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概要

 地球の世界情勢は、依然として不安定なままである。一九八〇年、二つの小国が戦争を始めた。東側はレブリ一族が支配する社会主義独裁国家のエスカラン王国。西側は資本主義共和国家のウェリアン共和国である。二国間は二本の川が平行に流れ、中洲は十キロメートル弱である。エスカラン王国側のリリアン川、ウェリアン共和国側のオリヴァ川の上流には十カ国に跨る巨大なライヤン山脈が鎮座する。ライヤン山脈は豊富な山の恵みをもたらす一方で、難所が多く、ベテランの登山家でも遺骨で帰ることを覚悟しろ、と言われる程の苛酷さで知られる。よって、この地域の歴史は中洲の奪い合いの歴史であったとも言える。一九一〇年に開戦し、一九二〇年に集結した第一次地球大戦の際に、最大の社会主義国であるアーラス連邦と最大の資本主義国であるワンドル合衆国の仲介によって中洲は非戦闘地帯とする条約が結ばれた。それからしばらくは睨み合いはあったものの、中洲で大きな事件が起こることはほとんどなかった。

 しかし一九七七年のことである。ワンドル軍の哨戒艇が隣国でアーラス側の国であるバジョラ共和国の海賊船によって公海上で襲撃され、乗船していた軍人二十六人と政務高官一人が殺害されるという事件が発生した。ワンドルは即座に応援の艦隊を送り込んだ。その結果、海賊は乗組員だけでも二百人にも及ぶ大規模な組織であったことが判明した。追い詰めたワンドル合衆国はすぐさま海賊船に反撃。流石の大規模海賊であっても本気の軍に勝てる訳はなく、間もなくして船は沈没。生き残った乗組員も残らず捕縛され、ワンドルへと連行されることになった。この一連の反撃であるが、その場所がバジョラの領海内であったのだ。反撃時点ではバジョラ軍は気づかなかったものの、沈没船の位置からその事実が知れ渡った。これについて、バジョラ政府はワンドルを強く非難。対するワンドル側も海賊船の取り締まりが緩かったのではないか、と強く反発する形となった。バジョラ政府は言葉では伝わらないようだ、と言わんばかりにバジョラ近くにありながらワンドル領であり、ワンドル軍基地として機能しているサラナ軍港へ威嚇攻撃を行うことを発表し、実行に移した。その時間差は僅かに五分であり、軍港にあった数隻の船が沈没することとなった。ワンドル政府もこれに対して報復攻撃を発表。両国の領域が存在するカタリー島の支配権を奪い合う形で戦争が起こった。第三国の市民から見れば、契機はワンドル政府の過剰な海賊への反撃行為である。しかし、この海賊は実質的な運営権をバジョラの諜報機関が握っている、いわば「お抱え海賊」であり、いくら哨戒艇とはいえ、軍艇を襲撃することができたのは国のバックアップがあったからであった。そしてバジョラ政府の真の狙いは火山島とも称されるカタリー島に豊富に眠っている鉱山資源の奪取であった。ワンドル合衆国もその目論見に気付きつつも、同じくその鉱山資源は垂涎の財宝である。あえてその海賊の行為に乗っかり、反撃の覆面をしてカタリー島を一方的に占領しようとしていたのである。それがカタリー島戦争である。しかしそれが即座にワンドルとアーラスの関係にヒビを入れたわけではない。そもそも隣国であるバジョラとワンドルは例によって非常に仲が悪い。そこにアーラスは関係なく、寧ろバジョラの国教であるヴァーズィー教は聖典の内容を比較的過激な解釈をする例が多く、ヴァーズィー教徒がアーラスで起こした無差別殺人事件も数件あり、あまり良い感情を持っていない。そのため、アーラスにとってカタリー島戦争は対岸の火事であった。ところが、このカタリー島戦争に目をつけた国があった。それがエスカラン王国である。エスカランはウェリアン共和国の鉱物資源を狙っていた。ワンドル軍が自国の戦争で必死になっている最中であれば、同盟国への支援は遅れるのではないか、と考えたのである。同盟国であるアーラス政府からしても、最大の敵であるワンドル合衆国が、予定以上に長引いている戦火にあるこの状況を、上手いこと利益にすることはできないだろうか、と考えていた。ここでエスカラン王国に恩を売っておけば、後々に金銭なり軍事力なりで見返りを期待することができるかもしれない。そこで、アーラスはエスカランへの支援を決め、エスカランは本格的にウェリアン共和国へ戦争を仕掛けることに決めた。

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