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光を求めて  作者: kotupon


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新しい生活に向けて

長い旅路を終え、ようやく手に入れた物資を目の前に並べると、自然と笑顔がこぼれる。


 「さて、何を買ってきたか確認しよう」


 シマが声をかけると、皆が興味深そうに荷物を覗き込んだ。


 「まずは袋を20枚と皮袋を30枚。これで食料や水の運搬が楽になる」


 「皮袋は水を入れても大丈夫なの?」

 メグが不安そうに皮袋を手に取る。


シマは頷いた。

 「大丈夫だ。しっかり処理されているし、水漏れの心配もない」


 メグは安心したように皮袋を撫でる。


 「それから、食器類と裁縫道具類。あとは小麦10kg、塩9kg、砂糖2kg、胡椒1kg分を買った」


 「塩がこれだけあれば、ちゃんとした燻製肉が作れるわね」

 ノエルが満足げに頷く。


 「料理の味付けも広がるわ」

 エイラも嬉しそうに塩の袋を撫でる。


 「布と服も買ってきたぞ」


 リズが布の束を手に取り、嬉しそうに微笑んだ。

 「これで丈夫な防寒着を作ってあげるわ。洋服や布団も作れるわね」


 「大きな袋を20枚買ったおかげで、これからの採取もはかどるわね」

 ケイトが袋を広げて言う。


 「獲物なんかも運びやすくなるわ」

 サーシャが頷く。


 「武器も買ったぞ」

 シマが続けた。

 「槍4本、斧3丁、剣8本、盾3枚、ナイフ10本、矢を5束(1束10本入り、矢羽根付き)、鋸2本、鍬3本、スコップ5本、ハンマー2本、包丁2本、研ぎ石1つ」


 「おお~! これが新しい剣か!」

 ザックが興奮気味に剣を手に取った。


 「いかにも切れそうな感じだな!」

 クリフとフレッドも剣を抜き、光る刃を眺める。


 「ところで……」

 サーシャが首を傾げた。

 「あれ? 弓はないの?」


 「それなんだけど……」

 シマは少し気まずそうに答える。


 「武器屋で見た弓が、オスカーが作ったものよりも劣っているように見えたんだ」


 「え? そうなの?」

 オスカーは目を丸くした。


 シマ、ジトー、ロイド、トーマスの四人が頷く。


 「へ~、すごいじゃない!」


 「やるわね、オスカー!」


 皆が口々に褒めると、オスカーは照れくさそうに笑った。

 「…えへへ、そうかなあ~」


 「弓の代わりにと言ってはなんだが、矢を5束買ってきたぞ」


 シマが取り出すと、興味津々に皆が覗き込む。


 「お兄ちゃん、これ羽がついてる」

 メグが矢を手に取って言った。


 オスカーも真剣な表情で見つめる。


 「確か……羽がついているのは、飛行方向を保つためじゃなかったか?」


 「別に、羽がなくても狙ったところに撃てるけどね」


 ケイトがそう言うと、オスカーがじっと矢を見つめた。

 「なるほど……じゃあ、この矢を参考にして、さらに精度の高い矢を作れるかもしれないね」


 「あら、それは楽しみだわ!」


 皆が期待に満ちた笑顔を浮かべた。


 こうして、シマたちは手に入れた物資を確認し、次なる計画を立てるのだった。


シマは大きな袋の中から、くたびれた布の端切れを取り出した。

それは何の変哲もない古びた衣服のように見えたが、慎重に広げると、中にはびっしりと文字が記されていた。契約書だった。


「エイラ、これを見てくれ。」


シマが手渡すと、エイラは不思議そうに受け取り、目を走らせた。

しかし、次の瞬間、彼女の表情が驚愕に染まる。


「…ブラウンクラウンが、2金貨!? 嘘でしょ?」


その声に、他の仲間たちも興味を引かれ、エイラの覗き込む契約書に視線を移す。


「間違いない。ブラウンクラウンを2金貨で取引をした。」


シマが頷くと、エイラは契約書を再確認するように何度も目を通す。


「でも、どうしてそんな値段に…? 確かに美味しいけど…。」


「原因は乱獲だ。ある年を境に、採取できなくなったらしい。それに、最近になってその効能が正しく認識された。結果、価値が急騰したんだ。」


シマは淡々と説明を続ける。


「ブラウンクラウンは、世界中の美食家たちが欲してやまない極上の食材になっている。味は言うまでもなく最高級。スープにして煮込めば、極上の一品になる。」


「でも、それだけでそんな値がつくの?」

ケイトが疑問を投げかける。


「それだけじゃないんだ。」

シマは契約書を指でトントンと叩きながら続ける。


「これにはとんでもない効能があるらしい。滋養強壮、健康促進、成長促進、さらに強靭な身体作りに役立つ。それに病気にもかかりにくくなるそうだ。」


「……。」


仲間たちは一様に驚き、顔を見合わせる。


「え、つまりさ…」

クリフが口を開く。

「俺たちって、強いのか?」


「さあ、わかんねぇな。」

シマが肩をすくめる。


「確かに俺たちは日々ブラウンクラウンを食べてる。でも、それがどこまで影響してるのかは分からない。ただ、一つ言えるのは――」


「これからも食べ続けたら、どうなるのかしら?」

エイラが興味深そうに呟く。


「気にしなくてもいいんじゃねぇか?」

シマは腕を組んで言う。


「弱いよりは強いほうがいい。それに、無敵になるわけじゃない。人間である以上、限界はある。過信するなよ。」


「ふーん…。」

サーシャは腕を組んで考え込んだ。


「それと、取引相手の商人はダミアンってやつだ。ノルダラン連邦共和国で小さな商会を持っているらしい。」


「へえ、その商人が直接教えてくれたの?」


「ああ。奴は取引に詳しかったし、ブラウンクラウンの価値もよく知っていた。」


「……栽培してみるのはどうかしら?」

エイラがふと口を開く。

「実験的に育ててみるの。」


フレッドがニヤリと笑った。

「もしそれがうまくいったら、俺たち、大金持ちじゃん!」


だが、シマは首を横に振る。

「いや、そう簡単にはいかない。小出しにするべきだ。」


「どうして?」

リズがシマの顔をじっと見つめる。


「その通りね。私もシマの意見に賛成。」

エイラもシマと同じ考えのようだ。


「なんで?」

フレッドが納得いかない様子で尋ねる。


「…私たちの身が危険にさらされることになる?」

サーシャが不安げに呟く。


「そういうことだ。」

シマは静かに頷いた。


「もし、この場所でブラウンクラウンが自生していることを知ったどこかの国のお偉いさんは、どう行動する?」


皆が沈黙する。


「根こそぎ奪っていくだろうな。」


「……軍隊を出すかもしれない。」

ロイドが呟く。


「そういうことだ。俺たちはまだまだ弱い存在なんだ。」


部屋には静けさが漂う。


「とりあえず、実験的に栽培ができるかどうかは試すが、ブラウンクラウンは慎重に扱う。それでいいな?」


仲間たちは次々と頷いた。


「よし、それなら今後のことをもう少し考えよう。」

シマの言葉に、皆が真剣な表情になった。



「家を拡張するか、もう1棟建てるか。俺たちも体が大きくなってきたし、この家だけでは手狭になってきた。それに合わせて柵も拡げる必要がある。」


「確かに狭く感じるようになってきたわね。」

エイラが頷く。


「今は道具もあるしね。鋸、鍬、スコップ、ハンマー、斧…。3年前と比べて僕たちがどれくらい成長したのかを試すいい機会かも。」

ロイドが言う。


「もう1棟作りましょう! ほら、私たち育ち盛りじゃない? 特にこの辺が…。」

サーシャが胸を強調して言う。

「シマがいやらしい目で見た!」


「お兄ちゃん!」

メグが怒る。キャーキャーと騒ぐ女性陣。


「これは早めに作ったほうがよさそうだな…。」


30分後、ようやく落ち着く。


「ところで、そのダミアンという商人は信用できるの?」

エイラが尋ねる。


「最初っから信用していない。」


「え?」

仲間たちが驚く。


「奴はただの取引相手だ。ノルダラン連邦共和国に商会があるのかも怪しい。」


「さすがね、シマ。」

エイラが微笑む。


「あの契約書を作ったのもシマなの?」


「ああ、そうだ。」


エイラは何か言いたげだったが、口をつぐんだ。


「そうだ、忘れてた。」

シマは袋からジャガイモを取り出した。


「それ悪魔の実じゃない!」

リズ、エイラ、ノエルが後ずさる。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん! それ何?」

メグが恐る恐る尋ねる。


「これはジャガイモだ。」


「違うわよ! 悪魔の実よ!」

ノエルが叫ぶ。


このままじゃ収拾がつかなくなると思い。

「明日食わせてやるから、勿論最初に俺が食って見せるからな。」


「本気で言ってるの? あんた、死にたいの!?」


「馬鹿! やめときなさい!」


エイラがシマの腕を掴む。

「今すぐ捨てて!」


帰ってきた日から騒がしくも賑やかな一幕であった。


ロイド、ジトー、トーマスは「帰ってきたという実感がするな」などと話していた。


夜は更け、明日からの新たな生活の準備が静かに始まっていくのだった。








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