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光を求めて  作者: kotupon


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報告

「お前らのも買ってきたぜ」


パサリと布が解かれると、金属の鈍い輝きが光を反射する。

皆の視線が集まる中、取り出したのは、見事な曲線を描く刃を持つファルシオンだった。

刃にはうっすらと波紋が走り、柄には力強い獅子の紋が彫り込まれている。

シマはその剣をオスカーに差し出し、真剣な表情で言葉を続ける。


「オスカー、お前にはいつも感謝してる。お前が弓矢を作ってくれなかったら、今の生活はなかっただろう。ありがとうな」


驚いた表情のオスカーは、ファルシオンを両手で受け取り、その細工を食い入るように見つめる。

刃を指でなぞると、ひんやりとした冷たさが伝わり、緊張が走った。シマが小さな声で続ける。


「獅子は勇気の象徴だそうだ。…メグを、守ってくれ」


その一言にオスカーの背筋がピンと伸びる。シマの目をしっかりと見つめ、力強くうなずいた。

「僕、強い男になるよ!」


「お前ならなれるさ。俺は信じてる」


次にジトーが布包みから長い槍を取り出した。


柄が鮮やかな朱色の漆で塗られた「皆朱槍」だ。

その美しさと威圧感に、皆が息をのむ。

朱色の光が反射し、まるで炎が揺らめくようだ。

ジトーは槍をザックに差し出し、少し照れたように言った。


「ザック、この槍を見たとき、真っ先にお前の顔が浮かんだんだ。うまく言えねえが、絶対にお前に似合うって思ってさ」


「い、いいのか…こんないいものを…?」


「お前だからこそ、だ」


ザックは震える手で槍を受け取り、その漆黒の刃先を見つめる。

朱漆の柄が手にしっくりと馴染んだ。そして、力強く槍を掲げて叫んだ。


「ああ、気に入った!この槍で家族を守ると約束するぜ!」


仲間たちの歓声が広がる。

ジトーがその様子を見て、頬を緩めた。


次にトーマスが取り出したのは、「アーミングソード」と「ショートソード」の二振り。

鞘には薔薇の装飾が施され、気品を感じさせる。

刃を引き抜くと、金属音が空気を切り裂いた。トーマスはクリフに手渡した。


「こっちのアーミングソードはお前のだ。で、こっちのショートソードは…言わなくてもわかるよな?」


クリフは一瞬戸惑った後、ショートソードをケイトに渡す。

ケイトが刃を引き抜き、光にかざしてみた。


「私たち、お揃いね」

ケイトが微笑み、頬を染める。

仲間たちは「おいおい、いい雰囲気じゃねぇか!」と冷やかした。

クリフは赤面しながらも、しっかりと剣を握りしめた。


続いてロイドが取り出したのは二振りの「グラディウス」。

短めの剣が二本。刃には複雑な模様が刻まれている。

ロイドはフレッドにそれを手渡し、説明する。


「これは左右に一本ずつ持って戦うんだ。二刀流っていうらしい。変幻自在の攻撃で敵を圧倒するって、シマに教わったんだ。まあ、君みたいな目立ちたがり屋にはぴったりだろ?」


「へへっ、最後の一言は余計だがな…二刀流…変幻自在か…面白ぇ!」


フレッドは剣を構え、軽く振ってみせる。素早い斬撃音が響く。

その動きの軽さに驚き、笑みをこぼした。


最後に残ったのは、女性陣のために選んだ「ショートソード」だった。

それぞれの柄には花のモチーフが彫り込まれている。

刃の根元には花言葉を刻んだ銘が光っていた。


「サーシャ、お前には桜。花言葉は『優美な精神』。エイラには百合、『純粋』。メグには向日葵、『憧れ』。ミーナは勿忘草、『真実の愛』、ノエルは菖蒲、『勇気』、リズにはアネモネ、『希望』だ」


「わあ、華やかで素敵!」

「私たちだけの剣ね!」


彼女たちが喜ぶ声を聞き、シマ、ジトー、トーマス、ロイドは得意げに胸を張る。

しかし、内心では「武器屋の親父のセンスが良かっただけなんだけどな」と苦笑するシマ。


「それと、これも試してみてくれ」

そう言って、シマは三つのバックラーを取り出した。


円形の小型盾で、中央に金属のボスが付いている。

革製のベルトが巻かれ、腕にしっかり固定できるようになっていた。


「へぇ、これを腕に着けるのね。あら、軽いのに頑丈そうだわ」

エイラが装着し、軽く腕を動かしてみる。


驚くほどの安定感に目を見張った。ほかの仲間も次々に試し、その機能性を確かめていく。


「これなら弓を撃つのに邪魔にならないわ。」


「攻防一体ってやつだな」


こうして、新たな武器を手に入れた彼らは、互いの絆をさらに深めるのだった。

その刃に宿る決意とともに、彼らの冒険は静かに幕を開けていく。



「そういえば…」

突然、フレッドが声を上げた。

「お前らの武器はどうした?前のやつのままか?それとも新しいのを買ったのか?」


その問いに、シマ、ジトー、トーマス、ロイドが一瞬目を見合わせる。

気まずそうに視線を逸らし、どもるように答える。


「あ、ああ、俺たちは…なあ?」

「う、うん…」「そ、そうだな…」「まぁ…な」


ぎこちなく頷く四人に、女性陣の目が鋭く光る。

「怪しい…」「何か隠してるわね…」「やましいことがあるんじゃないの?」


サーシャが腕を組み、ズイッと一歩前に出る。

「はっきり言いなさい!」


「はいぃぃぃーっ!」


見事なハモリで返事をする四人。

額に冷や汗をにじませながら、ぼそぼそ口を開いた。


「じ、実は……ノーレム街でゴチになって…その、うまい飯食わせてもらったり、屋台巡りで買い食いしたり、ちょっと楽しんでました…」

互いに目を合わせる四人。


しかし、その様子を見た仲間たちはあきれ返る。


「しょうもない理由ね…」「馬鹿馬鹿しいわ…」「そんなことで隠してたの?」

女性陣のため息があちこちで響く。


「そんなくだらないことで罪悪感感じるなんて、ほんとバカね」


「気にしなくてもいいのにさ」


サーシャを筆頭に女性陣からの説教が始まる。


うなだれるシマたち。


その様子を、ザック、クリフ、フレッドが腕を組みながらニヤニヤと眺めていた。


そして、その光景を見ていたメグがオスカーを呼んだ。

「オスカー、あれは悪い見本だからね。オスカーはああなっちゃダメだよ」


「え?あ…はい!わ、わかりました…!」

突然の説教に、オスカーは背筋を伸ばして返事をする。

だが、その頬が引きつっていたのは、誰もが見て取れた。



その後も、説教はしばらく続いた。


「ほんとにね、男の人って単純よね」「そうそう、ちょっとしたことで浮かれちゃうんだから」「しかも、揃いも揃って屋台巡りって」


女性陣の言葉にシマたちは肩をすくめるしかない。


「だってなあ、あんなにうまそうな匂いが漂ってたらさ…」「うん、つい…」「気づいたら足が勝手に…」


苦しい言い訳に、さらに冷たい視線が飛ぶ。


「言い訳は聞きたくないわ」

「でも…まあ、楽しめたならいいんじゃない?」


「次は私たちも連れてってよ」


「もちろんだ!」

胸を張るシマたち。


その後の「次はちゃんとしなさいよ?」というサーシャの笑顔に、全員が笑いに包まれるのだった。


女性陣の気分が多少落ち着いた頃、シマはジトー、トーマス、ロイドと目配せを交わし、今がチャンスだとばかりに口を開いた。


「皆に報告があるんだ。今回の旅で仕入れた物資や出来事を話すよ」


他の仲間たちも興味深げに集まる。


シマは少し胸を張り、声を張って説明を始めた。


「まず、物資の購入内容だ。小麦粉が20キロ、塩が9キロ、砂糖2キロ、胡椒500グラム、油が2リットル、それからブルーチーズが1キロ。道具類として、鋸2本、鍬2本、スコップ2本、包丁2本を用意した」


「小麦粉20キロ!」

エイラが目を輝かせる。

「これだけあれば、しばらくはパンや焼き菓子に困らないわね!」


「そうだろ?あと、裁縫道具も揃えた。丈夫な針5本、丈夫な糸が10メートル、それに針金が5束。1束につき20センチの針金が10本入りだ」


リズが口元を押さえ、声を上げた。

「まあ!この丈夫な針、助かるわ。布地も数反買ってくれたのね」


「もちろんさ。あと、マントを11着、衣服も数着買ってきた。これで冬支度もバッチリだ」


女性陣が頷く中、ノエルが不思議そうに首を傾げた。

「ところで、この油は何に使うの?」


それを聞いたシマはニッと笑い、自信満々に答えた。

「明日になればわかるさ。今まで食べたことがない、うまいものを食わせてやる!」


「え?なにそれ、気になる!」


女性陣の期待が高まる中、シマは満足そうに頷いた。

そして次に、道中の出来事について語り始める。


「行きの道中で、『鉄の掟』傭兵団の連中と出会ったんだ。あと、商人のアレンって人ともな。」


「傭兵団?」

クリフが興味を示す。シマは頷いた。


「そう。『鉄の掟』は、規律がしっかりしていたな、依頼をきっちり果たす傭兵団らしい。それに、商人のアレンとダミアンは仲間らしい」


「へえ…」


仲間たちが感心していると、ジトーが補足する。

「実は、俺たち、スカウトされたんだ」


「ええっ!?」


一同が驚きの声を上げる。ザックが目を丸くする。

「それって、すげえじゃねえか!傭兵団に認められるなんて」


「まあな。でも家族に相談してからでないと何とも言えないと言って保留中だな。」


シマの言葉に、仲間たちは安堵の表情を見せた。


「で、そのアレンと傭兵団副長ライアンと商談をしたんだ。オスカーが作った弓を4張、1張につき1金貨と5銀貨で売ったんだよ」


「1張で1金貨と5銀貨?!」

驚愕するオスカー。

「そんなに高く売れたの?!」


「おう、品質の良さに驚いてたぜ」


オスカーの頬が赤くなり、嬉しそうにうつむいた。


「ノーレム街の武器屋では2金貨で買い取ってくれたんだがな…」

申し訳なさそうに話すシマ。


2金貨!?。そりゃあすげえ!。凄いじゃない!オスカー。

益々、照れるオスカー。


「足元を見られたというよりも…経験の差かしら?まあ、いい勉強になったんじゃない」


「面目ねえ…それから…」

シマの表情が引き締まる。


「行きの道中で、野盗の襲撃を察知して、『鉄の掟』傭兵団と協力して撃退した」


空気がピンと張り詰める。


「襲撃?!怪我はなかったの?」

サーシャが心配そうに身を乗り出す。


シマは笑顔で首を横に振る。

「大丈夫。皆の連携で無事に撃退できたよ」


「そう…良かった…」


仲間たちは安堵の息をついたが、シマはさらに声を低くした。

「帰り道でも、深淵の森で狼4頭に襲われた。2頭を倒して、2頭は逃げた。」

「サクッと倒してやったがな。」

「狩に行くときは用心した方がいいだろう。」

「絶対に1人では行動しないようにね。」



「私たちには家族がいる。力を合わせれば、どんな敵だって乗り越えられるわ」


「ああ、そうだな」


シマが笑顔で答えると、仲間たちも力強く頷いた。





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