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この橋が堕ちれば 〜 ファンバル原子力発電所

 アサルトパイソンにおける激戦は一瞬にして決着がついた。ウェリアン軍がエスカラン拠点のジャミング塔を破壊することに成功したことを機に、大量の近距離ミサイルがエスカラン軍駐屯地を襲撃。直後のエスカラン軍による反撃ミサイルは虚しくもほぼ全弾が撃ち落とされ、エスカラン駐屯地はあっという間に陥落した。エスカラン軍は悔しむ暇もなく撤退を決定。ウェリアン軍は確実な拠点確保のために多数の軍人を緊急派遣し、アサルトパイソン地区の確保をほとんど確実なものとした。今まで数十年に渡って静かな荒野だった地区に大量の人が佇む様子は実に奇妙な景色であった。しかし、このウェリアン軍によるアサルトパイソン地区過剰防衛作戦は激痛の失態となるのであった。いや、この瞬間を隙であると見切って、奇襲に出たエスカラン軍が鋭かったと評価すべきであろうか。エスカラン軍はアサルトパイソン地区エスカラン駐屯地の陥落を知るや否や、中洲地帯海洋部の奇襲を計画。アサルトパイソン地区の防衛隊の人数が殆ど最大になった日に中洲地帯海洋部を大量の人員で制圧。完全に兵力不足に陥ったウェリアン軍は無情にも海洋部の殆どの領域を失い、遂にオリヴァ川下流ですらエスカラン軍の進軍を抑えられない状況となってしまった。この好機を逃すことはできないエスカラン軍。ついにウェリアン共和国の領域内への突入も考慮に入れることにした。実はウェリアン共和国オリヴァ川下流域ファンバル地区には極めて脆弱な急所があった。それがファンバル原子力発電所である。ウェリアン共和国はワンドル合衆国から技術支援として、そして陰では原子爆弾の極秘研究所として原子力発電所を構えていた。原子力発電所は冷却に海水を使うことから海岸に作られる。地続きの国境が殆どを占めるウェリアン共和国には原子力発電所の設置箇所はごく限られた地区のみであった。建設当初はオリヴァ川に対してある種の信仰心を持っている民衆から猛反対を受けていた。しかし原子力ビジネスの強大さが示されると、金銭感覚が極めて敏感な文化を持つウェリアン国民は建設賛成模様となり、ファンバル原子力発電所が完成した。地盤がしっかりとしているウェリアン共和国では地震や火山の心配は殆どない。そのため平和の内には大きな国益を産む施設であった。しかし破壊活動が行われるとなれば話は別であり、放射能汚染による自滅すら大いに有り得る超危険地帯になってしまった。逆にエスカラン軍からすれば、ファンバル原子力発電所をある種の人質に使わない手はないのだ。エスカラン軍はかなりの軍を派遣する、ファンバル原子力発電所の制圧を目的とした上陸作戦を決定したのであった。すでに中洲地帯下流域の支配権を失ってしまったウェリアンは、万が一にもファンバル原子力発電所を奪われてしまっては、いよいよ敗北の可能性すら見えてしまう。エスカラン軍の侵略を全力で止める必要がある。ところで、このような状態ではあるが、ウェリアン軍にとっての幸運もある。それはエスカラン軍がミサイル等の大型破壊兵器を用いて、即座に原子力発電所を破壊される可能性は極めて低いことである。というのも、リリアン川下流域はミゲラ一族という、比較的レブリ一族と血縁が近い公族が支配しているため、放射能汚染の流れ弾を喰らう訳にはいかないのだ。事実、エスカラン軍はオリヴァ川下流にある大きな架橋であるシルバーラインブリッジの制圧を原子力発電所制圧の前段階作戦として立てていた。この架橋の死守はウェリアン軍にとって急所を守るための絶対条件である。ウェリアン軍は限られた戦力でシルバーラインブリッジのゲートシステムを襲いくるエスカラン軍から死守しなければならない。


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