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私の婚約者は、いつも誰かの想い人  作者: キムラましゅろう


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8/22

従兄

魔法学校が休みである週末の午後。


メグルカは自室のドレッサーの前にいた。

午前中に課題や学校側に提出する書類の諸々を片付けて、午後からはレイターと映画に行くのだ。


メグルカはこの日のために母に教えて貰いながら縫った自作のフレアスカートを身につけた。

ペールグリーンのミモザ丈スカート。

丸襟の端がスカラップになっているオフオワイトのブラウスに、首元はスカートとお揃いのペールグリーンのリボンを結んだ。


髪は娘らしくすっきりとポニーテールに結い上げ、軽く毛先を巻いて動きを出す。

髪を飾るリボンも同じペールグリーンで統一感を出した。

そして学生らしい範囲内で薄くメイクもする。


「うん、いいんじゃないかしら」


母が娘時代に使っていたというドレッサーの前でメグルカはぐるりとターンをして、全身をチェックして頷く。


最後にエナメルのバックを持ち自室を出て階段を降りていると、

「よぉ。(めか)しこんで、これからデートか?」とメグルカに声をかけて来る人物がいた。


メグルカは声の主に視線を巡らせる。

すると今メグルカに声をかけた従兄のロワニー・スミスが階下に立っていた。


「ロゥ兄さん!」


久しぶりに会えた従兄の名を呼び、メグルカは嬉しくて急ぎ階段を降りる。


「おいおい、そんなに慌てて降りたら落ちるぞ。相変わらずお転婆だなぁ」


ロワニーはそう言いながら階下で笑みを浮かべて待ってくれている。

メグルカは少しツンとすまして見せた。


「あら、私もレディと呼ばれる年頃なのよ?いつまでもお転婆なんかしていないわ」


「ははは、そうだった。メグルカも魔法学校の三年生なんだもんな」


「そうよ。最上級生になったんだから」


「この前までおしゃぶりを咥えて人形を抱いていたのに」


「もう!いつの話よ!」


メグルカはポカスカと従兄の肩を叩いた。


ロワニーは父の兄…伯父の息子でメグルカより五つ年上の二十二歳だ。

父や伯父や叔父、その他の従兄弟たちと同じくハイラントの正騎士として王国より剣を賜っている。

今は第二騎士団に籍を置き、国境を守る剣と盾として任に就いていた。


スミス家の男たちはみな生粋の騎士で、強く優しく逞しくそして礼を重んじる騎士道精神が服を着て歩いているような者ばかりであった。


幼い頃から父や彼らを見て育ったメグルカはある意味、それが慣れ親しんだ理想の男性像でもあったのだ。


婚約者のレイターは騎士ではなく魔術師だが、彼の精神こころも騎士道に近いものがあるのではないだろうか。

昔は女の子みたいにか弱く繊細だったレイターだが、きっとメグルカの父と接しているうちに感化されたのかもしれない。


「あはは。すまんすまん。それで?今日は婚約者とデートか?」


ロワニーがオシャレをしているメグルカを見てそう訊ねた。

メグルカは少し眉を下げて答える。


「うんそうなの。前売りチケットを買ってる映画を観に行くのよ。でもロゥ兄さんの休暇と重なるなんて残念だわ。東の街のお話を聞きたかった」


「お、それなら今日は婚約者ではなく俺と過ごすか?婚約者はいつでも会えるが俺とは久しぶりだろ?」


「えぇ?」


いくら幼い頃から可愛がってもらっている従兄弟だとしてもそれはない。

レイターと天秤にかけられるものではないと返事をしようと思ったその時、


「いつでも会えたとしても二十四時間ずっと一緒にいられるわけじゃないんですから。今日のメグには今日しか会えなんですよ」


とそう言いながら、レイターがスミス家のリビングに入ってきた。



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