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光を求めて  作者: kotupon


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思わぬ出会い

その後は順調に進んでいる。


ライアンが打ち取った人物は野盗『山猫』の頭目ジガンということが判明された。

ジガンには懸賞金がかけられており、その額は7金貨から8金貨になるだろうとアレンが告げた。


思わぬ報酬に驚きを隠せない一行。

ライアンは律儀にも、その報酬の半分をシマたちに渡そうと申し出たが、シマたちは丁重に断った。


「それならばノーレム街に着いたら、飯をおごってやるよ」


ライアンの提案に、シマたちは顔を見合わせてニヤリと笑い、「ゴチになるぜ!」と快諾した。

ただし、最初に提示された1金貨はありがたく頂戴することにした。


一方、アレンからも1金貨をもらうことになり、アレンは涙目で財布を差し出した。

ライアンはホクホク顔だったが。


こうして、シマたちの持ち金は合計で8金貨と2銀貨となった。

この分なら予定よりも随分と早く目的地に到着できそうだと、胸をなでおろす。


道中、シマたちはアレンやライアンたち『鉄の掟』の面々と様々な話を交わした。


アレンや『鉄の掟』はノーレム街に3日から4日ほど滞在し、その後はノルダラン連邦共和国に向かう予定。

ノルダラン連邦共和国は多種多様な民族が集まる国で、交易が盛んに行われていることでも有名だ。


「ノルダランには、何をしに行くんだ?」


シマの問いにライアンが答えた。


「ん?言ってなかったか、アレンさんとの契約はノルダランまでの護衛だ。俺たちの本拠地はノルダランにあるんだぜ。帰ったらまた護衛任務さ。」


「そうなのか。」


「ああ。有名になるのも良し悪しだな、ひっきりなしに依頼が舞い込んできてな…『鉄の掟』は大所帯だからいいんだが。」


「仕事が途切れないなら、いいんじゃないか。」


「まあ、そうだな。」


夜になると、一行は焚き火を囲んで休息を取った。

シマは、じっと炎を見つめた。炎の揺らめきの中に、自分たちの未来を重ねる。


翌朝、一行は再び歩みを進めた。晴れ渡る空の下、ノーレム街まではもうあとわずか。



昼頃にノーレム街に着いたシマたちは、前回と同じジャンクという宿に泊まることを決めた。


一方、ライアンたちはライジングという少しお高めの宿に泊まることが確認され、夕方にシマたちがライアンたちの宿を訪ねることで話がまとまった。


シマたちの持ち金は7金貨と8銀貨。宿に2部屋分の予約を入れ、8銅貨を支払い、軽く食事を取ることにした。


「おい、あまり食いすぎるなよ。夜にはライアンの奢りが待ってるんだからな」

シマの声に、ジトー、トーマス、ロイドが笑いながら答える。


「わかってるって!ライアンの目ん玉が飛び出るほど食いまくってやるぜ!」


食事を終えて、ノーレム街を散策することにしたシマたち。

街は活気に溢れ、行き交う人々の声が賑やかに響いている。

道端の露店には色とりどりの小物や雑貨が並び、香ばしい屋台の匂いが漂っていた。


「お、あの露店なんか良さそうじゃねえか」

トーマスが指差した先には、手作りの装飾品を扱う小さな店があった。


木彫りのアクセサリーや金属製の髪飾りが所狭しと並んでいる。

シマたちは早速物色を始めた。


「この髪飾り、サーシャに似合いそうだな」

シマが手に取ったのは、赤、青色の石があしらわれたシンプルな髪飾りだ。

時には活発に時には冷静沈着な行動を見せるサーシャには合うだろう。


「こっちの赤色のリボン付きの髪留め、メグに似合いそうだ」

まだまだ幼く可愛いといった感じのメグだ。これをつければさらに可愛くなるだろう。


「これはエイラの髪に映えそうだ。」

紫色の小さな花がついた髪飾り。

清楚で控えめなデザインはエイラの落ち着いた雰囲気にぴったりだ。


「ん?この革のポシェットなんかケイトにいいかもな。」

射手でもある彼女には重宝されるだろう。


隣でジトーが、二つの髪飾りを手に取って悩んでいた。

「う~ん、どっちがいいかなあ…ミーナにはどっちも似合うと思うんだよなあ。」


「それなら両方買えばいいさ」

シマが笑って言うと、ジトーも「確かに!」と頷き、迷わず両方を選んだ。


トーマスは小物入れと髪留めを見比べて頭を悩ませていた。


「両方買えばいいだろ」

シマの一言にトーマスは目を輝かせた。


「そうだよな!これなら絶対にノエルの奴、喜んでくれるよな!」


ロイドは棚の奥にあった大きな白い花のついた髪飾りを見つめていた。

「リズがこれをつけて歌って踊れば、さらに輝くと思うんだよね」


「きっと似合うさ。リズは華やかなものが好きだからな」


それぞれが大切な人を思い浮かべながら、贈り物を選ぶ姿は微笑ましかった。

みんなの心には、ほんのひと時の平和な時間が満ちていた。


女性陣への贈り物を買い終えたシマたちは、夕方までにはまだ多少の時間があったため、再びノーレム街を散策することにした。

石畳の道を歩きながら、次の土産について話し合う。


「さて、次はザックたちへの土産か」


「武器一択だろ」


「防具もいいかもね。」


「服には興味ねえだろうし」


「確かに、あいつら戦いにしか興味ないからな」


談笑しつつ武具店を探していると、見覚えのある男が道の向こうから歩いてくるのに気づいた。


「…ダミアン」

シマが低く呟いた。


男もシマに気づき、口の端を引き上げて薄い笑みを浮かべる。


厭味ったらしく言うシマ。

「随分とお早い御着きで。約束した日の七日前だぜ」


「そういうお前らこそ、日にちを間違えて来てしまったのか?」


シマたちとダミアンは取引相手でありながら、まだ信頼関係はない。

お互いが何かを画策してくるのではないかと疑心暗鬼がある。

そのため、シマたちは予定より早く深淵の森を出てノーレム街に到着し、ダミアンの動向を見張るつもりでいた。


(こいつも同じことを考えてやがったな)

シマは内心で舌打ちする。


「相変わらず食えねえガキだな」


「慎重だって褒めてくれてもいいんだぜ」


「はっ、口が達者なところも相変わらずだ」

ダミアンは冷ややかに笑う。

「で、物は揃ってんのか?」


「問題ない」


「そうか、ならいい」

ダミアンが提案する。

「じゃあ、飯でも食いに行くか?もちろん自腹だがな」


シマたちは互いに目配せをする。

ライアンたち『鉄の掟』との約束の時間が迫っていたため、シマは軽く肩を竦めて答えた。


「悪いな。先約があるんでな」


「ほう。お前ら、この街に知り合いがいるのか?」


「道中で知り合った傭兵団だよ。『鉄の掟』って名のな」


「はあ?『鉄の掟』!?」

ダミアンが目を見開いた。


その反応にシマの警戒心が強まる。


「…一緒にいた商人は知ってるか?」


「アレンだろ。」


俺の仲間だというダミアン。

(よほど運が良ければこの街で会うかもな、くらいにしか考えていなかった。

不味いな…ここでアレンと顔を合わせると、例の物の出所がコイツらだってバレるか?

考えすぎか…いや、念には念を入れた方がいいな、出歩くのも控えた方がよさそうだな。

さっさと取引をしてこの街から、ずらかった方がいいか。)


「…どうした?ずっと黙ったままで」


「ん?ああ、いや、なんでもねえ、ところでお前らの泊まる宿は?」


シマたちは前回と同じジャンクという宿だと教える。


「それなら今夜にでも取引をしよう」

ダミアンが提案する。


シマたちは顔を見合わせて頷く。

「了解だ」


「じゃあ楽しんで来いよ」

そう言い残して足早に去っていくダミアン。



その後、シマたちはライジングという宿を訪れ、ライアンたち『鉄の掟』の面々と合流した。


宿の食堂には豪華な料理がずらりと並べられ、食欲をそそる香りが空間を満たしていた。

炭火で焼かれた大きな肉の塊、黄金色に揚がった野菜のフリット、香草を散らしたシチューの鍋、そして甘い香りを放つ焼き菓子が所狭しと並んでいる。


「うおおっ、すげえ!」

トーマスが目を輝かせて叫ぶと、ジトーも負けじと声を上げた。

「これ全部、俺たちが食っていいのか!?」


「もちろんだ。約束通り、今日は俺の奢りだ。遠慮せず食え」


ライアンが笑顔で促すと、シマたちは一斉に料理に飛びついた。

大皿に盛られた肉をガツガツと頬張り、シチューの鍋に次々とスプーンを突っ込んでいく。

彼らの勢いに、傭兵団の団員たちは目を丸くする。


「おいおい、どんだけ食うんだよ」


ライアンが呆れたように言うと、隣のアレンも苦笑いを浮かべた。


「若いってのはすごいもんだね。あの胃袋はどうなってるんだろう」


「まだまだこんなもんじゃ足りねえよ!」

シマが口の周りを肉汁で光らせながら豪快に笑うと、周囲もつられて笑い声を上げた。


ジトーは骨付き肉を両手に持ち、夢中でかじりついている。

「はあ、はあ……この肉、最高だぜ!」


トーマスはシチューをスプーンで掬っては口に運び、頬を緩ませる。

「このシチュー、すごく旨い。味が深いっていうか、なんか懐かしい感じがする」


「それ、ノーレム街名物のハーブシチューだな。隠し味に森で採れた香草を使ってるんだぜ」


傭兵団のひとりが説明すると、シマたちは感心したようにうなずき、さらに夢中になって食べ続けた。


食堂は笑い声と食器が触れ合う音で賑わい、温かい雰囲気に包まれていた。


「お前たち、普段は村の中で暮らしてるんだろ? どうやって食欲を維持してるんだよ」


ライアンが不思議そうに尋ねると、シマが肉を噛み切りながら答えた。


「そりゃあ、いつ飢えるか分かんねえからな。食えるときに食っとくんだよ」


「なるほどな。生きるための知恵ってわけか」

ライアンが感心したように頷いた。



やがて食堂には、満足そうなシマたちと、彼らを見守る大人たちの穏やかな笑みが広がっていた。

食事の後、シマたちはライアンに感謝を告げて宿を後にした。


「今夜は最高だったな!」

「ほんとにな!ライアンに感謝しねえとな」


満腹で満ち足りた笑顔を浮かべながら、シマたちは夜風を浴びつつ宿への帰路についた。



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