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紀州のドンファン殺人事件を推理する、その5(2021年5月2日・記)

 元妻は世間から夫殺しとささやかれ、姓を須藤早貴に戻して、住まいを転々と逃げるように変えながら、相続問題と闘っていた。そして今回の逮捕となった。誰もが、<やっぱり>と思っている。中には<そんなに上手く行くわけがない>とか<ざまぁみろ>と喜んでいる者もいる。

しかし、そんなに単純に理解して良いのだろうか?夫が死ねば4分の3の遺産が転がり込んでくる。一時は50億円とも言われていた財産はどんどん目減りしていたが、少なくとも13億円以上はある。約10億円が転がり込んで来る。幸助が「離婚する」と言い出した。<早く殺さないといけない>と貴方が早貴なら思うでしょうか?<動機がある>で片づけられるものでしょうか?


先ず出会いから結婚するまでをネット記事を参考に再現したいと思います。

須藤早貴は取巻きに相談していた。その内の1人は言った。

「いいなぁ。毎月の小遣いが100万円なんて夢のようだわ。それで、旦那が死んだら10億円の遺産が転がり込むのね」

「そんなの受けちゃいなさいよ。10年我慢すれば、又、若い男と結婚すればいいのよ。10年なら早貴は未だ32歳よ」

 おそらくこんなやり取りをしていたであろう。そして須藤早貴は野崎幸助に会う事にした。


野崎幸助はドンファンだった。しかし、若い女であれば誰でも良い、綺麗であれば良いと言う訳ではなかった。好みははっきりとしていた。早貴は自分似の理想的な容姿をしていた。幸助のプロポーズは熱かった。

「私は今まで4000人の美女に30億円をつぎ込んで来た男だ。しかし、そろそろ女遊びは辞めようと思っている。私は空港であなたに会った時から最後の人にしようと決めていたのです」


 早貴は空港の出会いを思い出した。足元に力が入っていない様子だった。しかし、その事もすぐに忘れていた。覚えておく何の理由もなかった。早貴は思った。<あの時より大分老けた感じがする。この人と夫婦になるの?>

早貴は幸助を見つめながら暫らく考えてみた。夫婦生活は全く想像できなかった。いつまでも沈黙しているのは変だ。何か言わなければ。早貴はとりあえず言ってみた。

「私、東京を離れたくない」

 幸助は少し考える為の間を置いて言った。

「好きにすれば良い。暫くは通いで構わないから、一緒に暮らそう」

「毎月100万円くれるのね。自由に使っていいのね」

「好きに使って構わない」

 おそらくこんな感じでプロポーズと商談が成立したであろう。


幸助は直ぐに籍を入れたいと言った。この時幸助には2つの事を考えていた。1つは彼女の気が変わらぬうちに、そして曖昧な気持ちを確実にすることだ。そしてもう1つは配偶者の成立だった。幸助は配偶者を作る事に特別のこだわりがあった。財産を相続させる相手を探していたからです。


 ここまでの想像に大差はないだろう。この時点で早貴に殺意はない。早貴は55歳の年齢差に戸惑っていただけである。むしろ毎月100万円の小遣いだけの方が成立しやすい話であったと思われる。ところが幸助は結婚する事にこだわっていた。


幸助には子供がいなかった。前妻とは離婚している。幸助から離婚を望んだのではなかった。女遊びの好きな幸助に嫌気をさして、妻の方から離婚されたのだ。幸助はショックだったであろう。当時数十億円と言う財産に未練もなく幸助を見限ったのだから。


幸助は真に愛する女に遺産を相続したかったのだ。幸助はその相手に相応しい女を思い浮かべた。それが空港で出会った須藤早貴だったのだ。ここで確認しておこう。須藤早貴が幸助に近寄ったのではない。幸助にシンデレラガールとして、過去のリストの中から最後の女として選ばれたのである。


 こうして奇妙な夫婦生活が始まった。幸助は身の周りの世話を全て家政婦にして貰っていた。早貴がすべき事は幸助の外交に付き合う事と、時々寝室での世話をする事だった。早貴は外交に付き合う事は楽しそうにした。しかし、寝室には近寄らなかった。言い訳をして東京に帰ってしまった。こうして口論が始まった。

「東京にいるのなら100万円は渡さない。離婚する」


 家政婦さんの証言などから、2人の間には100万円や、離婚の言葉が飛び交っていた。この事から、早貴が離婚になる前に幸助を殺害する事を考えたという説が出る。これは間違いであろう。早貴が本当に金を目的に結婚していたら、東京に住居を残すことはしないであろう。最初から結婚解除の原因を意識的に作る事は考えられない。相思相愛の結婚ではなかったので、早貴としては自分に忠実にふるまっただけだったであろう。若さの所為もあるが、むしろ正直な性格であると考えられる。

 一方、幸助がどんなに激しくののしったとしても、離婚するのが目的ではない。理想の夫婦関係を求めていたからである。そして理想の配偶者になってほしかったからである。そして、その要求は早貴にとって不可能なものではなかった。殺意の原因にはならないものである。他人には口論に思えても、対立する要素は存在していないのだ。幸助の要望に応えさえすれば、直ちに納まる話であるし、当面は小遣いさえ有れば良いのだから、ここまでに相続を急ぐ理由はない。つまり殺意はあり得ない。


 早貴は少しずつ幸助の家にいる日が増え、2階の幸助の寝室にも入る様になった。しかし、そこには男女の営みは無かった。77歳の幸助の身体は弱っていた。これは早貴自身の証言ですが真実だと思います。長年の夜遊びとアルコールの飲み過ぎがたたったのだろう。早貴にとっては介護をしているようなものだった。


ここから大胆な推理になります。幸助には金があった。少しじゃじゃ馬だが美女もいる。しかし、急速な衰えを感じた。少しも楽しくなかった。幸助は早貴に懇願した。

「俺をもっと楽しませてくれ」

早貴はそれなりに自分に言い聞かせて寝室にも入ったのだ。しかし、思い浮かべていたものではなかった。幸助が自分で楽しまない以上、早貴にはなす術が無かったのだ。それまで早貴に覚せい剤の知識があったかどうかは分からないが、快楽の為に覚せい剤を使うと言う会話があったのではないだろうか。


 警察の発表では、早貴がSNSで覚せい剤の事を調べ、密売人と接触した形跡があるとのことだ。だから早貴が覚せい剤を幸助の口に入れて殺したと推測される。この説には幾つかの無理がある。飲み物に含ませたのでは味が変わり、吐き出されてしまう。当時、家政婦さんがうどんを作ってから出かけた。しかし、うどん汁に入れたのでは飲み物と同じだ。うどんや具に混入させることは出来ない。第1、早貴が殺人を考えるなら咄嗟の考えで出来る事ではない。練りに練ってするなら、早貴しかいない時を見計らって実行する事は考えられない。それでなくても、第1相続権者で真っ先に疑われる身である。早貴以外の犯行でないとおかしい。もしも早貴の犯行であるなら少なくとも、家政婦が家に残り、早貴が出かけている状態でないとおかしい。ニュースで見た限り、2人とも幸助が死ぬと思っていたとは思えない。


次の推理に進もう。この事件にはイブの死が絡んでいる。イブの死を推理すると事件の全体像が推理できるのである。幸助には、もう1つの思いがあった。

身体の衰えと共に別れた前妻の事を思い出す。良い女だったと。しかし俺の女遊びに嫌気をさして出て行った。前妻を最後の女にしておけば良かった。前妻がクリスマス・イブに連れて来た犬のイブを前妻の代わりに可愛がっていた。そのイブが死んでしまった。犬の死を境に、幸助は身体も心も急速に弱って行ったのだ。証言ではイブの死に、憔悴仕切っていたとあるが、一過性のものではなかったと思われる。俺も潮時なのかも知れない。幸助はそう思ったのではないだろうか。


一方、幸助は相続権者と喧嘩をしていた。<全財産を田辺市に寄付する>と遺言書も残している。それは赤字で書いた、怒りに満ちた遺言書だった。田辺市に感謝を込めて寄府すると言うより、相続権者に相続はさせないの意思が込められていた。法定遺留分を受け取る配偶者も用意した。この感情の行き先に<嫌がらせに原因不明の死に方をしてやろう>があったのではないだろうか?<これが俺に残る最後の楽しみだ。紀州のドンファンに相応しい死に方だ>この考えが浮かぶと楽しくなった。幸助は「紀州のドンファン野望編」を出したばかりだ。自己顕示欲の強い幸助であれば十分考えられる。生き方が派手な人間は、死に方も派手にすると私は推理します。


事件の数日前に、幸助は早貴から覚せい剤を受け取っていたと考えます。早貴はそれを快楽の為に使うものと思っていたでしょう。幸助は早貴をベッドで抱きながら楽しそうに語っていたのでは?

「早貴、間違いなくお前が最後の女だ」



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