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第12話 〝Unknown Darkness〟


「いや……しかしまいったなぁ」

 辺りをきょろきょろと見渡す。本当に、俺はどこに来てしまったのだろうか。

 カビ臭い小さな部屋の中、自分が寝かされていたベッドの上に座り、頭をひねる。

 部屋は窓もなく、日差しも入ってこなかった。天井には唯一の明かりである電球が裸でぶら下がっており、カバーも何も掛けられていない。部屋は全体的にホコリが積もり、少し陰湿な感じがする。こんな所にずっといたら、不健康になること請け合いだ。

「どこだ……ここ……」

 ぽつりと漏らす。何しろ、気がついたらベッドに寝かされていたのだ。

 何だかこんな展開は前にも合った気がするが……目が覚めたら、このうえ更に異世界にいました、なんてオチじゃねーだろうな。

 頭の中に浮かんだ想像を振り払うように、俺は深く嘆息する。

 頼むから、これ以上事態をややこしくしないで貰いたいものだ。




           第12話 〝Unknown Darkness〟




 とりあえず、部屋にはドアがある。見たところ鍵もかかっていない。

 ここで考えていても仕方ないと思い、俺はゆっくりとベッドから起き上がった。

「……っと……」

 すると、ずきっと膝が痛む。未だに小刻みに震え、立つときに違和感を感じる。

 あれだけ走り回れば当然か。少なくとも夢ではなさそうだ……。



 ガチャ


 突然、目の前の扉が開き、部屋に光が漏れ込んできた。

「………っ」

 その光を眩しく感じて、俺は反射的に目を細める。

 扉の向こうには、ずっと前から姿の見えなかった奴がいた。

「エリィ……?」

「……あなたも、ここにいたのね。よかった、私だけかと思った……」

 エリィはホッとしたように溜息をついた。心なしか、彼女の小柄な身体が少し震えて見える。

「お前、どこに行ってたんだよ。何でここに?」

「分からない。気がついたら、ここの隣の部屋で寝かされていたの」

「……そうか、じゃあ多分、俺も似たようなもんだな」

「ねえ飛鳥君、ギルは知らない?」

「ギル……?」

 エリィは心配そうな顔で、俺に尋ねてくる。そう言えば彼女にとって、あの男は兄みたいなものなのだ。このか弱そうな表情は、きっとそれを心配してのものなんだろう。

「悪いけど、見てないな……。俺達があの天界獣たちに襲われたときから、三人バラバラになっちまっただろ? それ以降は……」

「そう……」

 そう聞くと、エリィは少し寂しそうに肩を落とした。


「……にしても、ここはどこなんだ?」

「分からないけど……多分、地下じゃないかしら」

「地下?」

 意外な言葉が出てきた。エリィは俺が寝ていたベッドにゆっくりと腰を掛けると、銀縁の眼鏡を細い指でかけ直した。

「ええ、私も気がついたらここにいたんだけど、目が覚めてから部屋の近くを少し歩いてみたの。ここ以外にもいくつか部屋があったんだけど、どの部屋にも窓が無くて、明かりは照明だけだった。それに太陽の光も差し込んでいないから……憶測だけど、ここは地下なんじゃないかしらって思うの」

「成る程ね……」

 改めて辺りを見渡しても、確かに地下みたいな感じはする。

 俺は深く嘆息した。一体何がどうなってこうなったのか……。

「……まあ何にせよ、ここに居たって始まらないな。……ちょっと外へ様子を見に行ってみるよ。連れてこられたって事は、必ず帰る方法があるはずだ」

 そう言うと、俺は重い足を動かし、部屋の扉の方へ静かに歩いていった。

「あ……」

「ん?」

「私も……一緒に行く」

 そう言うとエリィはベッドから立ち上がり、静かに俺の後に付いてきた。

 その表情にはどこか不安が漂っている。こんな所に一人で居るのが嫌だったのか、姿が見えないギルのことを思うと居ても立っても居られなかったのか……それは分からないが、彼女はいつも以上に弱々しい感じだった。


「そうか……じゃ、一緒に行こう」

 頷くエリィを横目に、俺は扉を開けた。



    ――――――――――――


「さて、どうする? この男……」

「まだ意識は戻らないようだが」

「一応の応急処置はしておいたがな……」

「正直、もうダメだろう。体中は骨折だらけで、何しろ出血が酷い。放っておいてもじきに死ぬよ」

「……そうか、残念なことになったな」




「おい、大変だ!! あの二人が居ないぞ!!」

「!?」

「さっき部屋を見に行ったんだが……少年も、その隣の部屋の少女も、どこにも見当たらない!」

「まさか……外に逃げたんじゃないのか!?」

「だとしたら……」

「まずいな……」

「……おい、お前らも来てくれ! 外に出られる前に捕まえるんだ!!」



    ――――――――――――


「ふう……」

 道をどんどん進んでいく。明かりがないので、殆ど壁に沿ってそろそろと歩いていく。

 岩の壁のひんやりとした感触が、手の平を通して心臓に伝わってくる。

「自然の地形を利用した地下通路みたいだな……それにしてもどこまで続くんだ……」

 歩き始めて二十分ほど経った。岩場の道は狭い洞窟のようで、高低差が激しく、足場も安定しない。まるでアリの巣の中にいるようだ。歩いているだけで、想像以上に体力は削られていった。

「…………」

 隣のエリィは無言のまま、暗闇の中ではぐれないように、俺の腕をしっかりと握っている。光がないので姿は見えないが、どうやらまだ怯えているらしい。

 恐ろしいほどの静寂の中……ただただ洞窟を歩いていく。時間の感覚が、少しずつ失われていく。

「地上の近くにいるなら、日の光が差し込んでもいいはずなんだが……地下に居るんだとしたら、相当深いところに居るみたいだな……」

 溜息をつきながら、深淵の空間を、俺達はひたすら進んでいった。




「おい、そっちは居たか!?」

「いや……見当たらない、どこかで迷ってしまっているんじゃないのか?」




「…………?」

 ぼんやりと、人の声が聞こえた気がした。洞窟の中で音が反響して、何重にも聞こえる。

「人が居るのか……?」

 ふと、考えた瞬間。


 一斉に、天井に明かりが付いた。


「……うわっ……!」

 突然付いた光に、俺は思わず目を閉じる。

「……照明……?」

 隣ではエリィが、同じように目を細めながら天井を見ていた。

 天井には、光り輝く電球が電線で繋がれて、縦一列に何十個も羅列している。こんな所に照明があったのか……全然気付かなかった。


 だんだん光に慣れてきた目を開きながら、辺りを見回す。想像していたとおりの、洞窟のような狭い道だった。

「……にしても、電気がついたって事は……人が居るみたいだな」

 安心して、ホッと胸をなで下ろす。エリィも同じようだった。

 流石にこれだけ長い時間暗闇の中に居るとな……。とは言っても、女の子の手前何とか隠していたが、俺も結構、不安ではあったのだ。


「……あっ、いたぞ! あそこだ!!」

 遥か遠くで、背の高い男が見えた。後ろには何十人もの人が見える。久しぶりに人の姿を見た気がして、ようやく安堵した。

「よかった、人が居たか……あの、済みません。ここはどこで……」

「捕まえろおおおおおぉぉぉぉ!!!」

「すか…………って、うえぇ!?」


 ドドドドドドドドド………


 一瞬で捕まった。

「紐で、紐で縛れぇぇ!!」

「いや、ちょっと……」

「絶対に逃がすなぁぁ!!」

「きゃっ……いやああ!」

「全員で包囲網を作れ! もう逃がさないからなぁぁぁ!!」

「えっ、ちょ、待っ……のわあああああ!!!」




 ……ちょっと待て。これ……どうなるんだ……?



To Be Continued……


投稿遅れて済みません、ちょっと忙しかったもので……。

前回に比べて長くなったのかどうか分かりませんが……感覚で書いてるので、よく分かんねェです。

ちなみにサブタイトルの「Darkness」は「暗闇」って意味で使ってます。

サブタイトル症候群なもんで……結構こだわります。

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