表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光を求めて  作者: kotupon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/442

試行錯誤の日々

新しい家を建ててから、はや二か月が経った。


日々の暮らしも安定し、シマたちはより効率的に生活を送るための工夫を凝らしていた。

彼らの生活は以前とは比べ物にならないほど整備され、生活の質も向上していた。


彼らは切り株を椅子代わりにし、簡素ながらも頑丈なテーブルを作り、食事の時間をより快適なものにしていた。

食料の確保にも余念がなく、周囲の森でローブッシュ系のブルーベリーを採取し、川や湖では魚を獲り、罠や弓を駆使して兎や鳥、鹿を仕留めた。

それらの肉は燻製にし、保存食として蓄えている。

さらに、森の奥では薬草や香草を採取し、調味料や薬として利用する術を学び始めた。

シマはユズやカボスといった柑橘類も発見し、これらを料理の風味付けに活用することで、食生活の幅が広がった。


また、ブラウンクラウン、ジャガイモの栽培にも挑戦し始めた。

特にジャガイモは、食料としての可能性が高いと考え、実験的に植えてみた。

しかし、シマの知識は曖昧で、深く植えないこと、水はけのよい場所に植えることくらいしかわかっていなかった。

それでも試行錯誤しながら畑を作り、日々の世話を続けていた。

発芽を確認できたときの喜びは大きく、今後の収穫に期待が高まった。

ジャガイモを安定的に栽培できれば、飢えを防ぐための大きな武器となるだろう。


この三年間で特に不思議だったのは、ブラウンクラウンが一年中採取できることだった。

通常のキノコは季節ごとに収穫期が異なるが、ブラウンクラウンだけは常に一定の数が生えていた。


金になることを知ってからは、彼らはより慎重に採取し、必要以上に取りすぎないように心掛けていた。

ダミアンに卸せば大きな収入源となるため、シマたちは少しずつ計画的に採取を進めていった。

そしてブラウンクラウンの特性を調べるため、環境要因を探るため、森の影になる場所や湿度の異なる場所に種菌を配置し、その成長を観察するという地道な作業が続いた。


一方で、戦闘の訓練も欠かさなかった。


シマたちは、盾を使った戦術を研究し、仲間同士で模擬戦を繰り返した。

弓の技術も磨き、遠距離攻撃の精度を高めている。

だが、オスカーを除き男性陣は弓の腕前は壊滅的だった。


戦闘中に迅速に意思疎通を図るため、簡単なハンドサインを決め、実戦でも使えるよう練習を重ねた。

戦闘技術の向上は、自分たちの生存に直結する問題であり、誰もが真剣に取り組んでいた。

日々の鍛錬の成果もあり、狩猟や自衛の際の動きが格段に洗練されてきた。


リズは、集めた大量の毛皮を利用して防寒着を作り、限られた布を使って服を仕立てた。


彼女の手によって、羽毛を詰めた布団も作られ、寒い夜でも快適に眠れるようになった。

特に冬の厳しさを考え、防寒対策は最優先事項の一つだった。

彼女の手仕事の巧みさに、皆が感謝していた。

さらに、簡単な靴作りにも挑戦し、耐久性のある素材を使って手縫いのブーツを作ることに成功した。


オスカーは弓矢の制作に精を出していた。


特に、女性陣からの「大型獣に致命傷を与えるために、矢を太くできないか」という要望を受け、それに適した弓を設計することに取り組んでいた。

強度を高めつつ、女性でも扱いやすい設計にするために試作を繰り返し、ようやく実用レベルのものが完成しつつあった。

さらに、弓だけでなく、罠の改良にも取り組み、より効率的に獲物を仕留める方法を考案していた。

シンプルな落とし穴や、動物の習性を利用した誘導罠など、多様な方法を取り入れた。


シマたちは、狩猟や戦闘訓練をバランスよくこなしながら、より快適で安全な生活を求めて努力を続けた。

新しい家が建ってからの二か月間で、彼らの生活は格段に向上し、ただ生き延びるだけでなく、未来を見据えた生活へと変わりつつあった。

彼らは、季節の移ろいを見つめながら、新たな挑戦へと歩みを進めていった。



 いつもの夕食時。


焚き火の明かりが揺らめく中、シマたちは切り株を椅子代わりに囲み、騒がしくも賑やかに食事を楽しんでいた。

肉を炙る香ばしい匂いと、薬草を煮出したスープの湯気が空気を満たし、森の中では夏でも夜になると冷え込む寒さを和らげてくれる。

笑い声が絶えず響き、誰もが穏やかで満ち足りた表情を浮かべていた。


 「明日の狩りが楽しみだわ!」

 サーシャが興奮気味に声を上げる。


彼女の隣では、ケイトやノエル、ミーナ、メグ、エイラも頷いていた。

彼女たちは全員弓を使う射手であり、今回の狩りでも重要な役割を担っている。


 「オスカーに作ってもらった新しい弓を試してみるのが待ちきれないわ」


 サーシャはそう言いながら、手元に置かれた弓を撫でる。

オスカーは皆のためにそれぞれの体格や力に合わせた弓を作ってくれた。


シマも一本手に取って弦を引いてみる。

しっかりとした反発力を持っており、そこそこの力を入れないと弦を引ききれない。


 「これ、普通の人じゃ無理なんじゃないか……?」


 シマはそう呟きながら、慎重に弓を戻す。

ブラウンクラウンを毎日のように食べ、身体能力の上がった自分の腕力では何とか扱えそうだが。


 一方、狩りの布陣も決まっていた。


弓手のサーシャ、ケイト、ノエル、ミーナ、メグ、エイラが後方から獲物を仕留める役を担う。

前衛として盾を持ち、荷物運びも兼ねるのはジトー、トーマス、ザック。

さらに中衛として戦況を見ながら動くロイド、クリフ、フレッドが隊に加わる。


 「リズは防寒着を作るんだろ?」

 ザックが尋ねると、リズは頷いた。


 「ええ。ブーツ、手袋、帽子、マフラー……防寒具はどれも必要不可欠だからね。冬が来る前に準備を進めないと」


 彼女は手元の布と毛皮を広げながら、どのように裁縫を進めるか考えていた。

寒冷地での生活では、暖かい装備が命を守る要素になる。リズの仕事もまた重要だった。


 オスカーは予備の弓矢作りに励んでいる。

特に矢は大量に必要になるため、小動物用の細い矢、大型獣用の太い矢をそれぞれ用意する必要があった。

彼は丁寧に矢じりを削り、羽根を取り付けていた。


 シマはといえば、今回は狩りには参加せず、別の準備を進めることにしていた。


主な仕事は、実験栽培中のブラウンクラウンの管理と、ジャガイモの世話。

そして、誰にも言っていないが、ある計画を進めようとしていた。


 (……パンを作る)


 前世の記憶を頼りに、小麦粉からパンを焼く試みだ。

シマが知る限り、ふっくらしたパン作りにはイースト菌が必要だった。

そしてイースト菌とは酵母のことである。

ブルーベリーやユズの皮を使う(ローブッシュ系のブルーベリーがあるので使える)

小麦粉と水で自然発酵サワードウ


つまり、何か発酵させるものを加えればいいのではないか?

 (小麦粉にブルーベリーを練り込めばいいんじゃね?)


 そんな仮説を立て、シマは考えを巡らせた。

ただし、どれくらいの分量を加えるのか、どれくらい寝かせればいいのかはわからない。

だが、試さなければ始まらない。


 (うまくいくかはわからないけど……やってみる価値はあるだろう)


 翌朝、狩りに出る仲間たちを見送ったあと、シマはさっそくパン作りに取り掛かった。

まずは小麦粉を水でこね、ブルーベリーを加えて発酵を試みる。

並行して小麦粉と水で自然発酵サワードウも試みる。

しかし、室温が低いためか、なかなか発酵が進まない。


 「やっぱり発酵には温かい環境が必要か……」


 思案しながら、シマは布で生地を包み、焚き火の近くに置いてみる。

時間が経つと少し膨らんできたが、まだ理想の状態にはほど遠い。

数日、試行錯誤を繰り返すことになる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ