1 出会い
「やっぱり冷やかしか」
約束の時間から15分が過ぎて、3本目のタバコを灰皿に乱暴に押し付けた。今回は本物かもしれないと期待した自分がばかだった。
何度も裏切られ、それでも一縷の望みを抱いて続けてきた出会い系サイトだったが、そろそろ潮時かもしれない。
(だいたい本物のマゾなんているわけないよな)
いたとしても自分が巡り合える確率は、それこそ宝くじに当たるようなものだろうし。
見上げた黄昏の空は、今の隆志の気分を映すかのように、陰鬱な灰色の雲に覆われていた。
隆志がその女性と初めてメールしたのは2週間前のことだった。「優しい、恥ずかしがり屋のM女さんはいませんか」という隆志の投稿に「気になります」とコメントしてきたのが、しのぶと名乗る女性だった。
「アラフォーの既婚者です。経験はありませんが、そういうことに興味があります。実際にお会いするのは怖いので、まずはメールでいろいろお話したいです……」
という希望だった。
「調教して欲しいの?」と聞くと、「そういう気持ちも、少しあります」という返事が返ってきたのは3日後だった。
それほど期待もせずにとりあえずメールで調教することにしたのだが……
(しのぶは本物だ)と思った。
手始めに「ヌードが見たい」というと
「これで許してください」とスカートを捲った下着姿のシャメが送られてきた。
「今日一日、ノーパソで過ごしなさい」と命令してみると
「恥ずかしいです⋯」と言いながら、その夜
「Gパンでショーツ履いてないので、クリトリスが擦れて気持ちよかったです」というメールが届いた。
「ほんとにノーパソかどうか分からないな」と返すと
「どうしたら信じてもらえますか」と言う。
「証拠のシャメ送ってきなさい」
ダメ元で言ってみた。返事はない。しばらく待っても応答はなかった。
(だよな)
諦めて寝た。
翌朝、メールが届いていた。驚いた。しのぶからのメールには、スカートを捲りあげたノーパソの股間が写っていた。慎ましやかな和毛に、品のようなものを感じた。
「隆志さん、これで信じてもらえますか?」
「ああ、信じるよ。でも隆志さんじゃない、隆志様だろ。調教して欲しいんだったら、ご主人様、しのぶの調教よろしくお願いします、ってちゃんとお願いしなさい!」
返事がきたのは、1時間ほど経ってからだった。
「申し訳ありません、隆志様。私を調教して頂けますか」
「しのぶが、僕の忠実な奴隷になると誓うんならね」
その夜、返事は返って来なかった。
翌朝、
「お返事、遅くなってすみません。しのぶをご主人様の奴隷にしてください」
というメールが届いていた。