実感とジャガイモ
新たな家を作ることになった。
「大きさは今の家の2倍だ。」
シマの言葉に、仲間たちは気合を入れる。
「よし、まずは木を切り倒すぞ!」
ジトー、トーマス、ザックは斧を担いで森へ向かい、大木を次々と切り倒していく。
「すげえっ! こんなに簡単に切れるもんなのか!」
「なんじゃあこりゃあ! マジで簡単に切れるじゃねえか!」
「マジそれな! 斧ってすげえな!」
彼らは興奮した様子で声を上げる。
以前は苦労していた伐採作業も、今では驚くほどスムーズに進んでいた。
一方、シマ、ロイド、クリフ、フレッドはスコップを持ち、新しい家の基礎となる正方形約15メートル×15メートル、深さ20㎝の穴を掘る。
「サクサク進むな!」
フレッドが驚いたように言う。
クリフも声を上げる。
「この分ならあっという間に終わるな!」
実際、20分もかからずに掘り終えた。
掘った地面を足で踏み固め、石や葉、枝を敷き詰めて整地していく。
その間、サーシャ、ケイト、ミーナ、メグは新しい矢の試し撃ちをしていた。
「飛距離が伸びたわね。」
「若干、精度が上がったように感じるわ。」
「…小動物を狙うのにはいいけど、大型獣だとこれでは致命傷を与えられないわね。」
「動いている標的の目を狙うのは、結構難しいしね。」
エイラとノエルは燻製作りに取り組んでいた。
リズは裁縫道具を持ち、防寒着や布団、服を作る作業に集中する。
オスカーは倒木をどのように組み立てるかを考えながら、シマたちに指示を出し、細かい作業を進めていった。
新しい家は2日で完成した。
この家は女性陣が暮らすための家として建てられた。
「…思ったより早く終わったな。」
シマが満足げに言う。
「この家なら、みんな余裕を持って暮らせそうだね。」
ロイドがしみじみと呟く。
「女性陣のための家だからな、もっと居心地よくしてやりたいな。」
クリフが言い、メグが笑顔でうなずく。
「これで、私たちも自分たちの空間が持てるわね!」
サーシャが喜びながら言うと、ケイトやミーナも満足げにうなずく。
「新しい家での暮らしが楽しみだわ!」
エイラが目を輝かせる。
そして、次の課題に取り掛かることになった。
「柵作りもさっさとやろうぜ!」
「おう、頑丈なものをな!」
「トイレを設置するのもいいんじゃない?」
「そうね、いちいち川まで行くのは面倒だわ。」
「男性用と女性用の二つを作りましょう。」
「川までの溝を作って直接流せるようにしたらいいんじゃない?」
「そうだなぁ、ちょうど川まではなだらかな下り斜面になってるし、できないこともないか。」
「溝を掘るんなら任せてくれよ。」
「そうそう、あのスコップってやつはすげえぜ! あっという間に掘れるし。」
「それを言ったら斧だってすげえよ! スパスパ切り倒せるしな!」
「切ってて楽しい気分になってくるぜ。」
「へ~じゃあ次は私にやらせて。」
「わたしもやってみたいわ!」
ここまで一言も発していないシマ。
「お兄ちゃん、さっきから黙っててどうしたの?」
「…ああ、少し考え事をしていたんだ。心配することじゃない。なあジトー、まさか一撃で切り倒したわけじゃないよな?」
「ん? なに言ってんだお前、全部一撃だぞ。こうやってビュッ!ってやったらスパッと切れるんだ。」
「…結構な太さの木もあったぞ…いくら何でも話を盛りすぎだろう。」
「いやいや、嘘じゃねえって、なあ。」
ザック、トーマスもうなずく。
エイラが言う。
「ブラウンクラウンの影響かしら? 自分自身で確かめてみれば?」
「そうだな…」
彼らはそれぞれの作業に精を出しながらも、自分たちの成長を少しずつ実感していた。
シマも試しに斧を手に取り、目の前の木に振り下ろした。
バシュッ!と音を立て、木がわずかに傾く。
一撃で完全に倒すことはできなかったが、明らかに以前とは違う力が自分のものになっていると感じた。
「すげえな…」
思わず呟いたシマに、ジトーが笑う。
「だろ? 俺たち、なんか強くなってんだよな。」
エイラは腕を組みながら考え込む。
「ブラウンクラウンを食べ続けた影響は確実に出ているのかもね。でも、これがどこまで続くのか、どんな副作用があるのかも分からないわ。」
「ま、弱いよりは強い方がいいだろ。」とザックが軽く肩をすくめる。
「それに、ここを拡張するにはこの力はありがたいよな。」
「そんなに簡単に切れるのか?」
「じゃあ、私たちも試してみましょう。」
エイラ、サーシャ、ケイト、ミーナ、リズもそれぞれ斧を持ち、大木に向かって振り下ろす。
「よいしょ!」
サーシャが勢いよく振り下ろすと、想像以上にスパッと刃が食い込み、驚いた表情を浮かべた。
「えっ、こんなに切れるの?」
ケイトも試しに構え、思い切って打ち付ける。
見事に刃が木にめり込み、彼女も目を丸くした。
「なんだか…楽しいわね。」
ミーナも挑戦し、斧の切れ味を実感する。
「これなら私たちでも簡単に木を切り倒せるんじゃない?」
「こりゃあ本格的に家を増やすのも夢じゃねえな!」
その後、彼らはそれぞれの役割に戻り、作業を進める。
シマとロイド、クリフ、フレッド、オスカーは溝を掘り、そこに川へと続く排水路を作っていく。
水が流れる様子を確認しながら、必要に応じて補強を施していった。
「トイレの位置はここでいいな?」
「ええ、これなら風向きも考慮されているし、臭いも気にならないはずよ。」とエイラが頷く。
「俺たち、思ってたより快適な生活を手に入れつつあるな。」とフレッドが感慨深げに言った。
家が完成し、柵が強化され、トイレまで設置されたことで、彼らの拠点はますます充実したものとなっていった。
「次は何を作る?」
「うーん、暖房設備とかも考えないとね。」
「そういや、食糧の備蓄ももっと増やしておきたいな。」
次々と課題が浮かび上がるが、それもまた彼らの生活を豊かにするためのステップに過ぎなかった。
こうして、新たな住環境の整備と共に、彼らの成長と変化にも気づき始めるのであった。
新たな家の完成とともに、彼らの生活はさらに快適なものへと進化していった。
その日の夕食、シマはジャガイモを使った料理を振る舞うことにした。
エイラ、ノエル、リズが心配そうに忠告するが。
シマは微笑みながらジャガイモを手に取ると、みんなに説明を始めた。
「この部分が毒になるんだ。芽と緑色になった皮の部分さえ取り除けば問題ない。」
そう言って、慎重にジャガイモの芽を取り除いて見せる。
「最初に俺が食べるよ。」
そう言うと、シマはジャガイモと肉の炒め物を一口食べた。
「…美味い!」
(これでコメがあったら最高なんだが…)
次に、ブラウンクラウン入りのスープを口にする。
ジャガイモが入ったことでとろみがつき、スープは極上の味わいになっていた。
「これは…すごいな。」
シマは満足げに頷いた。
新しい家には中央に囲炉裏が設置されており、その中の焚き火の灰にジャガイモを丸ごと入れてじっくりと焼いた。
焼き上がったジャガイモを取り出し、熱さに驚きながら皮をむいて口に運ぶ。
「アツッ!」
ホクホクとした食感がたまらない。
仲間たちは最初こそ心配そうに見ていたが、美味しそうに食べるシマの姿を見て次々に手を伸ばし始めた。
焼きジャガイモに少し塩をかけて食べた仲間が感嘆の声を上げる。
「美味い…うますぎる!」
シマはメグにも勧めた。
「メグも食べてみろよ。」
メグは恐る恐る口に運んだが、すぐに笑顔になる。
「うん!美味しい!」
エイラもうなずきながら言う。
「…美味しいわね。」
ノエルも同意した。
「うん、普通に美味しい。」
リズも少し驚いた表情で言った。
「…こんなに美味しいとは思わなかったわ。」
シマはさらにジャガイモを使った料理を作り続ける。
バターで炒めたジャガイモにハーブを加えたもの、ジャガイモをつぶして団子状にして焼いたもの、スープにジャガイモをたっぷり入れたポタージュのようなもの。
「これは新しい食材の発見ね。」
エイラが満足げに言う。
「これなら保存もできるし、しばらく食糧に困らないな。」
ロイドが頷く。
「スープが特に美味しい!」
ミーナが嬉しそうに言い、何度もおかわりをする。
「こんなに種類があるなんて驚きだ。」
ザックが目を丸くする。
「それだけじゃないさ。」
シマはさらに工夫を凝らした料理を披露した。
ジャガイモを薄くスライスし、焚き火の熱でカリカリに焼いたものを試食させる。
「サクサクしてて、これも美味しい!」
「これはジャガイモのお煎餅って感じね。」
さらに、ジャガイモをすりおろし、小麦粉と混ぜて薄く焼いたパンケーキのような料理を作る。
「これは…おかずにもなるし、甘くしてデザートにもできそうね。」
エイラが目を輝かせる。
「ジャガイモってすごいな。こんなにバリエーションがあるなんて思わなかったよ。」
ロイドが感心する。
「これからの主食になりそうね。」
リズが微笑む。
新しい家とともに、彼らの食生活も豊かになりつつあった。ジャガイモは、これから彼らの食卓に欠かせない食材となるだろう。




