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私の婚約者は、いつも誰かの想い人  作者: キムラましゅろう


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22/22

エピローグ 俺の婚約者はとても素敵なひと

「レイ、メグちゃんとの正式な婚約が決まったよ。今までは軽い口約束程度のものだったけど、これで二人は正式な婚約者だ」


レイターが五歳の時に、自室で本を読んでいる時に父からそう告げられた。



同じ年に生まれたレイターとメグルカ。

仲の良い父親同士が生まれた当初から将来は二人を婚約させようと何となく言い合っていたのだそうだ。


そしてレイターとメグルカが五歳になった頃にそろそろ正式にという話になったらしい。


レイターは読んでいた本を閉じ、父親に答えた。


「うんわかった。ぼく、メグのことがだいすきだからいいよ」


もの心つく前から一緒に居るメグルカ。

穏やかで優しくて。でも王国の正騎士のように正義感強くカッコいい女の子。

レイターにとってメグルカはまるでヒーローのような存在であった。


本ばかり読んで、運動が苦手でヒョロヒョロとしたレイターをバカにすることなく、いつも近所のイジメっ子から守ってくれていた。

そんな優しくてカッコいいメグルカのことがレイターは大好きだったのだ。

そのメグルカが将来のお嫁さんになってくれると聞いて、五歳のレイター少年は天にも昇るような気持ちになったのであった。


だけどその気持ちを急降下させる発言を、ある日メグルカの従兄であるロワニーにされてしまう。


「お前のような、女に守られてヘラヘラしてるカッコわるいヤツにメグルカはまかせられない。メグルカのこん約しゃを名のるなら、メグルカを守れる男になれ!ふさわしい男になれ!そうじゃなきゃメグルカはわたさない!」


ショックだった。

女の子に守られてヘラヘラしていると言われたことも、カッコ悪いと言われたことも。

そして婚約者を名乗る資格もないと言われたことも。


でも考えてみればその通りだ。

メグルカは女の子で、本当なら守られるべき存在なのだ。

なのにいつもレイターを守るために髪を振り乱し、スカートを汚してレイターの代わりにイジメっ子と戦ってくれている。

自分はそれをメグルカの後ろでハラハラと眺めているだけだった。


いつまでもこんなことではダメだ。

いつかメグルカに愛想を尽かされてしまう。

でもどうすれば?運動は苦手で体力もない。

とりあえずランニングや体操をはじめてみたけれど、思うような体力づくりは上手く進まなかった。

それなら魔術で強くなろうと考え、レイターは様々な本を読み漁る。

が、結果は自身の魔力量では大した術は扱えないと解ったことと、以前にも増して読書量が増えてモヤシっ子に拍車がかかったというだけであった。


───だけどぼくのおじぃちゃんはとても“くらい”のたかいまじゅつしだったらしいし……


その高位魔術師であった祖父(既に鬼籍の人)に生前言われたのだ、

「レイちゃんには潜在的な魔力が眠っているぞ」と。

それが引き出せるかどうかはレイター本人次第なのだと。


───うーん……どうしたらいいんだろう。おじぃちゃんがいてくれたらなぁ。


残念ながら父は低魔力保持者で、普通の文官であった。


そうやって思い悩み、手をこまねいている間に月日は過ぎ、ある日メグルカの頬に喧嘩相手の爪が当たり彼女が怪我をしてしまった。


血が薄らと滲むメグルカの頬を見た瞬間、レイターは全身が凍りつく思いがした。

それと同時に自分が不甲斐ないばかりに大切なメグルカに傷を負わせたことへの怒りがふつふつと湧き上がる。

その相反する二つの感情がない交ぜになり、レイターの中で何かがパチンと弾けた。


腹の底から力が這い上がってくるようなそんな不思議な感覚。

()()がレイターの望みを叶えてくれる、なぜか直感的にそう思ったのだった。


レイターはメグルカの傷を治したい一心で彼女の頬に手を当てて祈った。


───治れ、治れ、治れ、治れ……!


そしてレイターは、生まれて初めて用いた魔術でメグルカの頬の傷を綺麗に消し去ったのだ。

本で読んで原理だけは知っていた治癒魔法を、衝動的に引き出した潜在的な(眠っていた)魔力を使って。


メグルカの傷を癒せた喜びと魔術が扱えた高揚感でいっぱいになるレイターだったが、

その時メグルカが「レイってすごいのね!ほんとうにありがとう」と言って笑ってくれたことが何よりも嬉しかったのであった。


そしてこのことはあっという間に知れ渡り、レイターは一気に皆の関心を引き寄せる存在となった。


神童だと未来の大魔術師だと騒ぎ立てられ街の魔法塾を紹介された。


魔法や魔術を学ぶことに異論はない。

これでメグルカを守れる(すべ)を身につけることが出来る。


だけどそれだけではダメだ。


魔力が突然枯渇したら?そうはならなくても魔術の使用を禁止された区域(エリア)は至る所にある。

その場所に居る時に危険に見舞われて、魔術を用いらずにメグルカを守ることか出来るのか。

答えは(いな)である。


レイターはもう二度とメグルカを危険な目に遭わせないと、荒事には触れさせないと決めたのだ。

ならば自分が魔術以外にも力をつけなくてはいけない。

運動が苦手だとか日和ってなどいられない。

メグルカの血を見るようなことは、もう二度とあってはならないのだから。


レイターは今までの自分を猛省し、変わる努力をする決意をした。


騎士であるメグルカの父に剣術や体術を指南して欲しいと頼むと、彼は喜んで引き受けてくれた。

「メグを頼むぞ」とそう言って。


そうしてレイターは、メグルカを守れる存在になるべく己を鍛え、研鑽を積み重ねてきたのだ。


メグルカにとって一番の男になれるように。

彼女の隣に並び立つ、婚約者として相応しい男になるために。


騎士の一族の中で育ってきたメグルカの理想のタイプは騎士道精神を持つ者だ。


強く、雄々しく逞しくありながら物腰は柔らかく紳士的な男。

他者に対し分け隔てなく親切に接することができる、弱きを助け強きを(くじ)く。

そんな男たちがメグルカの周りには沢山いた。


だからそんな彼らに一歩でも近付けるように、レイターは自身の性格の改変にも力をそそいだ。

(まずは一人称を“僕”から“俺”に変えてみたりして)


そしていつしか時が経ち、レイターが変わっていくのと同時に心無い者たちが“棚からぼた餅婚約”だとか“格差婚約”だとかメグルカに対し、言い出しはじめたのだった。


魔法学校に入った頃から、そして二年の修了近くに一級魔術師資格を取得してからはその声がますます大きくなっていった。


それを耳にする度に、レイターはそれは違うと何度も否定し続けたのだが、人は自分が認めたくない事実から目を逸らすものらしい。


───くだらない。愚か過ぎる。

むしろ棚からぼた餅なのは俺の方だ。メグは幼い頃から頭が良くて可愛くてなんでも器用にこなせる凄い女の子なんだ。

そんな彼女と釣り合う男になりたくて努力してきたんだ。それなのに……。


皆が認めるレイター・エルンスト。

皆が憧れるレイター・エルンスト。

それらは全て、婚約者であるメグルカ・スミスのために努力した結果であった。


「俺の婚約者はとても素敵なひとだから」


だからレイターは学校でもその場所以外でも憚ることなくメグルカへの愛情を示した。

ただ真摯に婚約者にだけに心を寄せる姿を隠すことなく皆に示した。

普通に利口な者ならそれで充分に伝わる。

レイターに想いを寄せても無駄であることと、二人の間に割って入ることなど出来ないということが。


だけどそれでも、残念ながら居るのだ。

そんな現実から目を背け、自分こそがレイター・エルンストに相応しいと勘違いをし、自惚れる女が。


そういった奴らは陰でコソコソとメグルカに嫌がらせをしたり、嫌味を言ったりして|タチ質が悪い。

一級資格を得た時に契約した使い魔(ガブ)に見張らせてはいるが、レイターの目を盗みメグルカに陰湿で不遜な態度をとるのだ。


もちろんその都度、相手には水面下もしくは大っぴらに制裁を与えてはいるが、そんな女がまるで羽虫が湧くように次から次へと現れ、いい加減辟易としていた。


いっそのこと冷酷で性格の悪い男になってやろうか……とも思ったが、それではメグルカの理想の男からかけ離れてしまう。

メグルカ以外の女にどう思われても構わないが(むしろ嫌われた方が楽だが)、メグルカに嫌われるのは嫌だ。

性格の悪い男になって、嫌いにまではならなくても、今までのような恋情の中に尊敬の念が混じる心地よい感情を向けて貰えることがなくなってしまうかもしれない。

そんなことは耐えられなかった。


だから秘密裏にウザイ勘違い女たちを処理しつつ、メグルカの前では清く正しく親切なレイター・エルンストでいたのだが。


そんなある日、突然同じクラスのヴァレリー・ジョンストンに矢継ぎ早に告白をされた。

「私、あなたのことが好きなの。愛してると言ってもいいわ。でも返事は要らない!それじゃ!」

とそれだけ一方的に告げて、ヴァレリー・ジョンストンは走り去った。

まさかその後でそのヘンテコな告白を武勇伝としてメグルカに語るとは思ってもみなかったが。


告白の返事は要らないと言っていたが、これはきちんと返してやらねばならないだろう。


───微塵の希望も残らないほどにバッサリと切り捨ててやる。


そしてレイターは長休憩の時間にヴァレリー・ジョンストンを呼び出した。

頬を染めながら急ぎやって来た彼女にレイターは、

「お前のような勘違い女が一番嫌いだ」という言葉を進呈したのだった。

普段の態度とは一変し、恐ろしいまで冷たいレイターに戸惑うヴァレリー・ジョンストンに、レイターは更にメグルカを守る使い魔も紹介してやった。

巨大な白虎を可視化してやるというサービス付きの告白の返事だ。

もう二度とメグルカに害意を示さないようにもっと脅してやりたかったが、ヴァレリー・ジョンストンがその場で失神してしまったのだ。

誠に残念である。


だけどその後は顔を合わせれば常に怯えた眼差しを向け、メグルカにも近付かないようになったところを見るとそれで充分だったのだろう。





それからしばらくして、モルモア公国の公女が視察に来るといい、学校側から世話役を押し付けられることになった。


───メグとの時間が減るじゃないか。


その時もガブを暴れさせてやりたくなったが、案内役を頑張ったらメグルカからご褒美を貰えることになったので、レイターは良しとした。


そして視察が始まり、予想していた通りメグルカと共にすごす時間が無くなった。

そのことで機嫌が最高潮に悪くなっている時に、公女がお茶会を開くと知らされる。


女子生徒ばかりを集めて開催するというお茶会。

そこにメグルカの名を見つけ、レイターは眉を顰めた。

こんな集まりで何も起こらないわけがない。

間違いなくメグルカを敵視する者が何名もいるはずだ。


そこでレイターは警護と称して秘密裏に会場に使い魔(ガブ)を潜伏させる許可を学校側から(もぎ)取った。


そうしてガブを通して会場を見張っていたのだが……やはり胸糞悪い女どもが胸糞悪い言葉ばかりをメグルカにぶつけた。


それを毅然として対応するカッコいいメグルカに改めて惚れ直していると、そのメグルカの人柄と優秀さに一瞬で絆された公女がメグルカを口説きはじめたのだ。


丁度時間も頃合いだったので、レイターは急いで会場入りをした。


そして胸糞悪い勘違い女たちを一掃するべく(ついでに公女への牽制も兼ねて)ガブ本来の姿を皆に見せつけたのであった。


一部の者には縞模様の可愛い猫を。

しかし一部の者には巨大な体を持つ白虎の姿を可視化させて。


メグルカに対し敵意を抱いていた女子生徒たちの怯える表情を見て、レイターは満足した。


そうやって何とも言えない雰囲気の中で、お茶会は終了の時間を迎えたのであった。





「それでは公女様。今日はお茶会のために案内役は休みだと窺っておりましたので、これにて失礼します。メグ、帰ろう」


レイターはそう言ってメグルカの背に手を当てて帰宅を促した。

メグルカは公女に挨拶をする。


「公女様、本日は美味しいお茶とお菓子をありがとうございました。少々騒ぎもありましたが、楽しい時間をすごさせていただいたことに感謝申し上げます」


メグルカの挨拶を受け、公女アレイラはため息混じりの笑みを浮かべた。


「こちらこそ、貴女には嫌な思いもさせてしまって申し訳なかったわ。でもわたくしは、貴女のことが知れてとても有意義な時間を過ごせたとも思っているの。本当にありがとう。……アドリフ教授への口利き、よろしくお願いするわね?」


「ふふ。はい公女様。教授は気分屋なので確たるお約束は出来ませんが、公女様との時間を取っていただくようお願いしてみます」


「あぁ良かった!レイター、貴方は邪魔しないでよ?」


公女が目を眇めて言う。

レイターは真面目な顔をしてそれに答えた。


「教授が変な気を起こさず素直に面会に応じるなら何もしませんよ」


「変な気?」


メグルカが訊ねると、レイターは肩を竦める。


「公女に会う代わりにメグに研究所に入るよう強要したり、とかね」


「まさか」


「いやあの教授なら有り得るぞ」


これまで裏でどれだけレイターがアドリフ教授の策謀を潰してきたか、メグルカには知らせていない。

あの教授は飄々とした好々爺を装い、目的のためには手段を選ばない老獪な人間なのだ。


───まぁむしろ教授をモルモア公国で引き取ってくれば有り難い話だな。積極的に動いてみるか。……メグには紹介以外一切関わらせる気はないが。


アドリフ教授をハイラントから追い出すために、レイターはアレイラに協力を惜しまないと告げた。

それに対しアレイラは「急に協力だなんて……なんだか不気味ですこと」といって警戒心を露にしたが、レイターの助力は捨て難いと了承した。


公女は明日、視察を終えて帰国の途に就く予定となっているので、アドリフ教授との面会のセッティングは後日ということになりそうだ。




そして翌日、

公女アレイラは沢山の学校運営のノウハウとスキルを詰め込んで、モルモア公国へと帰って行った。


公女の見送りもやはり、生徒を代表してレイターと生徒会長に任された。


公女を乗せた六頭立ての馬車を見送り、生徒会長は肩の荷が下りたような安堵の表情を浮かべ、レイターは憑き物が落ちたような清々した顔をしたのであった。


まぁアドリフ教授をモルモアに引き取ってもらうためにあと何度か公女には会わなくてはならないだろうが。


でもとりあえずは頑張った自分をメグルカに褒めて貰ってもいいのではないだろうか。

レイターはそう考え、急ぎ学校へと戻った。


学校に着くと、丁度午後の授業を終えた下校時間であった。


レイターはいつものようにBクラスへと足を運び、メグルカを迎えに行く。


「メグ」


教室の入り口から声を掛けると、レイターを見つけたメグルカの表情がパッと明るくなった。


「レイ……!」


それを見たレイターの頬が自然と緩む。

そして疲れなんて一気に吹き飛んだ。


メグルカは鞄を手にしてレイターの元へと控えめに駆け寄る。


「公女様のお見送りは終わったの?」


「ああ恙無く。全行程を過不足なく終えて、公女は満足そうに帰っていったよ。メグによろしくだってさ」


「レイ、本当にお疲れ様」


「うん。……とりあえず帰ろうか。今日は?どこか寄りたいところはない?」


いつものようにレイターがそう告げると、メグルカは「今日は大丈夫」と返事をした。

そんな二人にフィリアが声を掛けてきた。


「まぁご両人。公女様の視察が終わってようやく日常が戻ったって感じね。メグルカ、良かったわね、婚約者とまた一緒に帰れるようになって」


「ええそうね。嬉しいわ」


メグルカが素直にそう告げるとフィリアは手で顔を扇ぎながら言う。


「まぁ~ご馳走様。熱い熱い。なんだかこの付近だけ熱いわねぇ。ではお二人さん、また休み明けにね。よい週末を」


「もうフィリアったら。ありがとう、あなたもよい休日を」


そう言い合って、メグルカとレイターはフィリアと別れた。



帰宅の道すがら、レイターがメグルカに言う。


「メグ、どうしようか?メグはどこでしたい?」


「?」


レイターが何を訊いているのかピンと来ないメグルカが首を傾げる。

レイターはにっこりと満面の笑みを浮かべた。


「公女の案内役を頑張ったら、メグからご褒美を貰えるんだったよな?」


「あ、」


公女の視察前に約束したご褒美のことを思い出し、メグルカの頬が途端に熱を持つ。


「楽しみだなぁ。メグからのキス」


「ちょっ……こんな人通りの多い所でそんな話……は、恥ずかしいわ……」


頬を赤らめてモジモジと俯くメグルカを見て、レイターは天を仰いだ。

その様子を不思議に思い、彼に声を掛ける。


「レイ?どうしたの?」


「……俺の婚約者が可愛すぎる……」


「え?」


「もう無理だ。限界だ」


レイターはそう言って、繋いでいたメグルカの手を引き寄せた。

そしてメグルカの腰を抱き、突然転移魔法を用いた。


次に二人の足が接地したのは、レイターの自室の床の上。


部屋に到着するなり、レイターは向かい合ったメグルカの腰を強く抱き寄せる。


「レ、レイっ……」


メグルカは羞恥のあまり居た堪れず、身を捩ってその腕から逃れようたした。

だけどレイターの腕はガッチリとメグルカの腰をホールドして離さない。


「この一週間。俺、頑張っただろう?でももう限界なんだ。圧倒的なメグ不足だ。そんな俺を癒してほしい」


「い、癒す?どうやって?マッサージでもする?」


「……俺の婚約者は天然の小悪魔ちゃんだ」


「え?」


「メグ、メグからキスして」


「っ~~~……どうしてもしなくちゃダメ?」


「なんで?嫌なのか?」


「嫌じゃないわ。嫌じゃないけど、恥ずかしい……」


まだレイターからされるキスを受けるのだってメグルカは慣れていないのだ。

毎回恥ずかしくて、でも嬉しくてフワフワとした心地になってワケが分からなくなるのに自分からだなんてハードルが高すぎる。

まぁそれを敢えて行うからご褒美なのだろうけど……。


そんなメグルカを見て内なるレイターはますます悶絶する。


「くっ……可愛いっ可愛いが過ぎるっ……メグは俺を殺す気か……」


もっとも全部口に出てしまっているのだが。


キスだけでこんなにモジモジされて、結婚したらどうしてくれようか。


「あと一年も耐えられるかな、俺……」


「え?」


「なんでもないよ」


レイターはいつものように優しげな笑みを浮かべてメグルカを見た。


目の前にいるこの可愛い婚約者はきっとわかっていないだろう。

レイターがその身の内にどれほど熱く、そして仄暗い熱を宿しているのか。

メグルカ以外は要らない。

それは彼女も自分に対してそうであって欲しい。

レイターはそう希うのだ。

この愛情を凌駕する執着心を、彼女の目の前の男は幼い頃からずっと抱き続けていることを。

純粋な彼女は()()知らない。



レイターは笑みを浮かべたままメグルカに言う。


「ほら、メグ」


レイターに促され、メグルカは小声で言う。


「……じゃあ……目を閉じて……?」


───くっ……


内なるレイターが悶絶し続けている。

それをおくびにも出さずに、レイターはそっと目を閉じた。


メグルカは目の前にある端正な顔立ちに更に頬を赤らめながら自身の顔を近付ける。


レイターの自室の床に立つ、メグルカの足がつま先立った。



その二人の様子を側で縞模様の猫が見ていたが、

やがて飽きたのかレイターのベッドに上がって居眠りをはじめたのであった。





終わり


これにて完結でーす。


山もなく谷もなく、すれ違うこともなく、只々想い合う二人の物語にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。


たまにはこんなお話があってもよいのではないかと思い、執筆しました。


メグとレイ、二人の日常はこの後も穏やかに過ぎてゆくのでしょう。


補足としまして、アレイラは見事、アドリフ教授をモルモアに引っ張って行くことに成功したようです。

陰でレイターがかなり尽力したようですが☆


そして卒業後、それを見届けたレイターがガッツポーズで見送ったのだそうな。チャンチャン


今回のお話も、沢山のお気に入り登録やイイねをポチして頂きありがとうございました。

それがどれほど作者の励みになるか……!

書き続けていられる原動力といっても過言ではありません。

読んで貰えている、楽しんで貰えている、それが可視化されるとやはりわかり易くモチベが上がります。


皆さま、本当にありがとうございます!


さて次回作ですが、

次は一途ものを書きたいなぁとか、いややっぱりすれ違いものが書きたいなぁとか。よし、じゃあ一途にすれ違わせるか☆などと只今思案中にございます。

しばらくお待ちくださいませね。

また投稿をする際はXや活動報告で告知させていただきます。

その時はよろちくびです。



では改めまして皆さまに感謝を込めて。


最後までお読み頂きありがとうございました!






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