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光を求めて  作者: kotupon


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買い物

 部屋の中で5人の男たちが話し合う。

   

シマは袋から別のものを取り出した。


 「……これは?」手に取るダミアン。

 ダミアンが目を見開き、驚愕する。

 「お、おまえッ、こ、これ……ブラウンクラウンじゃねえか……!」


 思わず声を震わせるダミアン。その反応にシマたちは顔を見合わせる。


 「……そんなに珍しいものなのか?」


 「ノエルは確かに稀少って言ってたが……」


 シマたちの無頓着な反応に、ダミアンは呆れたようにため息をついた。


 「…ハア~、お前ら、分かってねえな……」


 ダミアンは改めて説明を始めた。

 「世界中の美食家たちが欲してやまない極上の食材だ。味は言うまでもなく最高級。スープにして煮込めば極上の一品になる。そしてな、これにはとんでもない効能がある。滋養強壮、健康促進、成長促進、さらに強靭な身体作りに役立ち、病気にもかかりにくくなるんだ」


 「……へッ?」


 そんなたいそうなものだとは知らなかったシマたち。

思わず間抜けな声を漏らしてしまう。


 「……これって俺たち、ほぼ毎日三年間食ってたよな……?」

 ひそひそと話し合うシマたち。


 ダミアンは驚きの表情を隠せない。

 「お前ら……毎日、だと……? どこでそんなことが可能なんだ?」


 「まあ、それは……秘密ってことで」

 シマはニヤリと笑い、ダミアンの視線をかわした。

 気を取り直して。 

「……いくらで買い取る?」


 ダミアンはしばらく考え込んだ後、静かに言った。

 「2金貨だな」


 「……はぁ?」「 えっ?」「 へっ?」


 またもや間抜けな声を上げるシマたち。

 「……マジか?」

 「確かエイラは一銀貨って言わなかったか?」


 首を傾げるシマたちに、ダミアンは補足する。

 「数年前まではそのくらいの価値だったがな。だが、乱獲しすぎたせいで、ある年を境に採取できなくなったんだ。そして最近になって、その効能が認識されて、価値が急騰した」


 「……なるほどな」

 シマたちは考え込む。


 「……そういえば、俺たちの仲間って、みんな健康で風邪ひとつしなかったよな……」


 ブラウンクラウンを食べ続けていたことで、自然とその恩恵を受けていたことに気づき、驚くシマたち。


 ダミアンはシマたちをじっと見つめながら、考え込む。

 「……お前ら、一体どこでこれを?」


 シマは再びニヤリと笑う。

 「それも取引次第だな」


 ダミアンは舌打ちしながらも、シマの交渉術に舌を巻いた。

 「……お前、本当にただのガキじゃねえな」


 「どうだろうな」

 シマは肩をすくめながら、ダミアンの出方を待った。


 「……いいだろう。その情報も、金に変えられるかもしれねえからな」


  「じゃあ、とりあえず仮契約だ」


  シマが手を差し出すと、ダミアンは苦笑しながらも力強くそれを握った。


  契約の詳細が詰められていく。


ジャムは約200gで4銀貨、ブラウンクラウンは1株2金貨。

シマたちはダミアン以外には売らないこと、ダミアンが売りさばく相手に干渉しないことが約束された。


取引は3か月に1回、ジャムは最低5つ(約1kg)、ブラウンクラウンは最低でも10株。

場所はここノーレム街で、ダミアン本人以外の関与は認めない。


また、ダミアンはシマたちの存在を秘匿し、情報を漏らさない、詮索しないことを条件とする。

契約違反があった場合、違約金として30金貨の支払いが発生する。

ただし、不測の事態や命の危機などの場合は、双方の話し合いで対応を決めることとした。


  シマは持っていた古い衣服を破り、それらの項目をすべて書き込むと、自分とダミアンの名前を書き込んだ。

取引の際にはこの布を証として互いに見せ合うことで契約を確認する。


  「……お前、本当に何者なんだ?」


  契約内容を確認したダミアンが、改めてシマをじっと見つめる。


  「さてな?」


  シマはとぼけたように肩をすくめる。


  話がまとまると、シマは持ってきた商品を取り出した。

ラズベリージャム3つ、ブルーベリージャム3つ、ブラウンクラウン5株。それらをダミアンに手渡し、代金として12金貨と4銀貨を受け取る。


  「次に会った時に、悪魔の実の使い方を教える」


  シマは意味ありげに言った。あえて「調理」という言葉を使わなかった。


  「……悪魔の実?ああ、そういえばそんなものもあったな。次回、会う時の楽しみにしとこう。」


  ダミアンは行動へと移った。


  「こうしてはいられないな……」


  契約を終えたダミアンは、早速動き出した。

シマたちもまた、ダミアンが泊まっている宿に向かい、彼が持っていた「悪魔の実」――ジャガイモを引き取った。


  (これが、あのジャガイモか……)


  シマは手の中の芋をじっと見つめる。

前世では当たり前の食材だったが、この世界では全くの未知のものだった。


  「ダミアン、あんたは明朝に街を出るんだったな?」


  「ああ、国へ戻る予定だ」


  シマは静かにうなずく。


  「ドジ踏むなよ」


  それは単なる挨拶のようでありながら、彼なりの気遣いだった。


  ダミアンは苦笑しながらも、小さくうなずいた。


  ダミアンが去った後、シマたちは改めてジャガイモを確認する。

手触り、重み、そして香り──すべてが記憶の中にあるものと一致していた。


  「これ、本当にすごいものなのか?」

  ジトーがぼそりと呟く。


確かに、前世では日常的な食材だったが、今の世界では未知の食材。

それを扱うことができる彼らは、大きなアドバンテージを持っているのかもしれない。

 

 「帰ってからのお楽しみだな」


 シマはそう呟きながら、必要な物資をリストアップしていった。

現在の所持金は42金貨、7銀貨、1銅貨。限られた資金の中で、最大限の買い物をするためには慎重な選定が求められる。


翌日、彼らはまず日用品を調達するため、道具屋へと足を運んだ。


 道具屋の店主は初老の男性で、長年この街で商売を営んでいるらしい。

店内にはさまざまな生活用品が並んでいた。

シマたちは手早く必要な品を選び、店主に注文を伝えた。


 「袋を20枚、皮袋を30枚。それと食器類、裁縫道具類、小麦を10kg、塩を9kg、砂糖を2kg、胡椒を1kg分頼む」


 店主は素早く品を集め、カウンターに積み上げていった。


甕に入っていた小麦と塩は、皮袋へと移し替えてもらうことで、甕の代金を差し引いてもらう。

これにより、多少ではあるが節約することができた。


 「おお、これはなかなかの大口だな。ありがたい、ありがたい」

 店主は満足げに笑いながら、シマたちに品物を手渡した。


計算の結果、合計で約19金貨の出費となった。

店主は大きな商売ができたことで上機嫌な様子だった。


 次に向かったのは古着屋だ。


森の中での生活を考えると、服は重要な要素となる。

寒さを凌ぐための厚手の布や、身を隠すためのフード付きのローブなどを選び、合計4金貨分を購入した。


 「これで着るものにはしばらく困らないな」


 仲間たちはそれぞれ手に取った布を確認しながら、安堵の表情を浮かべた。


 続いて武器屋へ向かう。

ここでの買い物はシマたちにとって最も重要なものであり、慎重な選択が求められた。


 店内にはさまざまな武器が並んでいる。

見事な細工が施された剣や、重量感のある斧、鋭利な槍など、どれも一流の職人による品物だ。


 「槍を4本、斧を3丁、剣を8本、盾を3枚、ナイフを10本、矢を5束(1束10本入り、矢羽根付き)、鋸を2本、鍬を3本、スコップを5本、ハンマーを2本、包丁を2本、研ぎ石を1つ。それで頼む」


 シマの言葉に、武器屋の店主は驚いたような顔をした。


 「ほう、なかなかの買い物だな。だが、これだけの武器を何に使うつもりだ?」


 シマは軽く肩をすくめる。

 「狩猟と護身用さ。村のみんなに頼まれてな」


 店主は少し考え込んだが、特に詮索することなく品物を準備し始めた。

数分後、注文した武器がすべて揃えられ、シマたちは支払いを済ませた。

合計で19金貨。これで残金はわずか4銀貨となった。


 「弓は買わなくていいのか?」


 店主が尋ねると、トーマスが横から答えた。


 「弓なら自分で作る。」


 その言葉に店主は目を丸くしたが、すぐに笑いながら頷いた。

 「ほう、それは楽しみだな。お前たちの腕前を見てみたいもんだ」


 シマたちは大きく膨らんだ袋を抱え、それぞれの荷物を分担しながら店を出た。


 「さあ、これで買い物は終わったな」


 「荷物がパンパンだ」


 仲間たちはそれぞれ重い荷物を背負いながら、笑い合った。

限られた資金で、これだけの物資を揃えられたことは大きな成果だった。


 「今日のうちにノーレム街を出るぞ」


 シマの言葉に、仲間たちは頷き、街を出る直前に保存食、水を確保する。


足早に街の出口へと向かった。

こうして、彼らは深淵の森に向けて歩みを進めるのだった。



  




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