エスカラン王国
エスカラン王国は独裁王族レブリ家が掌握する国家である。社会主義国を称しており、その背後には社会主義国である大国アーラス連邦がある。リリアン川の恩恵を受け、河川付近は農耕地帯として利用される。そこから枝分かれしている川がいくつかあり、水の豊富な国である。一方で、その下流にある港の水は酷く汚染されており、漁業ができる状態ではなく、専ら軍港として用いられている。その汚染の原因は川の下流域にある銅鉱山とその精製工場である。銅産業はエスカランの経済を支える重要な基盤となっており、その全ての所有権をレブリ家が私有財産として保有している。豊富な鉱石資源に加えて、上流域の農耕地域と豊かな国に見えるかもしれないが、国民は余裕のある暮らしをしているとは言えない。複数の契機が存在するが、その内の一つは前の支配王族の話になる。
エスカラン王国は以前までギャラルー王国と呼ばれ、マサダフ家が掌握していた。マサダフ家は三百年という長きに渡ってこの国を治めていたが、最後に王となったリヒャリー二世が後に邪鬼王と称される程の悪政を行った。政府が力をつける為に、国内全ての物をマサダフ家が管理するという名目で、国家の名の下、略奪、誘拐、思想統制を行い、交易に役立つ資源は取り尽くさんとしていた。初期は試験的に中央都市のみで行われていた。いよいよその悪魔の手がリリアン川下流付近の地域にも伸びようという時に、銅山を保有していたレブリ家がその地域の警察官や軍人に賄賂や革命後の優遇を提案することによる、事実上の買収をし、「燦々たる太陽」を意味するエスカラン軍と名付けた。その目的はギャラルー全域の政権奪取であった。そもそもレブリ家はギャラルー王国立国の五十年後に血を分けた公族である。そんな公族らの中でも特にカリスマ的素質のある一族でありながら、その誰もが瞳の奥で支配力の強化を見据えていた。中央政権のマサダフ家への忠誠が高いことを悟るやいなや、距離的に中央都市から遠いところにある公族と手を組み、また治安維持に関わる機関に積極的に関わり、あわよくば転覆を狙っていた。今回のリヒャリー二世による悪政はその転覆には丁度良い大義名分であった。市民はリヒャリー二世への反発心もあり、レブリ家に賛同。太陽革命と呼ばれる急襲をエスカラン軍は仕掛けた。急襲に対応しきれないギャラルー軍は猛スピードで戦線を失ったが、皮肉なことに悪政のために強化していた軍が戦線を一部奪回、そこから十三年に渡って激戦が続いた。最初は国家という巨大な力を持っていたギャラルー軍が優勢を保っていた。しかし、リヒャリー二世による隣国侵略の企て(この企てが実際に行われていたものだったのか、それともエスカラン軍による情報操作であったのかは未解明である)を知った周辺国はエスカラン軍に協力。その協力国には当時のマザラスもあった。その結果じわじわと戦線を上げたエスカラン軍は最終的に首都ポーグー(現レブリ)を制圧。マサダフ家の人間は八親等に渡って処刑された。名実共に最高権力を手にしたレブリ家宗主のギャザロ一世は持ち前のカリスマ性によって、あっという間に国民の支持を集めた。血気盛んな一族が君主を治める以上、ウェリアン侵攻は当然の流れと言える。