだ」

感動するザック。


「ただし、女性陣たちには気づかれるなよ。マジで、絶対だぞ!本当に絶対だぞ!あとフレッドの奴も誘ってな」と続ける。


「もちろんだ。バレねえようにうまくやるさ。任せとけ!」

ザックは自信満々に頷いた。


そう言うと、深く息を吸い、フーッと吐いて気持ちを落ち着けた。

そしてシマに向かって親指を立てると、まるでスパイのような動きで部屋を出ていった。


女性陣たちに見つからないように、慎重に細心の注意を払いながら廊下を進む。

心の中では、(ここで見つかったらシマの心遣いが無駄になっちまう…焦るなよ俺…)と自分に言い聞かせる。

まるで戦場を進むかのように、足音一つ立てずに移動するザック。

なんでこんなときに限って俺の身体能力が発揮されてんだよ、と内心ツッコミながらも、無事に廊下を抜け、階段を音もなく下りた。


そして、ジャンク宿を抜け出すことに成功する。

「よっしゃ…!」と小さくガッツポーズを決めるザック。

これほどの緊張感を持って行動したのは、初めて狼たちと対峙した時以来だ。

そんなことを考えながら、モノクローム宿へと向かう。


問題はフレッドの呼び出し方だった。


宿の前でウロウロしながら

「どうすりゃいいんだ…まさか、石を投げるわけにもいかねえしな…」

悩むザック。

しかし、悩んでいても仕方がないと宿の中へ入る。


ちょうど夕飯を食べ終えたロイドたちが二階へ上がろうとしているところだった。

「ちょうどいい!」とばかりにザックは慌ててロイドたちを呼び止める。


「あれ?ザックどうしたんだい?」


「あら、ザックじゃない。また何か…問題でも?」


「あ、…いや、違うんだ。フレッドがやさぐれてるってサーシャから聞いたもんでな、ちょっと様子を見に来たんだ。」

おお、我ながら上手いこと言ったな…もしかして俺って天才か?と心の中で自画自賛するザック。


「へえ~ザックも意外と気遣いできるのね。」

と仲間たちは言いながら二階へ上がっていく。


フレッドは面白くなさそうな顔で、「もう別に気にしちゃいねえよ」とつぶやく。


しかし、ザックはニヤリと笑い。

「まあまあ、いいからちょっと外で話そうぜ」とフレッドを連れ出した。


二人は広場に向かって歩き出す。


「実はな…ククッ…シマから2金貨を頂戴してな、大人になってこいよって言われたんだよ。」


フレッドの表情が一変する。

「…あいつ…いいやつだな…!」


「だろ? ただし、絶対に女性陣にはバレちゃいけねえってさ。」


「もちろん分かってるぜ。俺たち、男の友情ってやつを見せてやろうぜ!」


二人は肩を組み、意気揚々と歓楽街へと向かう。


歓楽街の入り口に着くと、そこには煌びやかなネオンのような灯りが灯る建物が立ち並んでいた。

周囲には酔っ払いの男たちや、妖艶な女性たちが行き交っている。


「こ、これが…大人の世界か…!」


二人はゴクリと唾を飲み込む。

「い、行くぞ…!」


 歓楽街の片隅にひっそりと佇む店、「アッハン」。


 店の名は怪しさ全開だったが、ザックとフレッドはまるで深淵の森で獲物を探す狩人のごとく、鋭い目つきで周囲を観察していた。

彼らの耳はすでに研ぎ澄まされ、通行人の会話を一言一句逃さず拾っている。


「おい、あそこの店、最高だったぜ。サービスがやべぇ!」

「いやいや、やっぱり『アッハン』だろ。もう帰りたくなくなっちまうぜ!」


 情報収集は完璧だ。

加えて、店から出てくる客の表情もチェックする。

目が虚ろで、頬が緩みきった男たちが店を後にする姿を見て、ザックとフレッドは互いに頷いた。


「ここだ……間違いねぇ!」


 意を決して扉を押し開ける。


「いらっしゃいませぇ~!」


 甘ったるい声が出迎えると、艶やかな衣装を纏った妖艶な女性たちが、二人の前に現れた。


「あらあら~、いい男じゃないの!」

「こっちのお兄さんも、すごい身体してるわねぇ~!」


 まさかの高評価に、ザックとフレッドは互いにドヤ顔を見せ合った。


「ちょっと、俺たち、モテてねぇ?」

「ついに俺たちの時代が来たな!」


 二人はそれぞれの個室に案内されることとなった。


「じゃあな、ザック……」

「おう、フレッド……健闘を祈る……!」


 名残惜しそうに目を合わせる二人。

しかし、次の瞬間には美女たちに手を引かれ、各々の部屋へと消えていった。


 部屋の中に入ると、ザックの心臓はバクバクと高鳴っていた。


「そんなに緊張しないで?」


 妖艶な姉さんが微笑みながら近づく。

その視線だけで体が固まる。

だが、固まるのは体だけではなかった。アソコはすでに固まっていた。


「フフッ、可愛いわね」


 一枚、また一枚と服が脱がされていく。


「ま、待ってくれ!心の準備が……!」


 何を言っているのか自分でも分からないが、彼女は優しく微笑むだけだった。


「大丈夫よ、全部お姉さんに任せて……」


 そして── ザックは男になった。



 一方のフレッドも同じく戦場に立っていた。

彼は全身を汗でびっしょりにしながらも、己の限界を超えていく。


「まだ……まだいける!」


 その言葉通り、彼らの戦いは夜明けまで続いた。



 朝日が昇る頃、ついに二人は店を後にした。


 使い果たした金貨は2枚。

だが、彼らの表情には一切の悔いがなかった。


「……見ろよ、ザック。朝日が俺たちを祝福してくれてるみたいだぜ」

「全くだ。俺たち……大人になったんだな……!」


 しみじみと頷き合う二人。


「なぁ、ザック……なんでお前、足を引きずってるんだ?」

「な、なんでもねぇよ!」


 フレッドもまた、歩くたびにガクガクと膝を震わせていた。


「お前もじゃねぇか!!」


 ザックとフレッドは、必死に誤魔化しながら仲間たちのもとへと戻っていく。


「まあ……いい経験だったな。いやぁ、しかし……また来たいな!」

「二金貨の価値は……あったぜ!そのためには、まず稼がねぇとな!」


 二人は意気投合し、がっちりと握手を交わした。


 その背後で、店の女性たちが手を振る。

「また来てねぇ~!」


二人は胸を張って歓楽街を後にする。

 







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