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案内された解体場はギルドの地下に存在していた。だが、広さは地上にあった修練場と大差ないほど広い。


その中でもある程度開けた場所まで来たところで男は口を開いた。



「ここならクラーケンだって余裕だぜ。さあ拝ませてもらおうか」



得意げに言うだけあってここならどのようなサイズのモンスターが持ち込まれても対処できそうだ。



「じゃあ出しますんで、ちょっと離れてもらってもいいですか?」


「はいよ」



一緒についてきていた見物人たちも遠巻きにニヤニヤとこちらを伺っている。



まあ、気持ちはわかるんですけども…。



ドラ〇もんの四次元ポケットよろしくアイテムボックスを呼び出すと、空間に存在している裂け目へと手を入れる。


頭の中で思い浮かべるだけで取り出すことができるのだから便利なものだ。



「よいしょ」



ドシン―爆音とちょっとした地震を発生させながらその場へと召喚されたジャイアントワームの亡骸。


ミミズというよりは巨大なゴカイと言った方が似つかわしいそれは、異世界換算で二週間以上は経っているにも関わらず腐敗臭などはない。


これもアイテムボックス内にあるモノは不変であるという特質のおかげだろう。


時間経過や温度変化なども起きないのだから、魔道具様々である。


っと、後ろを振り返ってみると皆開いた口が塞がらないといった状態であった。


解体士の男だけが目を見開いているだけだったことから、少しは信憑性を感じていたのだろうか。



「あの、解体いいですか?」


「あ、ああ…。ちょっと今は見積もりが出せねえから後日来てもらうってことでいいか?」


「はい、俺も今は手持ちがないので一週間後に来ます。解体した素材は全部売却しますので、解体費はその中から差し引いてもらうってことで大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ」



商人ギルドにわざわざ赴いて値段交渉なんて面倒くさいことはやってられない。全てお任せする。


そもそもこの世界でのお金など今のところ必要としていないのだから。



まあ、これで俺の存在を目立つ形でアピールするという今日の目的は達成されたはずだ。


今から一週間後の俺の立場がどうなるのかある意味憂鬱ではあるが、この居づらい場所からはさっさとお暇させて頂こう。



「なんの騒ぎだ!」



見物人を掻き分けながら姿を現した男性に周りから口々にマスターという声が掛かる。


どうやらこの人がここのギルドマスターなのだろうか。


荒くれ者のハンターたちを従えているとは思えないほど線の細い体型をしている。だが、凛とした雰囲気と数多くの修羅場を潜ってきた者にしか放つことができない眼光が俺の中の信頼度をグンと引き上げた。



「これはジャイアントワーム…!ジェコブ!誰が持ち込んだんだ!?」



男はジャイアントワームを一目見るなり解体士の男―ジェコブへと声を張り上げる。



「落ち着けよオーウェン。お前が焦ってるの見て逆に冷静になってきたわ。そこの坊主だよ」



ジェコブは親指で俺を指し示す。すると必然的にオーウェンと目が合う。


銀髪に隠れていて片目しかわからないが、美形なのは間違いない。


腰に下げた細剣レイピアが相棒だろうか。白く磨き上げており、地下の明かりすらも鋭く反射させていた。



「君、名前は?」


「…アキラです」



人に名前を聞くときはまず自分から、とでも言ってやろうかとも思ったがこれ以上面倒が増える要因を極力減らした結果、素直に名乗ることにした。



「失礼した。ヴァハムギルドのギルドマスターに就かせてもらっているオーウェン・ヴェンハイムだ。少し話が聞きたいのだが、いいかな?」



落ち着きを取り戻したのか、それとも俺の心理を読んだのかそう名乗ってくれたオーウェンは俺との会談を持ち掛けてきた。


なんとなく今のやりとりでこの人物が腕っぷしではなくカリスマ性でその地位にいることを理解する。そして、この提案が断れないということも。



「わかりました」



思っていたよりもトントン拍子に話が進んでいくことに臆するが、遅かれ早かれこうなっていたと気持ちを切り替える。



「では、案内しよう」



俺は今度はギルドマスターに付き添われ、解体場を後にした。


先ほどと違うのは見物客がいないことだった。

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